第117話 扇動
帝国の端へと辿り着いたアリシア達
アルクスのいる場所として帝都に目星をつけて進むことにした。
「ここから帝都に向かうとして、どれくらいかかるかな。」
「おそらく急いでも数日はかかるだろう。アルクスを助けてから逃げると考えると余力を残しておかないといけないな。」
「帝都に向かいつつ、帰路のことも考えておかないといけないな。真紅龍様のところを目指すのであれば、帝都からそこまでの道のりも調べられると良いのだが。」
アリシア達は急ぎ帝都に向かいつつも、アルクスを助けた後の動き方についても道中の街々で調べつつ進んでいた。
そんな中、通りがかった街で少し騒ぎが起きているところに出くわした。
『今の帝国はおかしい、本来の帝国のあるべき姿を取り戻すべきだ!』
突然の大きな声にアリシア達が注目をすると、声高に叫び今の帝国に対する不満を煽ろうとしている者がいた。
数人の若い男達が「古き良き帝国を取り戻そう!」といったことを繰り返していて、話を聞いている住人も少なくなかった。
『そんなことは言っても何をどうするんだ?俺達の暮らしが何か変わるのか?』
『もちろんだ!皇帝に支配されるだけではなく、自分達で自分達の暮らしを決めるんだ。最近の増税だって俺達に何か良いことがあったか?皇帝はただ戦いたいだけで、俺たちのことなんか考えていないんだ!』
「なんだか演技みたいなやりとりね。」
「おそらくそうだろう、疑問を呈している男も前で話している男と同じ気配がする。住人達を焚き付けて何かしようと企んでいるんだろうな。他の街でも不満らしい声はよく聞こえてきたしな。」
「長居してもいいことはなさそうだし、早く帝都を目指しましょう。」
その後、住人達の中には衛兵らしき男達も参加して『革命だ!』と勇んでいた。
「帝国内は戦勝ムードだと思っていたんだが、やはり戦争で恩恵を受けるのは一部だけってことなのかな。」
「不満が出るとしても、何か作為的なものを感じない?道中でたまに連邦語を耳にしたけどなんか怪しい感じだったし…」
「それは多分連邦の工作員ね。きっと帝国が戦争で勝って各国の力関係が崩れたから、内側から帝国を弱体化させようとしているんじゃないかな。アルフグラーティの中はエルフばかりだからいなかったと思うけど、他の大きな街には基本的に各国の工作員が入って活動しているはず。」
「王国内にも結構他国の工作員はいた気がするかも。都合が悪いと商会の邪魔してくるってお父さん困ってた。」
「人間達の国は色々と面倒なんだな。アルクスを助け出す前に大事にならないといいが。」
「そうだね、早くアルクスを助けないと!」
帝国内での連邦の暗躍している状況を理解したアリシア達は道程を短縮する意図もあり、街に寄る頻度を減らして帝都へと流れ込む川沿いを進むことにした。
帝都までそう遠くない距離まで来るとお互いを庇い合いながら進むやけに草臥れた集団を見つけた。
「なんだろうあの人達、何処かから逃げてきたのかな?ちょっと聞いてみようか。『どうしました、大丈夫ですかー?』」
アリシアの問いかけに反応して代表者と思しき人が答えてくれた。
『オれたチは都カラ逃げテきたンダ』
『あれ、帝国語は得意じゃないですか?じゃあ他のが良いかな。』
帝国語に難があったのでアリシアが王国語、クリオが連邦語で話してみると王国語で流暢な返事が返ってきた。
「王国語が通じるのか、助かる。俺達は戦争で捕虜になった後、帝都にある地下牢に捕えられていたんだ。
最近連れて来られた少年のおかげでなんとか脱走することができてな。幸い魔術は使えるから海に近づいたら船を作ってなんとか王国へ帰れないかと思って逃走していたんだ。」
「もしかしてその少年ってアルクスって名前じゃなかったですか?」
「おぉ、そうだ。よくわかったな。もしかして彼の知り合いか?彼ならやることがあると言って帝都に残っているが、彼がいなければ俺達はここまで無事に脱走することはできなかっただろう。」
アルクスの代わりにということでアリシア達は謝意を伝えられた。
その後、アリシア達は王国に帰るなら水竜の眷属の力を借りることができるかもしれないと伝え、呼び鈴と仲間だと証明する証を渡した。
受け取った人々は改めて謝意を伝えると万が一追ってが来た場合に備えて、急いで旅立った。
「アルクスが帝都にいることはわかったし、急ごう!」
アリシア達は帝都にアルクスがいることがわかり、改めて帝都への道程を急いだ。
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