第32話 襲撃
「ねぇ、カイトが全然帰って来ないよ......」
「き、きっと誰かと飲るんじゃないかな?」
「レビィ、やめとけ。下手な嘘は逆に気づ付けるもんだ」
宿谷の男子部屋の方で、私、レビィさん、グレイさんの三人が向かい合わせで座っていた。
レビィさんがカイトとはぐれてから、カイトは深夜に近くなった今も帰って来ない。そのことに、私は暗い顔をして俯いており、そんな私はを見かねたレビィさんは私にフォローの言葉を入れるも空回り。
また、グレイさんも私に対してかける言葉が見つかっていないようだ。正直な話、どうするべきかもわかっていなかった様子だ。グレイさんは冒険者活動を始めてから、幼馴染のレビィさあとしか組んでいないから。
私はこれからの行動を考えていた。本当なら、すぐにでも探しに行きたい。
しかし、自分の立場が分かっている以上、下手に動けば事態を悪化させることになる。それだけは防がなければならない。
なら、他に考えられることはグレイさん達に冒険者ギルドで行方不明者届けを出してもらうこと。
しかし、これは実質クエスト依頼ということになる。それは要するに他の冒険者がそのクエストを受けてくれるかどうか。
普通の冒険者はまずこのようなクエストは受けない。それは大概報酬が割に会わなかったりするから。
そういうクエストの場合、多くの場合狂暴な魔物に襲われていたり、凶悪な悪党に捕まっていたりする。
そういう魔物や人達は新人冒険者や中級冒険者であっても、荷が重いことだってある。また、上級冒険者はギルドや領主、はたまた国王からのクエストを受ける傾向があるため、受けてくれるのは本当に暇だった場合に限る。
それは上級冒険者が相手してくれないと多くの人達が血を流すということなので、仕方ないということは理解している。
だから、もとより上級冒険者をあてにしていない。
なら、時間が空いている中級冒険者が狙いも目かもしれないがそれも違う。その冒険者は上級を目指す者か、家族のために生活費を稼ぐ者がほとんだ。
そして、後者を狙うのなら、それなりに高い報酬量を用意しなければならない。
しかし、そんなお金は新人の私にはない。それにグレイさん達にお金を借りるのも申し訳ないし、クエストを発注しても受けてくれる人がいるかどうか。
もちろん、自分達でも探しに行きたいが、まるで見当もつかない以上動くのは得策ではない気がする。
「どうすればいいの......」
私はは思わず弱弱しい声を漏らす。すると、腕組みをしているグレイが答えた。
「クレアさん、考えたが、やはり冒険者ギルドにクエスト発注はした方がいい。お金のことは気にするな。しないよりマシだからな」
「で、でも......」
「そうだよ。これでも伊達に黒ランクじゃないしね」
レビィさんは私の言葉を被せるように言葉を告げた。そして、不安を感じさせないような笑みを浮かべる。
その表情を見て私は思わず心が軽くなったような気がする。私は一人じゃないグレイさんとレビィさんがいるんだ。
「それじゃあ、すぐに―――――――」
「待て、静かに」
私は机を軽く叩きながら立ち上がる。そして、善は急げと動こうとした時、グレイさんが被せて言葉を告げてきた。
私は思わずグレイさんを見る。すると、グレイさんは魔物と戦う時のように目を鋭くさせて、口元に人差し指あてながら、扉の方をジッと眺めている。
そのことに私とレビィさんは思わず顔を見合わせる。しかし、グレイさんの指示に従うに口を閉じる。すると、この空間に静寂が広がっていく。時折聞こえるのは風が窓を叩くのみ。
しかし、よく耳を澄ましてみると他の音も聞こえてくる。それは古びた木を踏むときに出るギシィギシィという音。その音はまだ小さいが段々と音を大きくしていく。それは近づいているということなのだろうか。
「二人はこの場で待機。レビィは相手を拘束できるように準備してくれ」
「わかったよ」
グレイさんとレビィさんは小声で話す。すると、グレイさんは音を立てないように椅子をから立ち上がる。
そして、かかとから足をゆっくりと着けながら、扉のすぐ横まで歩いていく。それから、扉のドアノブ側の横へとしゃがみながら待機した。
また、私とレビィさんもすぐに何があっても動けるように立ち上がる。すると、レビィさんは机に立てかけていた杖を持って、小さく呟きながら詠唱を始めた。
私は近くに剣を持ってきていなかったので、座っていた椅子いつでも振り回せるように掴んだ。
そして、近づき、大きくなっていた来る音は突然消えた。私は咄嗟に身構える。心なしか唾を飲み込む音がよく聞こえる。もう誰もが寝静まる頃ではあるけど、それだけこの場が異常に静かだということ。
すると、グレイさんがそっとドアノブに手をかける。そして、一度だけ私達の方向へと顔を向けると「行くぞ」という口パクをした。それから、一気に扉を開ける。
「ウォンウォン!」
「ギャシャアアアア!」
「カ―――――――!」
グレイさんが扉を開けた瞬間、双頭の犬、成人男性並みの蛇、鋭い爪を有したカラスが侵入してきた。
グレイさんは横を通り過ぎる蛇に向かって剣を突き刺す。そして、突き刺したまま廊下へと連れ出した。
しかし、犬とカラスは、連れ出された蛇に目もくれず私達に襲いかかってくる。すると、レビィさんが魔法を発動させた。
「ライトチェーン!」
レビィさんが魔法名を告げる。するとすぐに、手前の床に大きな魔法陣が浮かび上がる。
そして、その魔法陣の上に犬とカラスが入った瞬間、魔法陣から光の鎖が飛び出し、二体の魔物に絡みついて拘束した。
「クレアちゃん、行くよ!」
「はい!」
私は椅子を持ち上げて魔物に接近する。そして、レビィさんはカラスに向かって、杖をこん棒のように使い、叩きつける。
一方で、私は犬へと思いっきり椅子を叩きつける。すると、レビィさんはカラスの魔物の頭を破壊した。だが、私は叩きつけた椅子が壊れて、双頭の内の一つを破壊しただけ。
私は思わず歯噛みした。剣を持っていれば仕留めることが出来たのにと。するとその時、犬は鎖の拘束を無理やり破壊して、私に向かって飛び掛かってくる。それに対し、私は咄嗟に後ろへ下がることで避ける。
しかし、その犬は避けられても尚私に向かって来る。弱いと思われているのか。それは正解なのだが、そのような感じではない気がする。
私は思わず目を見た。すると、その犬の目は赤く光っていた。これはまさか!?
「クレアさん、受け取れ!」
「グレイさん! ありがとう!」
犬は私に向かって飛び掛かってきた。すると、扉の場所へと戻ってきたグレイは私に向かって剣を放り投げる。
そして、私は感謝の言葉を述べながら、剣を受け取る。それから、一気に振り下ろした。
犬は残っていた頭を切られて、飛び掛かってきた勢いのまま壁にぶつかった。そして、私は一応完全に動かないことを確認すると安堵の息を吐く。
「なんだったのかな」
「さあな。けど、大体のことは予想つくだろ」
「そうですね......それは?」
私は犬の赤く輝いていた目を見た時のことを思い出し、同意するように言った。
すると、ふとグレイさんが何かを持っていることに気付いた。その手に持っていたのは白い紙。手紙か何かであろうか。だとしたら、もしかしてあの内容は......
「これは扉の裏に張り付けてあったものだ。そして、とりあえず内容を見てくれ」
そう言うとグレイさんは机の上に手紙を広げた。
別作の「神逆のクラウン」も良かったら読んでみてください




