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女の子は無邪気な声で
「お兄様、お兄様」
女の子の声が響きます。
ここは、氷でできているかのような、
美しい城、水晶城の中。
お兄様、と呼ばれた男の子は、
女の子を見ると破顔しました。
「どうしたんだ?」
しかし、女の子の次の言葉を聞いて、
その顔は強張ります。
「あのね、お月さまが赤いの」
「本当かい?」
女の子はコクリと頷きました。
男の子の顔はつと青ざめます。
「では、今日なのか」
「きょう? 何があるの」
男の子は、強張った笑みを妹に向けて、
「なんでもないさ。少し父と話してくるね」




