表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界無双血風録  作者: 大五郎
第5章 レインディア王国編
12/119

小話2 土木工事

使わなかった裏設定を少し。

俺は土方だ。

新選組の方ではなく土木工事をする方だ。

この一年ぐらいの間に各地で造成工事に駆り出された。

シュナでの防波堤と港湾整備に始まり今度はレインディアで新たに発見された大空洞の整備事業に参加させられている。

シュナの方では賃金を搾取されレインディアでは少し前にした多額の借金の返済のため働かされている。

シュナの防波堤整備では急造で築かれた防波堤を今後の津波等自然災害に対応出来るよう陸地側を緩勾配化して地面に潜り込むように側溝を設け越流時に水流が高速になって被害が出ないようにした。

港湾内部については接岸部の堅牢化や海底の土砂を浚い港湾施設拡充のための基礎工事を行った。

ここ大空洞では入り口である洞窟の道路舗装や耐震補強、外気と内気の流入口を使った温度管理のための開閉調節弁取付け土台の基礎工事、大空洞内を無数に流れる河川の整備に新規耕作地の開墾、区画整理など多岐に渡る土木工事を行っている。

特に珍しかったのは現地住民からの要望で トカゲ人(リザードマン)保護区画の造成を行ったことであろうか。

ここが高温の密林地帯であった頃は機敏に動き回り人間を家畜化して労働力や食用としていた彼らもやや涼しいが温暖な気候で夜が厳しく冷え込むようになった途端動きが鈍くなり人間に家畜化され労働力や食用とされていた。

気候変動による衰弱や過度の酷使から数が激減、以前は五十万を越えていたが今は五万を切る勢いである。

耕作地の開墾も進み収穫が上がり始め外から牛や豚や鶏などの飼育が容易い家畜も導入されたため トカゲ人(リザードマン)達は恨み骨髄の現地住民によって絶滅させられるのではないかと思われていた。

しかし気候変動の当初討伐に成功した黒い巨大 雪男(イエティ)の肉の多くが現地住民に回されたのを覚えているものも多かった。

実際には変温動物である トカゲ人(リザードマン)達は低温状態ではエネルギー消費が減り食料があまり必要ではなかったというのが事実だったがそれを識るのは一人だけであったので現地住民の一部は恩義を感じ家畜化したことに罪悪感を感じていたのだ。

そんな現地住民の声が反映され食用化が禁止され大空洞の中心部に外気と内気の循環で発生する風を遮る高い土壁で囲まれた保護区が作られた。

凍てつく夜は発熱用魔道具を使ったスチーム暖房を家屋に供給するとのことである。

身体も心も温まるいい話しかもしれない。

しかし俺の土方としての仕事は続く。

いい加減ワーカーホリックで過労死しそうだが今日も借金返済のため現場に向かわねばならない。

俺は大空洞内の仮設庁舎の食堂で朝食を喰っていた。

「おーい、土方勇者。今日も現場かい」

シオンがからかい半分に声を掛けてくる。

「うるせー、好きでやってると思うなよ」

食事はレインディア持ちなので目いっぱい喰ってやる。

「しかし、レインディアに救援物資を頼んだのは拙かったな。向うに勝手にやらせればよかったのに」

「確実に届かせる必要があったんだよ。少しでも遅れたら死者の数が一桁違っていたからな。あんまり死に過ぎると俺の評判が悪くなる。レインディアの連中も大空洞の住人に恩を売るために自腹を切ると思っていたのにちゃっかり請求しやがって」

「嫌だったら踏み倒して逃げ出せばよかったじゃないか。 雪男(イエティ)討伐の功があるんだ。レインディアの連中も表沙汰にはしないだろ」

「それは分かっているんだが最近土木工事に作る喜びを感じてきたんだよ」

「最初に言ってたことと違うじゃないか」

「・・・」

「フフッ、意外にお人好しだな。評判を気にしたのじゃなく責任を感じているのだろ」

シオンが包み込むように手を重ねてきた。

俺は振り払わない。

「そんなことあるか。いっぱい殺してきた俺が今更十万や二十万の人死になど気にするものか」

「でもユウキ、救援物資の代金ぐらい払える金は持っているだろ」

ギクッ!

「壊滅したラード王城の国庫や宝物庫が空っぽだったって話しだ。誰が持ち逃げしたんだろうねぇ」

ギクッ!ギクッ!

「大体シュナに来るまでの生活費や旅費はどうしたんだ。どこかで働いていた痕跡もないし」

ギクッ!ギクッ!ギクッ!

「悪いようにはしないよ。どこに隠しているかお姉さんに話してみな」

「それが狙いか!」

俺は席を蹴って出ていった。

「まだまだ甘いねぇ」

シオンはその後ろ姿を見送りながら呟いた。

後日さり気なく重ねられた手から微弱な魔力の 経路(パス)を通され隠し場所がバレていたことを俺は知ることになる。

シオンが守銭奴に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ