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1 異世界へ


今、私はピンチ?です。人通りの少ない昼下がりの駅の裏通り

高架下にある公衆トイレで

流行りのカラーリングにカラコン姿のド派手な二人の少女に壁ドン状態

カッターナイフで脅されている・・・

(カッターの刃は出ていないけれど…)


「アンタがユーヤと親しくしてんのは分かってんだよ。」

「街中で仲良く歩いてんの何回も見てるしぃ?」


(そりゃそうでしょ。勇也は私の二歳下の義弟で

父さんの再婚相手の連れ子だもん。ちょっとチャラいところは有るけれど

お互い一人っ子だったから仲良くしている。

色々事情があって姓はちがうけど。)


「入学した時からあたしが目ぇ付けてんだから手ぇ出すんじゃないよ。」

「えっとですねえ、誤解があるようですが・・・」

と説明しようとしたところでトイレの床が光りだした。

ふわっとした浮遊感に襲われて目がくらむ。

眩しさに目眩がして床に座り込んだ。


間を置かずざわざわとした人の気配にゆっくりと目を開けた。


「へっ、ここどこ?」

「やったぁ~、これって異世界召喚ってやつじゃね?」

「ラッキー、チートとか魔法とか使えたりするんじゃね?」


(いやいや、この状況で手放しでは喜べないでしょう。)

周りを見渡してみる。


私たちは祭壇らしき所に座り込んでいる。

目の前には、煌びやかな衣装を纏ったキラキラ王子様っぽい青年?

その向かい側に、クッションに乗った大きな水晶玉らしき物を

両手で掲げている神父様っぽい出立のご老人。


祭壇の両脇の椅子に座っている、見るからに身分の高そうな面々。

その後ろに立っているのは鎧姿に帯剣した騎士団?

祭壇下には中世欧風ヨーロッパ貴族風の衣装を着ている大勢の人々。

やっぱり異世界っぽい?

皆さん一様に目を見開いて、中には口まであんぐりと開け放している人も見える。


「どういう事だ。」

「い、いや私にもさっぱり・・・」

「・・・」


「あのー、神殿長…恐れながら・・・」

「どうした?申してみよ。」

「す、水晶玉の色が違うのではないかと・・・」

「色が違うだと・・・はあ?!

こ、これはひょっとして勇者様召喚用の・・・」

 

ん?今、勇者様召喚用って言った?

呆気に取られていたらしい人々がざわつき出した。


「いったいどうしたというのじゃ?」

「はっ、陛下・・・大変な間違いをしてしまいました。本来であれば

王太子の成人の儀式で、祈りの言葉と共に掲げるのは薔薇水晶ローズクォーツ玉。

何かの手違いで間違って勇者様召喚の儀式用の紫水晶アメジスト玉を使ってしまったのが

原因ではないかと・・・。」


一応会話している言葉は解る。ちょっとした安堵感。でも間違えたって・・・

必要ないのに召喚された?三人も?この三人に勇者の資質ある?


あらためて周りの人々の視線が集まる。


「あのー、元の世界へ返して貰えま…「「ダメダメダメッ~~~」」」

私の発言に二人の声が被ってきた。


「申し訳ないが、帰るには魔王を倒していただかないと・・・」

「魔王、いるんですか!?」

「いや、300年前に勇者様に倒され、今のこの世には存在しておらん。」


「「やったー!」」


「いやいやいや、私は帰りたいです。間違って召喚されたのなら

異世界ここに必要ないですよねぇ。」

「すまんが魔王を倒して頂く以外に帰す手立ては無い。」


帰れないかもしれないと分かりこの状況が徐々に現実味を帯びてきて

不安が増してくる。


「困ります。こんな何も知らない、知り合いもいない世界に一人なんて。」

「友人と一緒ではないか。」


「「「全然違います!」」」


賑やかなやり取りに再び周りがざわつき始めた。


「とりあえず、落ち着いて話せる所はないですか。

此処は人の目も多いし余計に混乱します。」

「ああ、そうであるな。ひとまず客間に案内しよう。」


就職試験を控え、真面目に黒髪、薄化粧の高校三年生の夏休み。

体験もかねて北海道の民宿でバイトしようとキャリーケースを転がして

空港行きの列車に乗ろうと駅近くを歩いていたところを

勇也の知り合いらしい二人組につかっまた。


足元にはキャリーケースが転がっている。それをずるずると引きずって

案内の人について行くとあちこちから怪訝な目を向けられた。

パンツスーツにキャリーケースなんてどう見てもこの場に不釣り合いだ。


通された部屋は割と広くテーブルを囲んで三人掛けのソファーが四つ。

「暫く掛けてお待ちください」という事で

一つに私、もう一つに二人が座った。


 


一日1話から2話投稿予定です。

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