技術ツリー完成後の日本②
誤字脱字があると思います。温かい目で見てください。
ユミはホログラムディスプレイに映るアンケートの分析結果を見つめ、小さくため息をついた。
他社と合同開発している新型工具。消費者が最も求めているのは「長期間使える圧倒的な耐久性」だった。しかし、それを現在の加工技術で実現しようとすると、どうしてもコストが見合わなくなる。AIが弾き出すシミュレーション結果も、見事なまでに平行線を辿っていた。
「素材の強度を上げれば、加工の精度が落ちる……。今の技術ツリーの枝葉だけじゃ、この壁は越えられないか」
その時、ユミの端末に一件の優先通信が入った。中級管理者のサトウからだった。
『ユミ社長、夜分にすみません。今日の朝、うちの工場のゲンさんとケンジのチームが、技術ツリーに新しい「形式知」を登録したのを確認しましたか?』
ユミが手元の操作でサトウから送られたデータを展開すると、そこには朝のラインでゲンさんが直感的に修正した「気温の変化による素材の収縮率の微細な調整データ」が表示された。
「これ……ただの精密加工のデータじゃないわ。この特殊な熱処理のアプローチ、新型工具の刃先のコーティングに応用できないかしら?」
そのアイデア通りにシステム上で、特殊な熱処理のアプローチと新型工具のコーティングを掛け合わせた。
その瞬間、音声メールが飛び込んできた。
ホログラムディスプレイでは、掛け合わせた際の確認の「本当にこの枝を繋ぎ合わせますか?」と言う文章の上に、差出人の名前と共にメールを開くかの確認が表示されていた。
『ホッホッ、いいところに目をつけたね、若き社長さん』
スピーカーから響いたのは、穏やかだが芯のある老人の声を模倣するAI音声だ。技術ツリーの雛形形成に尽力したレジェンドであり、今は全国の若き花弁たちをアドバイザーとして見守る、元ロケット開発責任者のタカハシだった。
「マスター・タカハシ! 今、このデータを見ていたところです」
思わず興奮した声を上げるユミにタカハシを模倣するAIは、本物のタカハシが話すように対応した。
『ええ、見ていましたよ。ゲンさんの野生の直感は相変わらず見事だ。……だがユミさん、その熱処理データをそのまま工具に使うだけでは、まだ足りない。私の昔の失敗と同じ轍を踏むことになる』
タカハシのホログラムが、ユミの持つ工具の設計図の上に、見慣れない数式を重ね合わせた。
『かつて我々がロケットの部品を作っていた時の、極限環境下での熱膨張の計算式だ。ゲンさんの現場のデータと、この過去の基礎理論を「交配」させてごらんなさい』
ユミは息を呑んだ。AIに即座に二つのデータを統合し、再シミュレーションをかけさせる。
数秒後、ディスプレイには、コストを抑えつつも、消費者が求める耐久性をはるかに超える新型工具の完成予想図が、淡い光を放ちながら浮かび上がった。
現場の職人の泥臭い直感と、若き技術者の翻訳。
そして、過去のレジェンドが残した普遍的な知恵。
それらが、若き経営者の「問い」のもとで一つに結びついた瞬間だった。
ユミはすぐさま、ホログラムディスプレイの内側カメラを起動して、画面内にタカハシがいるようにお礼の言葉を述べる。
「ありがとうございます。マスタータカハシ。おかげさまで私の未熟なアイデアが形になりました。これから、詰めに入りますので音声AIで失礼します。」
ユミはお礼の映像を、自身の音声AIとリンクさせて送信する。謝辞はシステム上必須ではないが、彼女なりの筋通しだった。あとはエージェントAIが、ユミの思考を模倣して自然に会話を繋いでくれる。
「よーし!やるぞ。」
ユミは気合いを入れて、商品化の追い込みに入った。
『お忙しいところ、ありがとうございました。マスタータカハシ。おかげさまで私の未熟なアイデアが形になりました。またお会いした際には、改めてお礼をしたいです。』
「ホッホ。ユミいいですよ。あなたもお忙しいでしょう。私はほとんどキャンパスにいるから、あなたが講義に参加するときにでも話しましょう。ただし、また切り詰め過ぎてはだめですよ。今度元気な顔を見せてくださいね。」
『はい、すみません。気をつけるようにユミにはきつく言っておきます。では、ありがとうございました。』
「ありがとう。エージェントユミ。」
タカハシのホログラムディスプレイに表示されていたユミのエージェントAIが、自然に頭を下げるとユミとの音声メールが終了する。
「それで……本当に彼女は元気なのかな?サトウくん。」
キャンパス近くのバーの奥まった席に座っていた
タカハシは正面のサトウに声をかける。
読んでくれて、ありがとうございます。技術ツリー完成後の日本と主人公たちが考えた日本を救う案を織り交ぜて【エッセイ】として、随時投稿していきます。お楽しみに。




