巨人
俺は山岳救助隊だ
救援要請があって雪山へ向かっている
雪で道が分からなくなったのか、今まで誰も行ったことのない場所で遭難したようだった
だが、所詮は連絡の取れる場所……最初はそう思っていた
ヘリコプターで近くまで行けるが、そこからは木や岩がじゃまで飛べない
近くの開けた場所で数名が降りる
そして、遭難があった場所へ向かったが、そこにはテントの残骸しか無かった
風雪を避けるためだろうか、少しくぼみになった数メートルの洞窟のような場所に立てられたテント
それがぐしゃぐしゃにつぶれていた。当然、中には人がおらず、どちらに逃げたのかもわからない
「足跡がありました……しかし……」
隊員からその続きの言葉が出てこない。それならば見たほうが早いだろうと、足早に向かう
「これは……」
それは1mほどの足跡だった。明らかに人間の物じゃない
その大きな足跡と共に、小さな足跡が続いていた。小さな足跡は、普通の人間の足跡だろう
しばらく足跡に沿って歩くと、血の匂いがしてきた
「うっ……ごえ……」
一人の隊員がえづく。見ると、岩肌に大きな血の跡がついていた
まるで、壁に向かって大きなカラーボールを投げたかのような、真っ赤な円が
しかし、地面にはあるはずのものが無かった
壁に叩きつけられた何かの死体が無い
「あ、居ました!」
別の隊員から報告が入った。がけ下に人影らしきものが見つかったそうだ
行ってみると、崖から足を踏み外したのか、すでに事切れている遺体だった
恐らく、この人が救助を求めたのだろう
その顔は、落下の為か恐怖の表情で固まっていた
その遺体を引き上げ、樹々の間を抜けていると
ズシンッ
と何か大きなものが倒れる様な音がした
しかし、ズシンッズシンッとその音は続いた
一瞬、周りの樹と同じくらいの何かが、少しふぶいてきた雪の向こうに見えた気がした




