元の世界に戻って
エピローグは会話文が多く、今までと比べて全体的に長めです。
気が付くと、女の子は、
路地裏に立っていました。
苔むした茶色の、
家がいくつも建っています。
ざわざわと、
人の声が聞こえます。
女の子は、自分が元いた世界に
戻ってきていました。
大通りに出てみると、
たくさんの人が歩いていました。
「あれ?」
一度女の子は見たことがあります。
貧しい生活を送りながらも、
明るく暮らそうとする人の姿を。
市場が開かれ、
声が飛び交う大通りを。
『平民が、文句を言わないでいるから、
私たちは死なずに済んでいるのだよ』
そう、父が言っていました。
今、市場は開かれず、
人の表情も翳っています。
どうしたのだろう、と、
女の子は不思議に思いました。
すると、何人かの人が、
女の子を囲います。
「白い髪、赤い瞳……
間違いない、王族の子だ」
「なんでこんなところにいるの?」
「でも、丁度いいじゃないか」
「そうだな」
「……ああ、魔女がいなければ、
少なくとも俺たちは平和だったのに」
「ああいう奴は、
ずっと底辺に居ればいいのに」
ざわり。ざわり。
人の声は、女の子の鼓膜を、
鋭く叩きます。
この人たちは何を言っているのか。
女の子は、初めて、
悪意ある言葉を聞いたのです。
自分に向けられたものでなくとも、
心が痛みました。
いつの間にか、人の言葉は、
自分に向けられたものになっていました。
「姫様。どうか我々を御救いください」
「王権を取り戻してください」
姫様、万歳。姫様、万歳。
救世主よ。生き残りの王族よ。
我らを救い給え。
人々は叫びます。
女の子は必死に耳を塞ぎました。
『魔女を殺せ』
『自分たちだけでも幸せに』
そうとしか聞こえなかったのです。




