【初陣】⑤
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「これで全部か?」
「……多分ね」
俺は「そうか」と短く返事をすると目を瞑ってシートに身を預けた。
とりあえず今は気を抜いて良さそうだな。
佐倉には聞きたいことが山ほどある。
えーと、何から聞けばいい。何故俺は眠っていたんだ?
まずそこからか。
俺は目を瞑って天を仰いだまま問いかけた。
「おい、佐倉……」
『警告、高速で正体不明機接近』
「「なっ!?」」
その時【ワルキューレ】のAIがそう警告した。
すぐさま俺は飛び起き、操縦桿を握った……モニターを見る!
飛翔体が高速接近中っ!? 飛翔体ってなんだよっ!!
まさかミサイルの類かっ!?
鳴り響く警報っ!
俺と同じく慌てた佐倉が叫んだっ!
「避けてぇッ!」
「……ッ!!」
避けろって言ったって……っ!!
何処から何がどんなスピードで来るっ!?
くそ! 完全に油断していた!!
飛翔体の接近を告げる電子音のピッチがどんどんと短くなっていく……!
無理だ、当たる……!!
そう覚悟した時、「……今しかないっ」と言った後に佐倉が叫んだ。
「――魔導光子障壁ォォッッッ!!」
「……えっ?」
そう佐倉が叫んだ瞬間、【ワルキューレ】の目の前に虹色に輝く壁……のような物が現れた。
壁というにはもっと薄い。シャボン玉の膜のように薄いその『壁』。
「うあああああああああッッッ!!!」
「っ!?」
鬼気迫る叫び声を上げる佐倉。
一目でわかった、これが〝魔女〟の力なのだと……。
佐倉は懸命にその『壁』で飛翔体を抑えている。
その二つがぶつかっている部分が、バチバチとスパークして相殺しているみたいだ。
一瞬の後、謎の飛翔体はその薄い幕に進路を阻まれ、硬い金属音を響かせて弾かれた。
「……っ……はぁ、はぁ……!」
佐倉の肩の力がフッと抜けると、『壁』も消えていった。
背中からでもわかる、佐倉は汗びっしょりになって大きく肩で息をしていた。
さっき耳打ちした作戦に盛り込まれていた。
『もし何かあった時は、魔力を使って防いでほしい』と。
見事に彼女は敢行してくれたわけだ。
【パトリオット・オンライン】の中にもこのバリアはあるけど、思っていたより相当辛そうだ。しかもやった事ないって言っていたな、そういえば……少し無理矢理にやらせてしまった感がして、少しだけ申し訳なさが心に広がった。
「さ、佐倉……大丈夫か?」
「わ、私の事はいいからっ!」
気遣いは無用とばかりに佐倉が俺を制した。
そ、そうか、今はまず体勢を整えなければっ!
操縦桿を素早く操作して身構える。
左手に拳銃、右手にSVSを携えた。
レーダーマップを確認。その時、AIが再び警告をした。
『接近警報、六時、距離一〇〇』
「っ!?」
距離一〇〇っ!?
そんなに近くに来るまで気がつかなかったのかっ!
自分がいかに油断していたのか痛感させられた俺は、【ワルキューレ】を急いで振り返らせた。
すると四階建てのビルの上に『青い【パトリオット】』が佇んでいた。
佐倉が展開させたバリアに弾かれた細い長方形の飛翔体……恐らく刃物……がそいつに飛来し、背中に装着された。
『……やってくれましたわねっ』
そして怒りに震えた女性の声で無線が入った。
「しゃ、喋ったぞっ」
「……」
話しかけてきたぞ、何なんだあいつ。
突然のことに狼狽える俺をよそに、佐倉は眉を寄せて奥歯を噛み締めている。
なんだ、因縁の相手的なやつか?
ビルの上に立つ『青い【パトリオット】』の操縦者の声で間違いない、よな?
群青色と白の塗装が鈍く光る、中世の騎士を思わせる派手な装甲。頭部の王冠のような黄金色の装飾と鋭いツインアイが輝きこちらを睨みつけていた。
なんだろう、この既視感は……。
いや待て。
それよりも、やってくれたって言ってるし。
攻撃して来たわけだから味方では無いだろう。
『そんなポンコツでよくも……我が国の高貴な【ヴォルガー】を三体も汚してくれましたわね!』
「高貴な【ヴォルガー】って……」
【ヴォルガー】は【下品】って意味じゃなかったか……?
『聞いておりますの!?』
「……ったく、いちいち腹の立つヤツっ……」
「な、なんだよ? 知り合いか?」
俺は操縦桿を握り締めながらそう聞いたが、佐倉はあっさりと否定した。
「まさか。……けど、アイツは……」
『聞いておりますのっ!?』
「お、おい、応答しなくていいのかよ?」
「だめだよ、応答なんかしたら」
「なんでだよ……」
『……まぁいいですわ。言葉も解せない下衆な生き物なのは承知しておりますの』
じゃあなんで話しかけてきたんだよ。というツッコミはいらねぇか。
『警告ですわ。この地区の掃討にこれ以上時間をかけるわけにはいきませんの。ですから、明後日の掃討作戦をもってこの地区を占拠致します。投降するならそれまでに、投降しないのであれば……お分かりですわよね』
ふふっ、とスピーカーの声は笑った。
この地区の掃討?
状況がわからないなりに整理すると、さっき戦った【ヴォルガー】はあの王冠の【パトリオット】の仲間で、佐倉はそいつらと戦っているってことなのか?
『では、ごきげんよう』と、貴族の挨拶みたいに膝を曲げてお辞儀の仕草をした『王冠の【パトリオット】』は高く跳躍すると、ビルの陰に消えていった。
「……くっ」
結局、あの【パトリオット】の通信に応じなかった佐倉は、ギリっと奥歯を噛み締め、拳を握った。
「……一体、何がどうなってんだよ……」
今度こそ何もないだろうな……。
俺はもう沢山だと言わんばかりにシートにもたれ掛かった。
目を覚ましてからここまで色んなことが詰め込まれすぎて頭がパンクしそうだ。
「あ、そうよね、ゴメン。ちゃんと説明するから基地に戻りましょうか」
「基地?」
「そう、私たちの基地へ」
お読みいただき、ありがとうございました。
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続きは明日の朝更新。
少しだけストックが有りますので、しばらくは毎日複数話更新の予定です。




