↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/36

第33話 自分の番

『お前の仲間は預かった。それが誰であるかぐらい言わなくてもわかるだろう。利用価値があるため、まだ殺していない。助けたくば、お前達が一度言った地下洞窟へと来い』


「これは.....」


 私はこれを見て確信した。これはカイトを攫った人物が書いた文であると。そして、その人物は


 しかし、そう考えるなら、色々と疑問が生じることもある。それはまず「お前」という個人に送った言葉であること。


 私とカイトは前からグレイさんとレビィさんとパーティを組んでいる。だから、この言葉はおかしい。


 考えられることは、二人と組む前から私とカイトはどこかで観察されていたか。または、単純に私宛に送られたものか。私の予想通りでは後者であるけど。


 そして、この言葉で確定的にわかっていることは、私達が洞窟に入ったということ。それは私が冒険者に捕まって、カイト達が助けに来てくれた時のことだ。


 ということは、あの時にはもう私達を観察していたということ。もしかして、あの冒険者は操られていたのか?


 私は魔法の才能なないからあれだけど、普通は魔法に達者だから、そういうことが出来るかもしれない。


「『お前』って誰のことだろうね? 私達は今は三人だし。それに恨みを買うようなことはしてないし」


「だとしたら、考えることは一つだ」


「魔女だよ。間違いなくね」


 私の言葉に二人は息を飲む。おして、自分のことのように落ち込んだような顔をする。


 二人はもしかして、魔女の中でもいい人はいると考えている人達なのだろうか。そうだとしたら、私は嬉しい。


 私は同じ魔女に復讐するために旅をしている。しかし、それはあくまで人族を敵だと思っている悪い魔女に限った話だ。


 もちろん、交渉の余地が残されているのなら、説得するに越したことはない。しかし、現段階では限りなく薄いのが難点だけど。


「それにしても、どうやってこの街に入れたんだろう?この街には少なからず、魔女を察知する魔道具が存在してると思うんだけど」


「魔女は昔は『万能の存在』として崇められていた時もありました。だから、たとえどんなに厳重な警備がされていたとしても、侵入できる人はいます」


「まあ、だろうな。魔女は人には出来ないことを簡単にやる人たちのことだ。それを失念していたのは俺達の方だな」


 グレイさんはそう言うと悲しそうな顔をする。なぜそうするのかわからない。だから、私は思わず聞いた。


「グレイさん達は過去に魔女と何かあったんですか?」


「......そうだな」


 グレイさんはレビィさんと一度顔を見合わせる。そして、レビィさんが頷いたのを見て、過去を語り始めた。


 それは孤児だった頃に良い魔女と出会い、育てられた時のことだった。


 その話を聞いて私は胸が熱くなる。自分のことのように嬉しく感じる。だからこそ、私のカイトにこんなことをするなんて許せない。


 私だって覚悟を持っている。人を殺す覚悟を。カイトと一緒だったけど、もう一人は魔女を殺した。そして、私の目的は育った村を魔女に復讐すること。


 だから、私は告げた。


「早くカイトの場所に向かおう」


 それから、私達は簡単な作戦と支度を済ませてカイトがいる洞窟へと向かった。皮肉にも私が捕まったあの洞窟へと。


 全くどういう神経しているのかわからない。それは私を挑発しているようにしか思えない。


 ......いや、実際そうなのだろう。魔女の目的がそもそもの話、私である。だから、私を呼び出すことが真の目的だろう。


 そして、そのついでにカイトを捕らえたというところだと考えられる。カイトの持つ呪いの魔法が魔女にこそ有効活用できる魔法だ。


 それに、私がまだ小さかった時から、呪いの魔法に関する研究を続けている。だから、おそらくその魔法をカイトから奪うことも目的に入っていると思う。


 魔女の私と呪いの魔法を持つカイト。他の魔女からすれば、カモがネギをしょってきたような感じだろう。こんなチャンスを逃がすはずがない。


「邪魔!」


「今回は急いでるからね!」


「どいてろ!」


 私達は各々が愚痴のような言葉を吐きながら、森に現れる魔物を倒していく。


 時は深夜。暗く恐怖を誘うような森は笑うかのようにさざめき、夜を照らす月の光さえ遮るような葉で私達を包み隠す。


 前に来た所とは思えないほど、この森は別の顔を見せる。


 夜の魔物は昼間の現れた魔物より強く、案外に狡猾である。なので、私達はただでさえ方向を狂わせるようなこの森で足止めを強いられている。


 それでも私達は着実に歩みを進めていく。レビィさんの作り出した光を頼りに道を切り開いていく。


 汗をかいても、足がきつくなってもカイトを救うためなら頑張れる。今度は私がカイトを救う番。待っててカイト。私は必ずカイトのもとへ辿り着くから。


****************************************

「うぅ......ここは?」


「あら? お目覚めかしら」


 俺が目覚めると目の前に魔女が立っていた。俺はその人物をしっかりと認識し始めると改めて捕まったんだなと実感した。


 そして、俺は自分の現状を確認する。


 今の俺は磔台で両腕を開くように頭上で固定されている。脚もまた同じ。上半身は裸で、全身は傷だらけに青あざだらけ。冒険者と素手で殺り合ったからだろうか。


 念のため徒手空拳をグレイから習っといて良かったと思ってる。まあ、それも初歩の初歩だが。


 周りを見る。目の前に魔女と五人の屈強な戦士がいる。俺が戦った奴の姿はない。


 この場所は見覚えがある。ここは俺がクレアを助けた時の場所だ。全く、皮肉な魔女なことだ。


 すると、魔女が俺の顎を手でそっと持ち上げると声をかけてくる。


「無視は寂しいじゃない」


「ははは、俺はシャイなんだよ」


「こんな状況でその返し、嫌いじゃないわ。だから、あなたに交渉したいことがあるの?」


「魔女が俺に交渉? 俺がそれに応じるとでも?」


「ええ、応じるわよ。それとこれからよろしくやるんだもの、ラウラって呼ぶのを許してあげる。ちなみに、抵抗しても無駄よ。その磔台にも魔法が使えなくなる魔法陣を付与してあるからね」


 左目の下に模様が入った魔女ラウラは言葉を告げながら、短剣や針をチラつかせる。なるほど、交渉というのはそういうことらしい。


「痛い目合いたくなかったら、交渉に応じろってことか。もうその時点で交渉じゃなくて、脅迫だと思うんだが?」


「私は見せてるだけよ。でも、容易にそういう手段は取らせてもらうわ。とはいえ、本当はしたくない。だって、存外気に入ったもの」


 ラウラはそう言うと少しだけ照れたような表情をした。これがただの美人であれば、どれだけ良かったことか。


「残念、俺は何もしゃべらねぇ―――――――ああああ!」


「ごめんなさい。手が滑ったわ」


 俺がそう言うとラウラは躊躇なく俺の右肩に針を刺した。その痛みに俺は思わず叫ぶ。


「あなたが悪いのよ? 私の機嫌を損ねるようなことを言うから。これからは刺されないようにね? それじゃあ、脅迫(交渉)を始めるわ」


 それからは俺がどれだけに痛みに耐えるかの戦いであった。ラウラは俺に勧誘を続ける。それに対し、俺は断り続ける。


 すると、俺の体に針がどんどんと刺されていく。最初の右肩から反対の左肩。それから右太ももに、左ふともも。右腕に、左腕。


 それでも、断ると針から短剣に変わった。痛みはより激しさを増し、流血量は増えてくる。そして、ラウラも僅かなイラ立ちを見せ始めた。


 しかし、それでも俺は断る。すると、ラウラは俺に何か魔法をかけた。その瞬間、意識が飛びかけるような激しい痛みに襲われた。


 俺は歯を食いしばり、時には舌を噛んで意識が飛ぶのを耐えた。この痛みなら、意識が飛んでもすぐに痛みで目覚めさせられるのだが。


 それでも、一度でも意識が飛べば、俺の意地とも呼べるものが壊れてしまうような気がしてならないから、耐えた。


 すると、ラウラはさらにイラ立った。もう表情で判断できるほどに。


 俺との交渉はもう拷問とかしていた。刺したり、切ったりを何度も繰り返す。


 俺からの流血は増えていき、体が冷えてきた。もうヤバいかもしれない。


 その時だった。


「カイト! 助けに来たよ!」


 クレアの姿がそこにはあった。

別作の「神逆のクラウン」も良かったら読んでみてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。