第5話 あの子との出会い Ⅱ
あの子と再び会ったのは、それから1週間も経たない頃だった。
「おい!」
と唐突に目の前に立ちはだかる少年。
赤い髪、赤い瞳。
綺麗だ
ぼんやりしながらそう思った。
「おい!お前!お前が俺を助けたんだろ!なんで助けた!なんで、なんで助けたんだ!」
「…ぁ、ぁあ」
と少し前に助けた少年だと気づいた。
「聞いてんのか?!」
と怒鳴っている少年を前にしても、あまり脅威に感じない。
泣きそうな顔しているくせに。
「聞いてる。なんで助けたか、だっけ?別に特に理由なんてないよ?偶然居合わせたから、それだけ」
「なっ」
少年は何かを言い返そうとして、言葉を詰まらせる。
握りしめた拳が震えている。
「俺の村は……父さんも、母さんも、みんなも!俺だけ、俺だけ助かって、なんになるんだよ……」
絞り出すような声でそういう。
「じゃあ死ねば?」
淡々という。
少年が息を呑む。
「好きにすればいいじゃん。自分だけ生きてるのが嫌なんでしょ?」
慰めてあげるほど、私は優しくない。
「家族が死んだ?大切な人がみんな死んだ?そんなありきたりな不幸で死ぬなら、この世界じゃ生きていけない」
一息つく。
「この魔塔にいる人たちは家族がいない人が大半なんだよ」
そう言って、私は少年の後ろへ視線を向ける。
「そこにいるベルグだって、父親を亡くして、一人で母親と弟妹を養ってきた。未成年の子供1人じゃ、家族を養うのは容易じゃなかった。だから仕事なんか選べなくて、命懸けの仕事だってやるしかなかった」
驚いたような少年に見つめられ、ベルグが視線を下に落とす。
さらに視線を横へ流す。
「ミレイだって、病気の両親を必死に看病してきた」
少年を見据える。
「自分だけ不幸だと思うのは傲慢だよ、少年」
「っ」
と少年は息を詰まらせる。
魔物、盗賊、疫病、怪我、災害。
この世界は死で溢れている。
魔法の才能は極限状態でこそ覚醒する。
不幸の中で生き残ったものの多くが魔法の才能を持つ。
なんて皮肉だろう。
早く才能が開花していれば、不幸な目に遭ったとしても対処できたというのに。
大切なひとを、失わなくて済んだというのに。




