0話 プロローグ
予告編のようなプロローグです。
現代ダンジョン・オーバーキル!
「第84話 限界の塔」
の
『偽物の中村』視点
「イレギュラーが発生しました。
本ダンジョンは崩壊の危険域に到達しました。
緊急脱出ゲートを展開します。
ダンジョン利用者は速やかに脱出してください。」
ダンジョンに館内放送のようなアナウンスが響く。
「これは!?」
「やった!」
本物の俺が驚き、本物のセリフィアが喜んでいる。
石動のオッサンと鷹司さんも駆け寄ってくる。
「おいおい、こんなアナウンス聞いたことねぇぞ!」
「本当に面白いですね! もうドキドキして興奮が止まりません!」
同じ、俺……なんだがなぁ。
所詮ニセモノか。立場が違う。
俺は──本物のために死ぬ役割を与えられた、ただのコピーだ。
部屋の中央、水晶の前に光が集まり、赤や青の残光が渦を巻き円環を描く。
通り道となるゲート。
『あれで外に出られたら』
『本物と入れ替われないか』
そんな雑念が一瞬よぎる。
だが、すぐに消えた。
背中にそっと触れる手。
振り返ると、偽物のセリフィアがいた。
彼女も偽物。
でも──俺にとっては、本物だ。
彼女の目は、俺のように諦めてはいないよう。
「マスター……水晶に触れてみましょう。恐らくイレギュラーが発生するはずです。」
「……わかった。」
生き残る可能性があるなら、掴むしかない。
俺は本物の俺に声をかける。
「出口……塔の言う緊急脱出ゲートってやつだな。」
本物が俺を見る。
羨ましさも、悔しさも、全部飲み込んで、一度だけ頷く。
「……まぁ、なんだ。どうなるか分からんが水晶触ってみるわ。
お前らはもう、さっさと脱出しろ。」
「……分かった。みんな脱出するぞ! 試験官の人から脱出して!」
本物の俺が試験官を促す。
「いやです。」
「は?」
鷹司さんが笑顔で速攻NOを主張して、少し笑ってしまう。
「私も興味があります! 見たい!」
「……俺、見世物かよ……」
それは、ちょっとなぁ……
「うーん! カリーナ! 鷹司さんを脱出させちゃって!」
「分かったわ!」
「そんなー!」
あっという間に行動したカリーナにより、鷹司さんが緊急脱出ゲートに放り込まれて、少し胸がすく気がした。
石動のオッサンも続いた。
残ったのは俺たちだけ。
本物の俺は、俺を見届けるって気持ちっぽいな。
なら時間は無い。
俺とセリフィアは手をつなぎ、静かに水晶の前へ歩みよる。
水晶に手を伸ばす前に、セリフィアを見る。
彼女も真っ直ぐ、俺を見ていた。
――きっと、なんとかなる。
俺が小さく頷く。
彼女は静かに微笑んだ。
そして――俺たちは、水晶へと手を伸ばし、触れた。
★ ☆ ★ ☆彡
世界が弾ける。
光、衝撃、歪む空間。
俺はセリフィアを抱きしめ、彼女も俺を抱き返す。
加速しているのか、減速しているのかすら、分からなくなるような感覚。
ただ、手を離したら、二度と会えない気がした。
離すもんか。
絶対に。
――やがて、どれだけの時間が過ぎたか、分からなくなった。
――自分がなんだったか、分からなくなってきた。
――今、抱えているのが、何か分からなくなってきた。
俺は、なんだ?
私は、なんだ?
消えれば楽になるのか?
そうだ。もともと無。
思考が薄れていく。
消えていく――
その時、
本物の俺からもらった魔石が、
俺の中で光り──砕けた。
意識が叩き起こされる。
形が崩れた自分を、必死に“俺”へ戻す。
魔石の光が消えたとき、
俺は俺に戻れた。
だが──
セリフィアがいない。
「セリフィアーー!!」
叫んでも届かない。
響かない。
そのとき、
胸の奥の極魔石が眩い光を放った。
これは……これだけは離しちゃいけない。
そう思った瞬間。
極魔石は、俺の意思を無視して──爆発した
大分前に書いたプロローグだったけど……せっかくなので!
(`・ω・´)




