第十話:戦場を裂く者たち
統一された十万の軍が動く。
それはもはや“軍”ではなかった。
一つの巨大な生物。
呼吸も、視線も、殺意すらも同期している。
レヴァルが舌打ちする。
「……笑えねぇな。さすがに数が質に変わってやがる」
セラが低く言う。
「押し返すだけじゃ無理ね」
槍が折れる。
盾が砕ける。
悲鳴と怒号が入り乱れる。
だが王軍の新兵――“王血兵”は止まらない。
斬っても。
刺しても。
立ち上がる。
「……硬ぇ……!」
兵士の声が震える。
「化け物かよ……!」
その瞬間。
■爆砕
ズドォォォン!!
大地ごと吹き飛ぶ衝撃。
王血兵が十数体、まとめて宙を舞う。
「邪魔だァ!!」
レヴァル。
大剣を肩に担いだまま笑っている。
その一振りは“剣”ではない。
質量そのものだった。
王血兵が囲む。
十体、二十体。
「隊長!黒狼を止めろ!!」
「数で押せ!!」
殺到。
だが――
レヴァルは一歩踏み込む。
■黒狼式・第二層
「遅ぇ。」
ズドン!!
踏み込みの衝撃だけで前線が崩壊する。
王血兵の動きが一瞬遅れる。
その“隙”を、彼は殴り潰すように使う。
「もっと連れてこいよ」
「その方が壊しがいがある」
その姿は――もはや人ではない。
“戦争そのもの”だった。
■王血兵・第二波
しかし。
押し潰されても、止まらない。
「再構成開始!」
倒れた兵が立ち上がる。
肉が、骨が、鎧が“再配置”される。
レヴァルが舌打ちする。
「キリねぇな……!」
その瞬間だった。
レヴァルの表情が変わる。
「……ああ、そうかよ」
低い声。
「“あれ”使うか」
■レヴァル・隠し技
剣を構える。
だが振らない。
代わりに――
「黒狼式・戦域圧縮」
空気が“沈む”。
王血兵の動きが止まる。
ではない。
“動くための空間”が狭くなる。
兵士の距離感が狂う。
剣の間合いが消える。
足の踏み場が“消える”。
「……なにこれ……!」
敵軍が初めて乱れる。
レヴァルが笑う。
「戦場ってのはよ」
「広けりゃ強いってもんじゃねぇんだよ」
踏み込み。
一閃。
王血兵が崩れる。
■同時刻・アレン
アレンは一度だけ、静かに立ち止まった。
そして――
「……もう隠している場合ではない。」
そう呟く。
側近が息を飲む。
「アレン様……?」
取り出される一本の長剣。
純白の鞘。
見るだけで空気が変わる。
「白銀剣。」
側近が目を見開く。
「まさか……それは……」
アレンの声は静かだった。
「父上の遺言だ」
『王家が真の牙を剥いた時、この剣を抜け』
ゆっくりと鞘が抜かれる。
キィィィン……
白い光があたりを満たす。
■白銀剣解放
光は“熱”ではない。
圧だった。
空間そのものを整えるような異質な輝き。
側近が震える。
「それを使えば……身体が……」
アレンは短く言う。
「構わない」
そして――
「伝令」
「全軍を集めろ」
「王家を討つ」
一瞬の間。
そして、続ける。
「そして――」
わずかに視線が揺れる。
「レヴァルも死なせるな」
側近が驚く。
「え?」
「あの男は敵では……?」
アレンはレヴァルの方向を見る。
黒い爆炎。
「違う」
静かに言う。
「今、王家と戦える人間は」
「俺と、あいつしかいない」
■戦場・再合流
王血兵の波が崩れ始める。
レヴァルの圧縮戦域。
セラの制圧線。
そして――
アレンが戻る。
白銀剣を手に。
その瞬間、空気が変わる。
レヴァルが笑う。
「おいおい……本気モードかよ」
アレンは静かに言う。
「今までが前座だ」
セラが剣を構える。
「ようやく揃ったわね」
■王軍・最終反応
遠く。
黒い旗。
沈黙。
そして――
王の“視線”。
戦場全体が凍る。
レヴァルが剣を肩に担ぐ。
「来るぞ」
セラが息を吐く。
「ここからね」
アレンが白銀剣を構える。
「終わらせる」
そして――
黒い軍が割れる。
王の意志を持つ黒影が、一歩前に出る。
戦争はついに、“王の意志を持つ黒影と三人”の構図へ到達した。




