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第22剣 クエスト

「クレア、達成できそうな依頼を持ってきたぞ」


「これは1つ上のランクのだね。随分と思いっ切ったね」


 クレアは俺が渡したクエスト内容に目を通していくとそんなことを呟いた。そして、俺達はそのクエストに合わせた準備を始めるとその魔物がいるとされる場所まで向かって行った。


 ちなみに、俺がクレアの反応を聞かずにクエストを持ってきたのは、簡単な話で余計な荒事を避けるためだ。


 クレアは魔女であるため、冒険者ギルドに不用意にうろつくと魔道具に反応する恐れがある。


 冒険者登録をする時に、周りの冒険者から反応しなかったのは運が良かっただけだ。だから、今さっきも路地の方でひっそりとしていた。


 俺は思わずクレアへと目を向ける。


 そのクレアの恰好は機動力を重視したような軽めな服装で、大人の男性が持ちそうなロングソードを背中にしょっている。また、銀色の籠手は太陽の光に反射して輝いていた。


 そんなクレアの姿を見ると改めて変わったなと思うことが二つある。それはまず冒険者ランク。


 俺とクレアは最初は黄ランクだったが、今は残り少しで青ランクといったところにいる。


 そして、一番に変わったことはクレアが戦闘に出るようになったことだ。俺はクレアが安全に目的を達成できるようにと思って修行していたのだが、クレアは俺ばかりに戦わせているのが申し訳なく思って、修行をしていたらしい。


 どうやら互いに互いを思って行動していたらしい。そう考えると凄くむず痒い。クレアが突然クエストに参加すると言ってあの格好で着た時は驚きもあったが、自分の考えが読まれているようで恥ずかしかった。


「今でもかなり不思議に感じるな。クレアが戦闘に出るなんて」


「もう慣れてもいいんじゃない?これでももう5回は討伐クエストに出てるんだよ?」


「そうそう、前から思っていたけどカイトちゃんは過保護なんだよ。もう少し信用してもいいんじゃない?」


「いや、信用してるわけじゃないんだが......」


「要するに可愛がりが過ぎるんだろ?というか、兄なら妹を護って当然みたいな?」


「おいグレイ!それは内緒の話だろ!」


「へぇ~、カイトは私のことそんな風に思っていたんだ」


 グレイの予想外のバラしに俺は驚いていると横にいるクレアから何とも言えないジトっとした目が届けられた。その目は「あんまり子ども扱いしないでくれる?」といった感じにも見えた。


 それに対し、俺はどういう言葉を言えばいいかわからなかった。正直、過去に妹とやり取りしたことを思い出したが、そんな態度にはならなかったし。


 それに、クレアを子ども扱いしているのは本当のことだし。


 そして、クレアは何も言い返さない俺に拗ねたように顔を背けると先行して歩き始めた。


 それがそんなクレアに困惑していると不意に両肩に手が置かれた。俺は思わず後ろを見てみるとグレイとレビィが「ドンマイ」と伝えるかのような顔をしていたのに腹が立った。


 それから、俺達は湖畔の近くにやって来た。そして、そこにいると言われるブラッドタイガーの討伐だ。


 目標討伐数は三体。グレイとレビィが一体ずつ。俺とクレアで残りの一体という感じだ。


「ブラッドタイガーは機動力が高くて、気性が荒いから気を付けて。二人の場合はとにかく離れないこと。離れたら、おそらくクレアちゃんが優先的に狙われると思うから」


「わかった」


「お前ら、静かに。遠くから音が聞こえる。どうやら俺達の臭いを嗅ぎつけたようだ」


 グレイの突然の言葉によって、俺達はすぐさま動けるように身構える。すると、遠くから丁度三体のブラッドタイガーが現れた。


 その虎は喉を唸らせ、腹が減ったかのように涎を垂らしている。また、こちらの様子を伺っているようだ。


 俺達が間合いを測りながら歩くと一定の距離を保ちながらブラッドタイガーも動いていく。


 そして、まず仕掛けたのは魔術師のレビィであった。レビィは多数の風の弾丸を虎に向かって一斉射出。すると同時に、ブラッドタイガーが動き始めた。


 そして、ブラッドタイガー一体一体に俺達は相対していく。それから、俺とクレアは一体のブラッドタイガーを挟み込むように立つと俺から攻撃を仕掛けに行った。


「ガア"ア"ア"ア"ア"ア"!」


「おらあああ!」


 俺は両腕を剣に変えると右腕を一気に振り下ろした。だが、それは後ろに下がられて避けられ、逆に鋭い爪を振るわれた。それに対し、俺は左腕で受けしながら、距離を取って行く。


「せいやああああ!」


「ガア"ア"ア"ア"!!!」


 すると、ブラッドタイガーの後方にいたクレアがロングソードを一気に突いた。それは、ブラッドタイガーの胴体に突き刺さり、ブラッドタイガーは痛みの叫びを上げた。


 だが、刺さりが甘かったらしく、剣から体を引き抜くとクレアへと飛び掛かった。


「がっ!」


 俺はそうはさせまいとブラッドタイガーの後ろから急接近していく。しかし、ブラッドタイガーは俺の攻撃を読んでいたのか、俺の振った剣に合わせて横に移動し、頭を振って頭突きをかました。それは、簡単に俺の体を吹き飛ばした。


 そして、俺が地面へと叩きつけられると数メートル転がっていく。だが、俺はすぐに体勢を立て直すとブラッドタイガーの方を見た。


 すると、クレアが剣を横に向けながら、ブラッドタイガーの攻撃を何とか抑えている。あれは、クレアだから出来ることだろう。


 俺はすぐさまブラッドタイガーに突撃すると一気に剣を突いた。すると、ブラッドタイガーは俺の接近に気付いていたようで、その突きを避けると飛び掛かってくる。


 だが、そこにクレアが背中から切りかかる。


「ガア"ア"ア"ア"ア"!」


「あ、ちょっと待て!?」


 俺はクレアの攻撃によって仰け反ったブラッドタイガーに正面から切りかかった。すると、ブラッドタイガーは叫びながら、この場から逃げ出した。俺達は逃すまいと思わず追いかける。


「きゃあ!?」


「クレア!」


 すると、ブラッドタイガーは一気に180度回転して俺達に向かって突撃してきた。


 そして、魔法で強化して先にブラッドタイガーに追いついていたクレアが標的になった。そのブラッドタイガーは加速したままクレアへと衝突していき、そのまま勢いよく跳ね飛ばす。


 そして、ブラッドタイガーは引き続き俺を狙って走ってくる。それに対し、俺は剣をクロスさせて構えるとその突撃に備える。


「ぐっ!」


 俺はブラッドタイガーが衝突してくると思わず吹き飛ばされそうになるのを足を踏ん張らせて耐える。


 ブラッドタイガーは押し潰そう俺にさらに圧をかけてきた。だが、俺はそれもなんとか踏ん張る。


 そして、右足を上げると剣に変化させても思いっきり蹴りかかった。その攻撃はブラッドタイガーの胴体を大きく切りつけていく。


 それによって、ブラッドタイガーは俺から離れていく。そこを俺は見逃さず追撃した。


 俺は魔法で膂力を強化することは出来ない。最近、筋トレとかを始めているが、そんなものはこの世界から見れば微々たるものだ。


 だから、手数で攻める。俺はブラッドタイガーに対して何度も切り刻んでいく。


 そして、ブラッドタイガーが弱った姿を見せた所で、俺は一気に頭へと剣を突き立てていく。


 すると、ブラッドタイガーは地面に横になって絶命した。俺はしばらく見ても動かないことを確認すると安堵の息を吐く。


 そして、俺は倒したことをクレアに伝えようとするとその姿が見えなかった。


「おーい、クレアー?」


 俺は大声をかけてみたが、どこからも返事がしない。そのことに俺はそこはかとない氷不を感じていた。

別作の「神逆のクラウン」も良かったら読んでみてください

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