小話7 世界征服
粛清後から黒騎士の最後までの間の話しです。
朝の光が閉じた瞼の下の網膜を刺激しまどろみにあった俺の意識に覚醒を促す。
先日の粛清により直轄地となった諸侯の領地を新女王の統治下に組み込む作業に追われていたため仮眠しか取れずやっと黒騎士の扮装を解いてベッドで寝むれるようになったのが昨夜のことであった。
もっとも各諸侯が王都の戴冠式に出席している間領地の運営を任されていた代官達に新女王の名で正式に代官に任じ税の軽減、領主と国の納税倉庫から取り過ぎた税の還付、流民の救済対策の細かな指示等、当面の体裁を取り繕う程度の物だが各諸侯の護衛からの報告で主人達が自裁させられた状況を聞いた代官達の大部分は新女王に従っていった。
一部の反抗した代官や諸侯の遺族は俺が一人で乗り込んで男女問わず自裁させていった。
これに震えあがった他の諸侯の遺族達は国外に逃亡し他の面従腹背していた代官達もこちらの指示に素直に従い始めた。
新女王の護衛としてシオンと双子メイドを残し四六時中張り付かせておいたので俺が離れている間も問題は出なかった。
シオンが新女王の寝室に泊まり込んで護衛をしていたため貞操の心配はあったが双子メイドに俺の留守の間はシオンから目を離さないように頼んでいたので事なきを得たようだ。
さていつまでもこの柔らかいベッドで惰眠を貪っていることも出来ない。
俺は名残惜しく柔らかいベッドを撫でた。
「あん・・・」
聞き覚えのある甘ったるい声。
俺はガバッと飛び起きた。
両脇には俺に寄り添うように眠る裸の二人の少女。
あーッ、あったよな、こんな光景。
俺はポリポリと頭を掻いた。
暫くそういう状況にならなかったので忘れていたが双子メイドに忍び込みの中断命令を出していなかった。
これは俺の油断だ。
しかし先程の掌の感触、以前は掌に楽に収まるぐらいだったが今は溢れんばかりになっていた。
成長著しいことだ。
それはそれとして俺は周りを見回した。
脱ぎ捨てられた服も下着もない。
成程、これも衣服を脱ぐ微かな衣擦れの音で察知していた俺が悪い。
暗殺者が裸で忍び込んでくることはないが服を脱ぐこともない。
気配で察知出来なければ彼女達並の隠形レベルの相手には対応出来ないということだ。
幸いこれまでのところそういう相手には出くわしていないがこれからもそうとは限らないし。
更に鍛錬は続けていくとして・・・。
「起きろ!二人とも!」
「「はい、御主人様」」
双子メイドが目をこすりながら起き上ってきた。
彼女達も新女王やシオンの政務処理に付き合い疲れているはずなのによくも俺の部屋に忍んでくる体力が残っていたものだ。
だが今はそんな事もどうでもいい。
「これはいったいどういうことだ?」
俺は詰問した。
「「えーと、あッ!分かりました!朝のお勤めですね」」
双子メイドは俺の腰に手を伸ばしてきた。
「わーッ!ちょっと待て!ストップ!フリーズ!」
俺は慌てて止めさせた。
「誰だ!そんなこと教えたヤツは?」
「「シオン様です。メイドの嗜みと仰っていました」」
あの女いつかシメる。
「・・・まあ、それはいい。それより部屋に忍び込んだ手口が問題だ」
「「御主人様が衣擦れの音で察知されているようなので工夫して最初から裸で侵入してみました。いけなかったでしょうか?」」
「工夫自体はいい。問題は全裸で城内をうろついたことだ」
「「まずかったでしょうか?」」
「まずいなんてもんじゃない。致命的だ!」
「「はしたないとかそんなことでしょうか?誰にも見られなければ問題ないと思ったのですが」」
「そんな問題じゃない!初日は準備が出来ていなかったから仕方なかった。その後は守られていたから気にしなかった。扮装しなければならなかった時は止むを得なかった。しかし今回お前達は許されない失敗をした」
「「それはなんでしょう?」」
「俺は常々言っていたはずだ!メイドたる者、常にメイド服を着用し特にホワイトブリムは必須だと!」
「「はぁ・・・」」
双子メイドが納得いかなげに首を傾げた。
トントン!
その時いつの間に開いていたドアからノックの音がした。
「おーい、もう話しはいいか。メイドフェチ勇者」
シオンが呆れ顔で立っていた。
その後ろには新女王の姿もあった。
・・・それから暫く彼女達に蔑みの目で見られた。
しかし俺は負けない。
いつの日かこの世界にメイド文化が広がりメイド服の正装をした全ての侍女がメイドと呼ばれるその日まで!
残り22人の花嫁達はレインディアで勇気の野望達成のため修行中です。
因みに過去の勇者もこのようなこだわりから元の世界の文化をこちらに持ち込んでいます。




