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キドアイラク  作者: 虚虎 冬
プロローグ
2/26

女の子は無邪気な声で

「お兄様、お兄様」

 女の子の声が響きます。

 ここは、氷でできているかのような、

 美しい城、水晶城の中。

 お兄様、と呼ばれた男の子は、

 女の子を見ると破顔しました。

「どうしたんだ?」

 しかし、女の子の次の言葉を聞いて、

 その顔は強張ります。

「あのね、お月さまが赤いの」

「本当かい?」

 女の子はコクリと頷きました。

 男の子の顔はつと青ざめます。

「では、今日なのか」

「きょう? 何があるの」

 男の子は、強張った笑みを妹に向けて、

「なんでもないさ。少し父と話してくるね」

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