Chapter_02 覚醒
風のざわめきだけがこの空間を支配していた。木々もそれに参加し、葉と葉を擦って音を奏でていた。
エリスと名の少女を見つめて、時が経つのを忘れてしまう自分に気付く。
そんな中、怖々と彼女が言葉を漏らす。
「ま……もる?」
「そ、そうそう。護、人をまもるって意味だ! それが俺の名前だ」
「まもる、……良い名前ですね」
「そ、そうか? ……エリスも、良い名前だ」
そう言うと、ありがとうと彼女が微笑んだ。なんて清楚で温かい笑顔なのだろうか。
おっと、呆けている場合じゃないな。
「と、とにかく、何故君を狙っていたか知らないけど、ここは危ない。詳しい話しは後で訊くから」
「はい。……あの、どうして私を助けてくれたのですか? 見知らない私を……」
「何でってそりゃあ……」
――嘘つき。
不意に、脳裏に焼き付いた言葉が冷や汗を流させた。
「あの、どうかしましたか?」
「え? な、なんでもないって……なんで助けないかなんて決まってるじゃん、男は女を守るもんだ! それに見過ごせなかったんだ」
と言って納得するだろうか?
と考えていると彼女は俺の目を覗き込み、しばし見つめ合った。
困惑していると表情を柔らかくし、納得の色を表情に滲み出した。
「……貴方は、あ、まもるさんは優しい心を持っていますね」
「え? なんでそう思うんだ?」
「綺麗な瞳ですから」
良く分からないが悪者ではないと納得してくれたって事で良いのだろうか。
それにしても優しい表情だったな。
「顔が赤いですよ? 体調悪いのですか?」
「へ! あ、なんでもないって! よ、良し、行こう!」
「は、はい!」
森の奥へ俺達は駆け出す。
長い時間歩いたと思う、右も左も緑色の世界は同じ形の木々が辺り一面を覆い尽くす。
かなり奥まで来たから多分大丈夫だろう。
エリスに少し休もうと提案し、休息をとることにした。
辺りを見渡し座るのにちょうど良い木の根を見つけ、そこで足を休ませた。
「足、痛くないか?」
「はい、大丈夫です。まもるさんは?」
「あはは、大丈夫だよ、俺鍛えてるからさ! あ、名前はまもるで良いよ、俺もエリスって呼ぶからさ」
「分かりました、ま、まもる……」
少し照れた彼女の仕草はまるで子猫の愛敬そのもの。
マジで可愛い、などと不謹慎な事を思っているとエリスが突如質問を述べた。
「あの、こんな深い森の中にまもるはどうしていたんですか?」
「……やっぱり気になるよな。俺と、あ、さっき一緒だったのは親父だ。その親父とある目的の為に旅してたんだ」
「ある目的……ですか?」
「ああ、俺達は第七の一族ってのを探して旅してんだ」
「え!」
彼女の表情がみるみる驚きで染まって行く。どうかしたのかとエリスに尋ねると、少し動揺しながら答える。
「あ、あの、その一族を探して一体どうする気ですか?」
「別に何もしないさ。俺の親父は民族学者でさ、第七の一族ってのは一体何なのか知りたいだけなんだ。学者の探求心って奴かな」
エリスは俺の目をまた真っ直ぐに見詰める。なんて瞳だろう、奥に吸い込まれそうで、何もかも見透かす様な目。
しばらくして彼女の顔はまたあの子猫の様な愛敬を振りまく。
「やっぱり、あなたは優しい心をしていますね。貴方は悪い人間では無い事を目が語ってくれました」
目が語る?
その言葉の意味がいまいち理解出来なかった。
どうしたらいいのか分からずに惚けていると、エリスが話を切り出した。
「まもる、私は第七の一族なんです」
あまりにも唐突の告白に頭が追いついて来ない。
「エリスが第七の一族だって?」
「はい」
しばらくの間、沈黙が辺りを支配していた。
そんな空間の中で仮面の話を思い出す。確か『巫女』と言う文字が幾度か飛び交っていたと思うが、まさかエリスが?
「エリス、君は……巫女って呼ばれている存在なのか?」
「そうです。私は……」
何かを言いかけた刹那、第三者の足音を耳が掴み取る。エリスに沈黙を指示し辺りを伺う。彼女は不安そうに胸の前で両手を握り締めていた。
しかし静かだ、何も聞こえない。だが間違いなく何かがいる。
「……あそこだ」
前方、草むらの一点を凝視、息を吐き唾を飲む。ゆっくりと警戒しながら近付いて行く。
が、突如それは飛び出し姿を晒す。
「護、無事だったか!」
出て来たのはなんと親父だったのだ。
この馬鹿親父め、脅かしやがって。
「このクソ親父! なんで隠れてんだよ!」
「お前が気付くか試したんだ、これもまた修行だ!」
ウザいと親父に聞こえる様に言ってやったが親父は動じてなさそうだ。
「まぁいい。さてお嬢ちゃん、こいつに何かされなかったか?」
「ちょっと待て! どう言う意味だ!」
「そのままの意味だ、お前がこの娘さんを襲ってないかお父さんは心配だった」
このクソ親父が!
「そんな訳ねーーだろうが! このヤクザ野郎!」
「なんだとクソ息子! 誰がヤクザだ!」
彼女は又々呆けて見詰めている中で睨み合う俺達。睨む顔はだんだんと変な顔に変わっていくが、そんな事気にせず続ける。すると。
「ぷっ……ふふっ、あははははは!」
変な顔に耐えられず、エリスが大笑いをしていた。
確かに変な顔だったと思うが、笑うなんて酷いな。
「ご、ごめんなさい。でも、顔が……あははははは!」
お腹を抱えて笑う彼女は、どこにでもいる普通の女の子だな。こんな娘が七の巫女なのか。
しばらくはエリスの笑い声だけが森に響いた、彼女の声はなんとも心地が良い。
ようやく笑いが静まり、静けさが訪れる。
「ご、ごめんなさい。こんなに笑う事、久し振りでしたから」
笑うのが久し振りか、一体どんな生活をして来たんだろう。
沈黙がしばし流れ、親父がそれを砕いた。
「君はエリスと言ったかな?」
「あ、はい」
「もしかしたら君は、七の巫女ではないのかな?」
エリスはしばらく何かを考えるそぶりをし、俺の時と同じ様に親父の瞳を覗き込む。
「……ふぅ」
彼女は安堵の溜め息をし、親父が悪い奴かをどうかを見極めたようだ。
「あなたも、悪い人間ではありませんね」
「そんな事も分かるのかい?」
親父は興味津々だった。何せ、一生をかけて追っていた一族が目の前にいるのだから。
興味を持つのは無理も無い。
「はい、七の巫女です。私は人の目を見れば心が読めます」
「すごい、これが七の巫女の力か……先程の奴等は巫女を狙ってたわけか、君を追っていた奴等は何者なんだい?」
質問にエリスは難しい顔をする。
「あの人達が誰なのか分かりません。彼らの中に私達の同胞がなん人かいましたけど……」
その話を聞くと親父が腕を組み、深々と考えていた。
「ふむ、何者かが一族の数人を金か何かで引き入れ、君を狙ったのだろう」
「そ、そんな! 私達の同胞がそんな事を。家族同然のはずなのに」
「人間の心はどう変わるか分からないからね」
動揺を隠せない彼女、今にも崩れてしまいそうで怖いと感じる。
――嘘つき。
俺はもう二度と……。
「私はどうしたら……」
どうしたら良いのか、それは俺にも分からなかった。彼女の目が悲しみに染まっている、少しでも悲しみを和らげてあげたい。
そうしないと、自分を許せないだろう。
「正直どうしたら良いか分からない。でも、エリスは俺が守るよ、俺にはこれしか出来ないけどさ」
「まもる……ありがとうございます。その気持ち、嬉しいです」
彼女の悲しみが薄れた様に見えたが、実際は心配で胸が苦しいだろう。少ししか苦しみを和らげてあげられない現実が歯痒い。
ふと気が付くとエリスは俺達を見つめながら何かを話したい素振りだ。親父はそれに気付き、どうしたのかを尋ねる事にした。
「どうしたんだいお嬢ちゃん?」
「えっと、あの、……同胞達が私を逃がしてくれました。でも、みんなが心配なんです、だから……助けたいんです」
仲間達の心配か、助けてやりたい。
「親父、助けに行こうぜ!」
「ふむ、難しいが……なんとかしてみよう」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます!」
「ああ、エリスの仲間を助ける!」
そう言うとエリスが笑う。
「それじゃお嬢ちゃん、君達が住んでいる場所までの道を教えてくれるかい?」
「はい、分かりました」
エリスを先頭に森を進む、敵の気配を気にしながら。
長い時間が経過した、途中で洞窟らしき場所へ入り中はエリスがいなければ確実に迷っていただろう。天然の迷路を抜け出すと開けた場所に出てこれた。
「あそこです」
エリスは指を差して場所を認識させる。
「ここが第七の一族の聖なる場所」
辺りを白壁の建物が建ち並んでいた、緑色世界の中に白い光の存在を漂わせる様に。
建物は白い石を積み上げて作られている。石と石の隙間がピッタリとしていて隙間が無い、相当な技術がいるはずだ。
「綺麗な場所だな」
「ええ、私の大切な場所です」
「そっか……ん?」
嗅ぎ覚えのある匂いが嗅覚を刺激する、この匂いはまさか。
「親父……」
「ああ、そうだ、血の匂いだ」
血と言う単語を聞いた瞬間、エリスの顔が見る見る恐怖にかられた。
血、つまりは誰かが殺されているという事だ。不安にもなる。
「血、……まさか番人達が?」
「番人?」
「わ、私を守護する者達の事を番人と呼んでいます。その番人達がいたから、私は逃げられたんです」
殺されているかもしれないな。くそ、エリスの笑った顔を見たのはあの時だけじゃないか。
親父が何かを考えていた。そして提案を口にする。
「わしが見に行って来る。護、ここでお嬢ちゃんを守るんだ」
「あ、ああ、分かった」
「……なんだ、随分と素直だな」
「今は、私情に流されたら戦士失格だろ?」
親父は笑い顔をつくり、「立派になって来やがった」とぬかしながら偵察へと向かった。
◆
動く度に血の匂いが強く主張し、嫌な予感がわしを支配する。
こんな状況の中、息子の成長が嬉しくて仕方なかった。
「おっと、いかんな」
今は偵察に集中だ。しばらくして白石を敷き詰めた広場が見え初めていた。円状に白壁の家が並び、広場を囲んでいる。広場はテニスコート二つ分程の大きさだ。
その中央に人影を数人確認した。
「く、遅かったか」
仮面の者達が数人と、そのリーダー格らしい男がいる。そいつらの足下は赤く染まって、何人か倒れていた。
数が多い、ここは逃げるのが効率的な手段だろう。
「……さて、どうしたものか」
と言葉を漏らすと後ろに気配を感じ、緊張が一気に増す。
「何者だ」
後ろから男の声が肩に手を掛けた。
声を辿り男を確認する、そいつは白い髪は短いが後ろだけ長く、後ろ髪を靡かせている。体格は中々の筋肉質だ。この筋肉ならあらゆる動きを難なくこなすだろう。右目に傷があり白目。そして手には槍を持つ。
直感、この男は強い。
「言葉は分かるか? 何者だ貴様、なぜ我らをコソコソと見ている?」
「名乗るほどの者ではない……と、言ってもダメだろうな」
「……そうか、貴様が巫女を手助けした者だな?」
急速に刀を抜き、奴目掛け襲わせる。接触音が響く、奴は槍で刀を防いだ。
反射神経も凄い様だな。
「この武器は日本刀……貴様は日本人か。という事はサムライか、サムライなら戦う前には名乗るのが礼儀と聞くが?」
「ふっ、よく知っているな、いいだろう。わしの名は神代源一郎だ」
「我が名はプセバデス、プセバデス・シシス、戦を求める者」
「ふん、名前も強そうだ」
「見た限り一人か、ならばまだ仲間がいるはず、エフニディ!」
奴は広場の男に叫んだ。叫ばれた男がこちらを向く。
「プセバデスさま……ん! あいつは!」
「エフニディ! こいつの仲間が近くにいる、探して来い!」
くそ、護達が危ない。不安が増大すると嵐の様な槍の攻撃がわしに牙を向く。
「ぐぅ!」
刀で防ぐ。速い、奴の槍は防ぐだけでいっぱいになる。
「ほう、我が槍を防ぐか、面白い」
奴の槍は恐ろしく正確だ。人間の急所を狂いなく攻める。こいつ人を殺した事があるな? 攻撃に迷いが全くない。
「さぁ、我を楽しませてくれ、サムライ!」
やるしかない、早く護の元へ行かねばならないのに。
護ではあのエフニディと言う男には勝てない。
「く、後悔するなよ」
◆
やんだか騒がしくなって来た、ここからじゃ分からない。
まさか、親父の野郎しくじったんじゃないだろうな?
「まもる? どうかしましたか?」
エリスは心配そうにこちらを覗いていた。急に彼女との距離が近くなり心臓が高鳴る。
エリスって良い匂いがする。それだけじゃない、神秘的な美しさ、可愛らしさを奏でている。
「あの、まもる?」
「わ! な、なんでもないさ! あははは!」
彼女は訳が分からず、困った顔をしている。その顔も可愛らしいのだが、取りあえず話をそらすか。
「と、取りあえず、ここを動かないのが懸命だ」
「は、はい」
「じっとしていれば……」
「見付からない……か? 仲がいいな、お前達」
唐突の声の方へ俺達は視線を向ける。そこにいたのはあの悪人顔、名前は確か、エフニディ。
「テメェはさっきの!」
ゆらりと奴の身体が動き、こちらへと近付いて来る。手にはトンファーを持ち、俺達を睨む。
「ガキ、巫女を渡せ、そうすれば助けてやっても良いぞ?」
「なんだと? テメェなんかに渡すもんかよ!」
刀を握り締め、刃を奴に向けた。奴の顔が険しさを増し、体勢が戦いのスタイルとなる。
その刹那、エリスが叫んだ。
「エフニディさんもうやめて下さい! あなたは私の番人だったのにどうしてこんな事を!?」
「……シンを倒すためだ。奴は番人の中で最強だ。それに勝つために組織に入ったんだ」
「組織?」
「ふん、ガキの最後だ教えてやるよ、組織の名は『ヴァンクール』、目的はセヴンセンスを持つ七の巫女の力を使い、この世界、幻想の大陸を支配する事だ!」
「支配するだと! まさに悪の組織だな!」
「なんとでも言え、俺はシンに勝てた事に満足している」
奴がそう言った途端、エリスは顔を歪ませた。
「な、何も殺さなくても良かったじゃないですか」
「戦いは死ぬか生きるか、ただそれだけだ巫女」
「そんな……」
悲しみに支配されていく彼女が俺の心を鷲掴む、あんな顔にさせやがって。
「テメェ! 自分勝手にペラペラ喋りやがって、俺はお前が気に入らねーー!」
「ふん、ガキがよく吠える。いいだろう、その生意気な顔を潰してやる」
右腕のトンファーを円を描きながら回す。暴風の様な音を放っている。刀を下に構え、奴へと走った。
「食らいやがれ!」
一閃。真横に刀を滑らせる。左腕のトンファーがそれを防ぎ、右腕のトンファーを透かさず食らわせた。
「があ!」
痛覚が全身に走る、攻撃を腹にくらい意識が飛びそうだ。
「まだだ、コノヤロー! 乱撃!」
無数に刀の攻撃を放つ。まずは奴の右足、だが接触音、トンファー防がれた。
なら、次は胴体を狙う。刀の刃を返し、峰打ちをする。
しかし、また止められた。
「ガキ、お前人を殺した事がないな? あまい攻撃にあくびが出そうだ!」
トンファーが頭に直撃する。鈍い音が響き、地元に叩付けられた。
「がああああ!」
「おれは組織から力を貰った。身体強化の薬で昔の倍は強くなった」
薬だと? 奴はそんなもので強くなったのか? ふざけるな! 自分で鍛練するから意味があるんだ、心も体も鍛えて初めて戦士だ!
「テメェは自分じゃ……戦士になれなかったクズ野郎だな」
「ガキ! 貴様、殺されたいのか!」
エフニディの蹴り、殴る行為が続く。
くそ、身体が動かない、意識が飛びそうだ。
攻撃を緩めず血が飛び交い、意識を奪い続ける。
「ふはは、いい気味だガキ!」
血が全身から吹き出ている。このままじゃ死ぬかもしれない。
奴は俺を持ち上げ、投げ放つ。地面に激突し、痛みだけが今の感覚を苛めた。身体もいうことを利かない。
はは、短い人生だったな俺。
「今楽にしてやるよ」
近付いて来る、とどめを刺すために。
殺られると覚悟した時だ、叫び声を聞き取る。
「もうやめてーーーー!」
エリスが奴と俺の間に入って来た。腕を大きく上げ、俺をかばう様にそこに立つ。
「ダメだ、エリス……に、逃げ……ろ」
「ふははは! 巫女様、こいつを殺したらすぐに組織に連れて行きますよ、それが組織に入る時の契約だったからな!」
「エリス……逃げろ……」
精一杯の言葉を紡ぐ。頼む、逃げてくれ。そう願うが、エリスは逃げる様子は無かった。
「私、まもるに死んで欲しくない。こんなに優しい人、死ぬなんて嫌です」
「ははは、死ぬなんて嫌か、じゃあ、嫌な事をしてやる。さぁ、殺してやるよ!」
奴はトンファーを構えた。次で死ぬ覚悟をした瞬間にソレは起きた。
エリスの身体から、うっすらと光を放っている。
光は柔らかく彼女を包んでいた。
「な、なんだ!」
「……エリス?」
エリスはゆっくりと俺の方を向き、笑みを浮かべる。
「私、まもるが死ぬところなんて見たくないから」
エリスは近付いてくると、俺の身体に触れた。何だ? 痛みが引いて行く。
いや違う、傷が治り始めているんだ。
「……これがエリスの力?」
「まもる、“力”が欲しい?」
エリスの問掛けは何を意味している?
「欲しいさ、エリスをまもる力が欲しい!」
またエリスは笑う。そして、エリスは俺と唇を重ねた。
心臓が熱い、何だ? 何が起きているんだ?
永劫とも思える時間、ゆっくりと進んでいて、止まった様な錯覚さえ感じさせる。
そして、唇は離れた。
「第六感が目覚めました」
第六感?
「何をしている!」
目掛け突撃するエフニディは俺を睨み、トンファーを放つ。
接触音。
「何!?」
俺はトンファーを刀で防いでいた。嘘の様に身体が動く。
エリスが傷を治してくれたおかげだ。
「ふん、傷が治ったからどうしたと言うんだ!」
奴の攻撃が再度襲う。
だが、トンファーを避ける。苛立ちを垣間見せ奴は連続攻撃に切り替えた。しかし、それすべてを難なく避けた。
奴の攻撃が“見える”。
なんて言うのか、感覚が広がる。そんな感じだ。
奴の動き一つ一つが詳細に分かるんだ。
これは一体?
エリスの言葉を思い出す、第六感が目覚めた。つまり、俺に能力が発現したって事なのか?
エリスの力は能力を開花させる事?
「くそが! なめるな!」
奴の攻撃が右上から来る。そう思い、地面を蹴り、身体を後ろに飛ばす。すると、思った通りに奴の攻撃が来た。
「……なんとなくだが分かったぞ、俺は奴の動きを予測出来るんだ。それが俺の力か!」
「くっ、調子に乗るなーー!」
奴は蹴りを放とうとしている。俺は予測通りに避けた。
「なっ!」
すぐに奴の脇腹に峰打ちの一撃を放つ。刀が身体にめり込み、顔を歪ませる。
「がぅあああああああ!」
「もうお前は眠れ!」
そのまま頭に一撃を食らわせ、奴は白目をして気絶した。
「はぁ、はぁ……エリス」
「まも、る……その力、大切にして……ください……ね」
エリスはゆっくりと地に倒れ落ち、気を失った。
「エリス、どうしたんだよ!」
この力がこれからどんな道を示すのか、今の俺には分からなかった。
セヴンスセンスとは一体なんだ?




