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3 キース視点


リンカがここの世界ではない”異世界”という所から来た人だ

という事は父から聞いて知っていたけど、僕には良く分からない。

でも僕の知らない事を色々知っていそうなのは確かだと思った。


リンカとの旅は楽しかった。

異世界から持ってきたというオカリナという物を取り出して音楽を奏でたり

聞いたことのない歌を歌ったり、馬を休める為の休憩の時に馬車を下り

棒で地面に書いた九つのマスに自分の印を並べる異世界のゲームしたり。

そして僕が不思議に思ってる異世界の話を聞いたり。

食事していると時々困った様な顔をするのは相変わらずだけど

嫌いで食べられない物があるわけでもなさそうだ。


旅の間に立ち寄った町のいろいろなお店で、お金の使い方や

町での生活を教えてあげる。

僕の方がお兄さんみたいだ。いつも姉さまに教えて貰う方なので

ちょっと偉くなった気分になる。


町で悪い人に絡まれそうになると僕が前に出てリンカを庇う。

僕はこれでも辺境伯嫡男だ。剣術だってその辺の破落戸には負けない。

でもリンカは心配して青い顔になる。

破落戸を追い払った後はとても心配して僕を抱きしめてくれる。

でもちょっと子ども扱い過ぎて不満になる。


そうやって一緒に旅するうちにだんだん打ち解けていった。

気になるのは馬車に揺られている時

掌くらいのつるつるした四角い平たい物を

のぞき込んでは暗い顔をする事だ。


そんな時「だいじょうぶですか?」と声を掛けると

「ごめんね。ちょっとだけ良い?」って聞いてから僕の肩に額をのせる。

サラサラの髪が僕の肩に落ちる。

僕はそっとリンカの背中に手をまわす。


「ありがとう。優しいのね。小さい頃の義弟を思い出しちゃった。

落ち着けたわ。」

義弟?僕はリンカにとって弟みたいなのかな、ちょっと悲しい気持ちになった。

そんな事が何回かあったけれど領地が近くなってからは

板みたいな物を取り出す事もなくなった。


領地に入ってから先ず勇者様の石碑を見舞った。

石碑には勇者様が倒した魔王から出てきたとされる

濃い紫色の魔石が嵌め込まれている。


リンカは長い間、手を合わせて黙禱もくとうしていた。

きっと”帰れますように”と祈っていたのだろう。

僕は願いが叶うといいな、と思いながらなんとなく淋しく思った。


再び馬車に乗り込み屋敷を目指した。

リンカは窓の外をぼんやりと眺めていた。

こんな時どう声を掛けていいか分からず

僕はただ横に座っているだけだった。


屋敷に戻ると姉さんが飛び出してきた。

前から「兄か姉が欲しかった」って言ってたから

先ぶれがあって楽しみにしていたのだろう。年も3つ違いで丁度いい。


領地での生活が始まると、”気が紛れるから”とよく厨房で

手伝いをするようになった。

僕も一緒に市場へ出掛けて見た事の無い薬草や木の実を買って帰る。

それを使って料理を作ってくれる。

すると今まで食べたこと無い味や香りがしてとても美味しい。


キャラメルも最初は軟らかく作るのが難しいって言ってたけど

何回も悪戦苦闘して最初に貰った物より美味しいのを作ってくれた。

僕がそう言って褒めたら「お世辞でもうれしいわ。」って言ったけど

本当にリンカが作ったのが美味しいって思ったんだ。


ここでの生活に慣れて来た頃、リンカが「前から馬に乗ってみたかった。」

って言ったから僕が乗馬を教えてあげた。

すぐに上手になって一緒に遠出もするようになった。


勉強も算術は得意らしくて、変わった計算の仕方も教えてくれる。

僕は嫡男だから領地経営の勉強とか毎日が大変だけど

リンカが作った弁当を持って一緒に出かける休みが楽しみで頑張っている。


姉のアンリエッタともとても仲が良い。刺繍やダンスの時間は

一緒に勉強している。

母上と三人でよくお茶会をしている。


最初に作った刺繍のハンカチを「あまりいい出来でないけど

使ってちょうだいね。」

と言ってプレゼントしてくれたけど

「僕の宝物にするから」と言って引き出しの奥にしまってある。


僕の13歳の誕生日には「簡単なものしか作れないけど」

と言いながらも初めて目にするパウンドケーキという物を作ってくれた。

干したブドウや果物が入っていて甘くてとても美味しい。


そして色々な色の糸で編み込んだ、”ミサンガ”という異世界の腕飾りを

プレゼントしてくれた。

僕は「リンカが付けてくれる?」とお願いして

色とりどりの綺麗な腕飾りをつけて貰う。


僕の手首に巻いて「キースがこれからもずっと幸せでいられますように。」

と願いながら結んでくれた。


お返しにリンカの誕生日に僕の瞳の色と同じダークブルーの魔石のペンダントを

「リンカがこれからもここでずっと幸せに暮らせますように」と

願って首に掛けてあげた。


彼女が此処へ来て一年が経つ頃には、僕はリンカと同じくらいの

背の高さになっていた。

そして僕も僕の家族にとってもリンカのいない生活は考えられなくなっていた。


リンカも暗い顔をする事がほとんど無くなったと思っていた。



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