俺の目的
俺は何なのか。
そう問われても、何も変わらない。
「俺は.....」
「いやぁまさかここまで分かっちゃうとはね」
コツコツと階段を上がる音が、二つ聞こえる。ただしそこからはどこか憎たらしくも、どこか懐かしい声が届く。
その足音は真っ直ぐにロリスの泊まる部屋に着く。廊下を歩きいよいよ部屋の前に立つと、扉は開かれる。
「ショウタさん、久しぶりだね」
砂漠にて別れたっきり、久しく見てなかった顔が見られる。カズト、ミウは服を替え再びショウタの前に現れた。
「カズト...ミウ...無事だったのか...!」
「そっちこそ...大丈夫だった?」
「!?」
ショウタの安堵に、ミウは一歩前に出て心配そうな顔を見せる。それに最も反応したのはロリスだった。ミウはポンチョを着ていた砂漠と違い、陽の近いこの街では服の丈はやけに短く、肌の露出が激しくなっていた。
ロリスはアワアワと動揺しながら、小さく鼻血も出ている。
「あっ!ロリスも居る!久しぶりー!」
「!!!」
街の気温により、さらに露出された肌を押しつけられ、抱き付かれたロリスは遂には気絶してしまった。抱きついた本人は何故気絶したかは分かってないようで、ショウタと何度も顔を見合わせ焦りを隠せない。
「あれ?なんで?!ショウタなんで?!」
「まぁまぁ落ち着けって...疲れたろうし、ロリスと二人でソファに座っといてくれ」
ロリスが年上女性が好きだったことなんて、そういえばと思えるくらいには忘れていた。さっきまで張り詰めた空気だったからか、ショウタもどっと疲れが乗っかってきた。
「ハハハッ、面白いね。.....非人の割には」
椅子には勝手に座り、机に肘を立て、顎を乗せる。
「非人?.....今ロリスの事非人って言ったかカズト」
「ん?あぁ言ったよ。だってそうでしょ?非人って言葉が嫌だったら謝るよ。ゴミ、クソ、ショウタさんはなんで呼んでるの?」
「あの子にはロリスって名前があって生きてんだ。わざわざそんな言い方無いんじゃねえか?」
「ショウタさん、綺麗事はやめようよ。俺はこの世界の人間は見下してるし必要無いと思ってる。いわば道具だ。俺達が、帰る為の。」
「綺麗事だと?実際にあいつら生きて目の前にいる!それだけで人として関わるもんだろ」
「ねえショウタさん。人って何かな?何をもって人とするの?」
「そりゃあお前、息をして、美味しい物食べて、生きていたら.....」
「それは動物と変わらない。現代の人間には、現代の人間の知識と、技術と、能力がある。それに対してここの奴らはどう?歴史の遥か後ろで、ただ突っ立ってるだけだ。そんな奴らを、同じ人間とは思えない」
「だとしたらお前の目は節穴だな。ロリスは冷蔵庫を自らで生み出したんだ。お前が見てない間に、キラーでも使ったんじゃないか?」
「だから面白いと言ったんだよ。この世界で唯一、彼女だけがこの世界を、歴史を再び脚を動かそうとしてる。でも惜しいかな、やっぱり非人の域は出なかったようだからね」
相容れない思想を前に、二人は冷戦状態になる。
「.....それで?ショウタさんは今何してたの?」
「...下の街にいた子供の両親を探してた。けど二人とも帰れない理由を抱えてたから、それを取り除こうと思う」
カズトは両手を頭の後ろに置き、上を向く。
椅子を少し傾かせ、退屈そうな態度をとる。
「それは帰る為の計画に必要な事?さっきも言ったけど、俺はわざわざ動物達に歩幅を合わせる必要はないと思うけど?」
「だから何でそう自分たちのことしか.....」
「それが普通だよ。人の事ばっかり考えてるショウタさんのほうが異常だ。この世界に来させられた人間が思うのは大きく分けて二つ。『帰りたい』、『楽しみたい』このどちらかだ。一体ショウタさんはどっち派なんだろうね」
この異世界の人間を見下してるような言葉。
どこかで聞き覚えがあるかと思えば。
ネストハートで襲ってきたロガン、ミオラに対してもやけに暴力的だったのはそういう事だったのか。
「お前に何と言われようと、俺は目の前の人間が助けられるのに助けないようなやつにはならない。このことカズマサやマリさんに言ったらぶっ飛ばされるだろうな」
ショウタは今の言葉を冗談で言ったようには思えない。しかし両親のことを出した瞬間、カズトの表情は心底つまらなそうな顔をする。
「あぁ、そう。まあショウタさんが決めたならそれで良いんじゃない?じゃ、俺は出るから。探したくなったらこの街でよく目立つ建物にいるから」
勝手な言葉を残し、カズトは立ち上がると何事もなかったかのように部屋から出ていった。
そういえばカズトが異世界の人間であるミウに優しい理由は.....?
「.....っは!」
カズトが部屋を出てすぐ、ロリスは目を覚ます。
「...どれくらい寝てた?!」
「ほんの5分くらいだけど...」
起きるや否や、ロリスはミウにどのくらい気絶していたかを問う。帰ってきた答えが大したことなかったのか、安堵からミウに向かって倒れ掛かる。
どうやら話を聞くと、今日売り切れた商品を明日までに追加で100個作ってくると、買うのを諦めた客達に約束したらしい。ショウタはロリスの助手として一晩『冷蔵庫』の制作に勤しんだ。
この日ショウタ、ミウ、ロリスは少しでも数を作る為部屋に引き篭もる。しかし、カズトの他にも部屋から出た人物は他にも居た.....。




