第21剣 誰かのために
「はあはあはあ......もう一本」
「一回休憩したら?まだ時間はあるんだし、焦る必要はないんじゃない?」
「何かあったら遅いだろ?」
「過保護だな~。それでも出会った頃よりはだいぶ時は経っていると思うんだけどな」
そう言いながらも俺の言葉に応えるようにグレイは構えた。そして、俺は膝につけていた手を剣へと変えて一気にグレイへと突撃した。
そして、俺は右腕を思いっきり突きつける。が、それはグレイによって受け流される。
しかし、俺は実力差で避けられることはわかっていた。なので、俺はその場で思いっきりブレーキをかけ、そのまま突き出した右腕を横に振るった。
その攻撃は、グレイが剣を攻撃軌道上に立てたこと防がれたが、そのことで左側ががら空きになった。
なので、そこに俺は左手の剣を袈裟切りに切り込んでいく。すると、グレイは両手で持っていた剣の柄から右手だけを離すと、手に装備している籠手で俺の攻撃を逸らしていく。
そして、逆に正面ががら空きになった俺に蹴りを入れて吹き飛ばしていく。
「ぐっ!」
「今のは悪くない。ただ、届かなかった時点で後ろに下がって体勢を立て直すべき。あの状態で無理して攻撃できるところを探さない。それは簡単に読まれるし、致命的な一撃になる」
「もう......はあはあ.......一本」
「はいよ」
そして、俺はグレイへと再度突撃した。
俺がグレイに勝てない理由は単純な戦闘経験レベルの差だ。そして、これから話すことは、俺とクレアが冒険者として活動し始めた頃、受付嬢から受けた冒険者の基本的な説明に関係している(その時話を聞いたのは俺一人)。
冒険者は金、銀、黒、赤、青、緑、黄と基本的に色でランクが決まっている。そして、最初に挙げた色から順にランクは下がっていき、そのランクに合わせたクエストを受けることが出来る。
そして、グレイとレビィのランクは黒ランクでもちろん、俺は黄ランクだ。黒ランクは象ぐらいの大きさなら簡単に倒せるぐらいと思えばいい。
そんなランクの相手に小細工なしで正面から挑めばそりゃあ勝てるわけがない。
しかし、今の俺は勝つことが目的ではない。俺はただクレアを護れるぐらいの強さがあればいい。
過保護かと思われるが、妹と重ねてしまった以上、妹を護ることは兄の務めではなかろうか。
なので、妹的存在のクレアも当然守る必要がある......まあ、一種の罪滅ぼしかもしれないが。
また、俺がグレイにこっそりと修行しているのは、クレアに心配をかけさせないためだ。
クレアは何かと自分が何もしていないことを気にしている節がある。その時は、だいたい俺が苦戦している時が多いのだ。
故に、俺が強くなればそんなことを思わないはず。現状、俺が出来るのは手足を剣にすることのみ。
というか、俺が使える魔法がそれぐらいしかない。なので、俺はこの魔法を極限まで極める必要がある。
俺はグレイに向かって敢えて大きく右腕を振った。だが、それはグレイの剣捌きによって弾かれる。そこに左腕を一気に突き出した。
「だから、単調だって」
「俺はもう少し頭使うさ。特に不意を突くことに関してはな!」
「!」
俺は突き出した左腕の剣を解除して、手の指だけを剣へと変化させた。そして、グレイが防御として構えた剣を掴んで、腹部へと思いっきり蹴り込んでいく。
しかし、それはグレイに咄嗟に膝で受け止められるが、俺はすぐにしゃがんで足払いした。
それによって、グレイは死に体になる。そこに俺は思いっきり蹴り込んだ。それによって、グレイは少し遠くへ吹き飛ばされる。
「一回きりだけだけどな」
「今俺のプライドが少し傷ついた。だから、厳しめでいく」
「ああ、かかって――――――――――」
俺がそう言いいかけると気が付けば、グレイが目の前にいた。俺はそのことに思考が一瞬停止した。
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カイトとグレイがどこかで特訓している一方で、私とレビィさんとの間にも同じようなことが起こっていた。それは、杖を構えたレビィさんの姿と剣を構えた私の姿であった。
「どう、初めて剣を持った感想は?」
「重たい。でも、私の<身体強化>の魔法を使えば何の問題もなく振り回せます」
私はそう言いながらとりあえず剣をブンブンと振り回していく。そんな私の光景を見てなぜかレビィさんは呆れたようなため息を吐いていた。私はその様子が気になって聞いてみることにした。
「何かおかしいかな?まあ、剣を振るのは初めてなんだけど。それにこの装備だって」
「いや、そこは問題ないんだよな~。装備に関してはいずれ見慣れていくとしても、その屈強な男の人が持ちそうなロングソードを簡単に振り回す光景は......見慣れそうにないかなー」
「そうなの?」
私はそう言われて思わず自身が持つ剣を見るけど、正直あんまりわからない。まあ、確かに自分の身長近くのロングソードを持つ人は、冒険者の中でも見ることはなかったな。私がそんなことを思っているとレビィさんが私に質問してきた。
「そういえば、あの時は勢いで押されて了承しちゃったけど、本当に私でいいの?私は魔術師だからあんまり剣に関して詳しくないし、知っていても基本的にグレイちゃんの動きとかだよ?まあ、興味本位で剣を振り回す時のアドバイスとか聞いてるけど」
「それでいいよ。私も初めてだから詳しいことはわからないし、それに出来ればカムイに走られたくないんだ」
「どうして?」
「少しぐらい驚かせたいのかな。私もカイトと並んで歩けるよって」
私のこれまではあまりにも不甲斐なかった。自分の生活(特に食料調達)に関してほとんどを任せていた。
実を言えば、どこかの村でこっそりと買った食料以外では、カイトに助けてもらった時に食べたあの大蛇が初めてのお肉だった。
あの時のお肉の味は今でも忘れられない特別な味がした。
それまでほとんど、私は果実や知っている山菜を採取して日々を過ごしていた。けど、次第にどんなに食べてもお腹が空いてきて、お肉を食べていないせいか体力も落ちてきていた。
そして、飢えを凌ぐためにやってきた森でであったのがあの大蛇であった。出会った瞬間、私は物凄い恐怖に襲われた。
私には戦う手段がない。戦い方もわからない。だから、逃げるために走った。とにかく走った。
そんな極限状態に近かった私が見た希望がカイトであった。でも、私は自分の勝手でカイトを巻き込むわけにはいかなかった。
だから、私は自らの手でその希望を潰した。もう自分の野望も叶わず、もうすぐ死ぬんだとどこかで思っていた。
けど、希望の方が私を見逃さなかった。私が絶体絶命になった時、カイトは身を挺して助けに来てくれた。
その時の姿は今でも忘れられない思い出の一つだ。そして、その時に一緒に食事した時のことも。
それから、私達はともに行動し始めた。カイトが「ほっとけない」という気持ちでついてきたのは知っているけど、未だその真意については少しまだ疑っている。
でも、カイト自身は信用している。あれだけ助けてもらって信用しないというのもおかしいかもしれないし。
そして、助けてもらう度に思っていた。このままでいいのかって。だから、私は戦えるになると決めた。
いつまでもこのまま助けられっぱなしじゃいられない。私もカイトと堂々と隣を歩きたい。
私が剣を選んだのは、魔法が<身体強化>しか使えないというのもあるけど、カイトが剣だからというのもあるかもしれない。
するとここで、レビィさんがニヤニヤした顔で私を見ていることに気が付いた。
「乙女だね~。いいよ、そういうの、レビィちゃんは大好きだよ~!」
「ち、違うよ! そんなんじゃないよ!」
「まあまあ、そんなに焦ったらむしろ真実度が上がっちゃうよ。でもまあ、その気持ちはわかった。だから、手伝うよ、いろいろとね。私はやや厳しいから覚悟してね」
「お願いします!」
別作の「神逆のクラウン」も良かったら読んでみてください




