【おまけ】母たちの会話
大星が出て行った後、ちょっとだけ様子を覗きたくてチラリと隣を見るとそこには日向ちゃんのお母さん、あかりんが立っていた。
私は驚き近寄って行く。
「あかりん、どうしたの? 大星は?」
「ああ、ゆかりん。それがまだ日向が帰ってなくて。大星君が迎えに行った」
「え、大変じゃない。大星に任せて大丈夫?」
「大丈夫でしょ。大星君、私より日向のこと知ってるし」
「まあ、そこは信頼しておくか。それにしても、やっと動き出したわね、あの2人」
「そうね。上手くいってくれたら嬉しいけど、男女のことだから分からないわよね」
「あかりんのそう言う現実的なところ好きだわ」
「大星君も子どもの時に比べて大分大きくなったわよね。もう日向越したんじゃない?」
「まあ、「晩ご飯、何がいい?」って訊いたら「背が高くなるもの!」って答え続けてたからね」
「ああ、大星君も。日向は「背が低くなるもの!」って答えてたわ」
「え、かわいい。でも、そんな食べ物ないでしょ。あかりん、どうしたの?」
「「はい、背が低くなるものよ」って言って食べさせてた。そんな食べ物ないもの」
「わー、バッサリ」
「そう言えば、どうしてこんな展開になったのか知らないんだけど何があったの」
「ああ、それがね──」
「へー、そんなことが。大星君、モテるのね」
「いやいや、そう言う問題じゃないのよ。話聞いた時、「バカなのか」と本気で思ったわ」
「まあ、いいじゃない。そんなことでもないとあの2人、何の進展もしないもの」
「それもそうだけどね〜」
あかりんとの話は尽きることなく続く。
「大星君って恋したら一途なタイプ?」
「あの子、結構、乙女だからね。この前、テレビで恋愛映画してたの知ってる?」
「ああ、知ってる。日向も見てた」
「あれでヒロインに感情移入しすぎてあの子、泣いてたからね」
「あら、かわいい」
「かわいくないわよ。私、若干ひいたもの」
「いいじゃない。日向なんて優柔不断なヒロインに怒ってたわよ。「どっちが好きなのかはっきりしなさいよ」って」
「あら、いいじゃない。私、日向ちゃんのそう言うとこ、好きよ」
「そうかしら。あ、あれ、日向と大星君じゃない?」
「ん?」
あかりんに言われて見ると大星と日向ちゃんが向こうに見えた。
日向ちゃんが大星におんぶされている。
最初は怪我でもしたのかとヒヤリとしたが、2人の表情を見て全てを理解した。
私とあかりんは顔を見合わせると満面の笑顔で2人に向かって親指を立てた。