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第八章 プリン同盟

「よっ!ミコ。」


 今日も今日とてミコの部屋へ。


「・・・・・・こんばんは。」

「うん、こんばんは。」


 ミコはいつも通り、虚ろな瞳をむけてくる。でも、最初に比べればましになってきた。虚ろさの中に、ほかの感情が混じるようになってきている。


「今日はね、漢字と割り算の勉強。あと、少し社会もやろう。」


 理科もやらなきゃダメだけど、とりあえず、お互い社会の常識をあんまり知らないから一般常識だけでも身につけておこうってことで社会ね。


「うん・・・・。」

「まずはこれまでやった漢字のテストをしよう。・・・・・じゃーん!つくってきたんだ!!」

「がんばる。」

「うん、頑張れ。頑張ったら授業が終わったあとにご褒美があるよ。」


 ミコはいつもよりはやいペースでパチパチと瞬きをした。どうやら、ご褒美の内容が気になるらしい。


「ひ・み・つ!」

「・・・・・・・・・。」


 ミコは少し悲しそうな顔をしたが、すぐにまたいつもの無表情に戻った。


「よし!じゃあ始めるよ!」



  *  *  *  *



「すごい!満点だ!」


 本当に賢い子だなぁ・・・・。これは将来が有望だ。


「で、満点とったご褒美!」


 まぁ、満点じゃなくてもあげる予定だったけど。


「な、な、なんと!!!プリンです!!」


 明らかにミコの瞳がきらんと光った。そして、真っ白な頬がほのかに赤くそまり、少しだけ口角が上がった。


「プリン・・・・。」

「そう、プリン。」


 二個しか買ってきてないから、一人一個ずつね。


「・・・・このまえの?」

「そー。」


 あそこ、テイクアウトもオッケーだからね。ありがたいありがたい。


「あたしの血と涙の結晶だからねー!ちゃんと味わって食べるんだよ。」


 学園の生徒に月に一回支給されるお小遣いはあたしはもともとユリの国民じゃないからないんだよね。だから、通帳に毎月振り込まれる五万円とあとはバイト代で賄っている。生活はまぁ・・・苦しいが、昔とは比べ物にならないぐらい恵まれている。ちなみにこのプリンはバイト代で買った。


「・・・・・いただきます。」


 ミコはお祈り(?)をすると、プリンをパクリと食べた。


「・・・おいしい。しあわせ。」

「そりゃよかった。」


 あたしも食べようかね、プリン。


「んー・・・甘いねぇ・・・。」


 最近、いまいち好きではなかったはずのプリンが好きになってきた。


「・・・・しあわせ?」

「うん。幸せ。・・・・まぁ、あたしは勉強できて、ミコという友達がいるからプリンなんか食べなくても十分幸せだけどね。」


 幸せはいくらあっても構わないから、プリンもしっかりいただくけど。


「ともだち?」

「うん、友達。自分にとって大切な人。」

「たいせつ。」

「そう。自分にとって特別ってこと。」


 ミコにはまだ難しいかな。


「・・・・友達と一緒にいると、喜びは二倍に、悲しみは半分になるんだって。ミコにもいつかそういう人ができるといいね。」


 あたしでも全然かまわないけど。というか、むしろそうして欲しい。一方的に友達だって思ってるってのはちょっと寂しいしね。


「そっか・・・・。」


 ミコはあたしをただじぃっと見つめていた。




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