【俺に出来る事】
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マレーシアに上陸した“ワルキューレ・ブレイズ”と雷桜参式。アームズ・ドラグーンの研究施設への攻撃準備をします。
『こちら〝セイバー〟配置についた。センサーに異常無し。送れ』
「あー、えーっと……なんだっけ」
「〝ライダー〟」
「ああ、そうそう。こちら〝ライダー〟っす。異常ないっす。あ、配置につきました」
俺はセンサーを確認しながらそう応えた。俺の素人くさい報告を受けた上原少佐の呆れた顔がワイプで表示されている。
『ったく締まらないわね』
「仕方ねぇっしょ、こういうのやった事ないんすから」
なんかこういうのに憧れてはいたけど実際やると難しいのな。
ソメイヨシノの船底にある海中出撃口から出撃した俺たちは、スクリューモジュールで海底付近を進み、無事マレーシアに上陸した。
その沿岸部から目的のアームズ・ドラグーンの研究がされていると思しき施設までは森林地帯が続いている。
そこをパトリオットで敵に見つからないように進まなければ行けないんだから、かなり気を遣わなければならなかった。
俺と佐倉を乗せた“ワルキューレ・ブレイズ”は通常装備の“クレステッド・アイビス”を外した状態で出撃した。
羽根のようなシルエットの“クレステッド・アイビス”は密林の移動には不向きだったしな。
今は電磁迷彩加工が施されたマントを羽織り、膝を突く体勢を取っている。そのマントは周りの風景を鏡のように反射する仕様になっているため、今の“ワルキューレ・ブレイズ”はほぼ森に溶け込んでいる。
少し離れた所に位置取った上原少佐が駆る“雷桜参式”も同様の装備で森に潜んで合図を待つ。
突入隊の準備が整い次第、俺たちが姿を見せて施設に攻撃を仕掛け……ようとする。
要は向こうの迎撃部隊を引っ張り出して混乱させる。その隙に施設に突入し、必要なデータを回収しようという作戦だ。
『……緊張してんの?』
「え……」
正面モニターの端にワイプ表示されている上原少佐が少し眉端を歪ませて揶揄う様にそう言った。それを聞いた佐倉が「え?」と振り返る。
「んなわけないじゃないすか」
『ふーん?』
「……なんすか」
『私が言ったこと気にしてんの? 安心しなさいよ、アンタ達は私が守る』
「え……?」
俺と上原少佐との間に挟まれた佐倉が話の全容が見えず、ワイプと俺を交互に見ていた。あの飲み会の後、コンビニの前で話した内容を佐倉は知らない。この反応も同然のものだろう。
ただ、この場に流れるシリアスな雰囲気は感じ取っているみたいで、それ以上は何も聞いてこない。
『私が前に出るから優介と莉子は援護よろしく。自動照準システムはマニュアルで良いけど間違えて私を撃たないでよね』
「……了解っす。佐倉、誤射防止機能のロックをもう一度確認しておいてくれ」
「あ、うん」
佐倉は俺と上原少佐のやりとりに若干怪訝そうにするも、コンソールを操作した。
しばらくすると、地上の突入部隊から突入の準備が出来たと連絡が入ったので、俺たちが陽動をして隙を見て突入の機会を窺う。
『HQ、こちらセイバー。カウント六〇で行動開始する』
『こちらHQ。了解です、セイバー。ご武運を』
『ありがとう、交信終了……コジ、カウント』
『了解、カウント六〇、スタートするよ』
“雷桜参式”のサブパイロットとして乗り込んでいるコジがカウントダウンを始める。
二度目……いや、三度目の戦場。
上原少佐に言われた。もしもの時に命を張れるのか。相手の命を奪う覚悟。それは同時に俺の命を奪われる覚悟も同様にしなければならない。
しかも“ワルキューレ・ブレイズ”は複座式。目の前で俺のサポートをしてくれる佐倉の命の行方は俺が握っていると言ってもいい。
トウヤを必死で守ってきた佐倉。それの手助けが出来ればと思い、俺は操縦桿を握った。
佐倉とシュヴァリエと過ごした一軒家での生活。平和が当たり前の生活。
俺が無駄にしてきた平和な日々。それがどれだけ尊い物なのか、俺はこの世界に来て実感している。
だからこそ、俺は平和を当たり前のものにしたい。
「少佐」
『ん、どーしたの特尉』
俺の出来る事は少ないかもしれない。だけど、出来る事をやらないままいるなんて無理だ。命を奪う覚悟も奪われる覚悟も出来ない。だけど……。
「何がどうなるかなんて分かりません。けど、俺は佐倉やみんなを守りたい。それだけは変わらねぇっす」
「っ!?」
俺の言葉に、佐倉は一瞬固まり、その後に振り返り目を見開いた。
すごく恥ずかしいことを言っている自覚はある。だけどこれは本心だ。佐倉と目は合わせられなかったけど、俺もそれなりの覚悟をしているんだということを少佐に伝えたかった。
上原少佐は揶揄う様に口笛を吹いてから、にたぁと笑った。
『ははっ、やるわね色男』
「……別にカッコつけただけっすよ」
コジのカウントは二〇を切った。マレーシアでの作戦が始まる。
「佐倉、今日も絶対に一緒に帰るぞ」
「う、うん」
耳まで真っ赤になっている相棒は照れながら、しかし力強く頷いた。
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