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これは・・・ですが  作者: 斉藤一


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自動ドア

社員旅行の建前として、研修会を行う事になった


行き先である旅館の通り道に近い場所であればどこでもよい


インターネットで付近の会社を検索するが、旅館自体が結構山の方にあるので近くになかなかいい会社が無い


「お、これはどうだ?」


〇〇製薬の小さな工場を見つけた


場所的にはちょうどいいが、小さな工場なので受け入れてもらえるかどうか分からない


とりあえず、一緒に出ていた電話番号に電話をかけると、事務所に繋がった


そこから、課長へ電話を交代してもらい、工場見学ならということで受け入れてもらえることになった


当日、謝礼をいくらか包み、手土産を持参してバスで目的の工場へと向かう


工場は、小さいとはいえ学校くらいの広さはあった


ただ、ものすごく古く見える。製薬会社だから、清潔ではあるんだろうけど、外観はボロボロに見えた


到着の30分ほど前に連絡を入れていたため、課長が工場入口で待機してくれていた


「ようこそ」


「よろしくお願いします」


手土産を渡すと、お礼を言われ、課長はそれを事務所の女性に渡した


工場内は、清潔に保つために、今着ている服を脱いでその上から全身を覆う服を着る事になった


社員は、時間つぶしと名目だけの研修だと知っているので、めんどくさそうにしていたが、決まりなので仕方ない


目元しか見えない服なので、誰が誰だか分からない。一応、社員と見学者が分かる様に色は違うようだが


課長は、まじめに工場内の説明をしてくれるが、うちの社員たちは雑談していて申し訳なくなる


その時、工場の奥の扉から従業員らしき人が入ってきた。そのまま、物陰に移動して見えなくなる


ただ、それだけの事だったが、あとから考えると不自然なくらいスムーズな移動だったように思う


まるで、その動きだけを数万回繰り返したようだと言えば分かるだろうか?


小さな工場内を一周し、さっき従業員が入ってきた扉に近くなった


気になったので、一番後ろに居た俺は、ちょっと列から離れてその扉へと近づく


すると、その扉はスッと開いた


扉の奥は真っ暗で、倉庫の様だった


「リフトが通りますので、注意してください」


課長の注意を促す言葉に、そちらへと視線を向ける


そして、視線を戻すと、今見ていたはずの扉は、しっかりと施錠されていて「危険物保管場所」と書かれた赤いパネルが貼り付けてあった


「え、さっき、開いて……?」


それに、俺はここから従業員が出てきたのも見ている。しかし、付近を見てもそれらしき従業員の姿は見当たらなかった


「すみません。この場所は一体……?」


俺は、どうしても気になって課長へ質問した


課長は、俺の質問に一瞬嫌そうな顔をするが、質問に答えてくれた


「そこは、以前は薬品の保管庫に使っていましたが、今は使っていないのですよ」


俺は、その答えに「さっき、従業員が使っていましたよ」と言いたかったが、そこまでして聞くことでも無いかと思いなおした


「ありがとうございました」


工場見学が終わり、俺は出る前にもう一度さっきの扉を見た


扉が、自動ドアの様にスッと開くのが見えた


まるで、俺に中へ入れと言わんばかりに

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