【今日は私の奢りよ!】
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カナザワ港に寄港したソメイヨシノ。
パイロット達は束の間の休養です。
「さぁさぁ、遠慮しないでバンバン頼んじゃいなさいよ!」
物資や資材などの補給を受ける為にカナザワ港に寄港したソメイヨシノ。
作業が完了するまでかなり時間があるという事だったので、俺たちは上原少佐に誘われるがまま、港の近くの居酒屋に来ていた。
「今日はアンタ達の歓迎会なんだから、ほれ、遠慮せず。ほれほれ」
「あ、あざます」
ガヤガヤと騒がしい大衆居酒屋の店内の奥。座敷に陣取った俺と佐倉と帽子で耳を隠したシュヴァリエ、そしてメニュー表をぐいぐいと押しつけてくるのは言わずもがな上原少佐だ。
店内には四人がけのテーブルが四、五台。それぞれに醤油などの調味料と割り箸、それから時代遅れとも思えるアルミ製の灰皿が備え付けてある。
薄汚れた……と言ったら失礼か。味のある壁には大漁旗が貼り付けてあり、頑固そうな大将が厨房に立ち、コップ酒を引っ掛けながら調理をしている。
上がった料理を愛想のいい女将が運び、飲み物を大将と似ても似つかない娘がこれまた愛想良く運ぶ。
一通り注文のピークは過ぎたのか、フロア担当の二人は雑談しながら悠々と仕事をしているみたいだな。
若い客もちらほらと居るが、どちらかと言うと年齢層は高め。しかも、男性が多い印象。
そんなに広くはない店内だけど、みんながワイワイしていて活気のある居酒屋だなと思った。
「ほれほれ優介、こんな所初めてなんでしょ? 帝国での成人は十五歳なんだから酒飲みなよ、酒! あ、おねーさん!」
「え、そうなんすか?」
いつの間にか俺のことをファーストネームで呼ぶ上原少佐は、手を挙げて店員さんを手招きする。
まったくオヤジさんといい、少佐といい。この世界にはコミュ力高い人ばっかりだな。
てか、成人が十五とかマジか。
「私ビールね」と早速やってきた店員さんに注文する上原少佐。
「嘘つかないでください、少佐殿! ダメだよ、有馬くん。帝国では成人は二十歳。お酒は二十歳になってから、だよ?」
なんだ、嘘かよ。少佐め、またしても俺の純粋な心を弄びやがって。まぁアルコールには全く興味ないから全然いいけど。
「大丈夫だ佐倉、俺は未成年だから酒なんて飲まない。まぁ二十歳になっても飲もうと思わないけどな…………俺、ウーロンハイ」
「お酒じゃないの!」
「ぶっ!!」
佐倉のツッコミに腹を抱えて笑い転げる帝国の英雄こと、上原少佐。本当に大丈夫か、帝国軍。てかまだシラフだよな? めちゃくちゃテンション高いな、少佐。
「シャレだよシャレ。俺、ウーロン茶で」
口を押さえてクスクス笑うお姉さんにそう注文すると、俺は佐倉にメニュー表を手渡す。
それをぶつぶつと言いながら佐倉が受け取る。
「まったく、有馬くんの悪ノリにも困ったもんだよ。私もまだ未成年だからお酒は飲めないし…………ええと、私、レモンサワー」
「あは、あはははっ! お、お腹、お腹痛いっ! あは、あははは!」
てんどんをぶちかましてくる辺りはさすがだな、佐倉。
あ、店員さんもクスクスと笑ってくれてる。それを見て少し救われた。もし忙しかったら申し訳ないしな。
それにしても上原少佐は笑いすぎだぞ。シラフでこんなになるなら酔ったらどうなるんだろう。
「お約束かと思って。付き合わせちゃってすみません、店員さん。私もウーロン茶をお願いします」
「ふふふ、全然いいですよ。今は落ち着いてますから」
佐倉は店員さんに頭を下げてメニュー表をシュヴァリエに渡す。
「あの、ご主人様」
「ん、どうしたシュヴァリエ?」
「私もお酒を飲んでもよろしいのでしょうか?」
少し遠慮気味にシュヴァリエがそう聞いてきたので俺は頷き……かけて思いとどまる。
「あれ? シュヴァリエはいくつなんだ?」
思えばシュヴァリエの年齢を聞いたことがない事に気づいた。
外見の年齢は大人っぽいし二十歳は超えていそうだけど、シュヴァリエは獣人だし、外見と年齢が合わない可能性もある。
単純に酒を飲んでも良い年齢なのか気になった俺は不用意に女性に年齢を聞いてしまっていた。
けれどシュヴァリエは何も気にしていない様子で、ケロリと言う。
「私は二十四歳です」
「じゃあ問題ないんじゃないのか?」
ルゴール人の成人が幾つなのかは分からないけど、二十四歳ならまぁ、お酒を飲んでも良いんじゃないのかな。
「へぇ、年上だったのね」
「そう言う少佐はいくつなんすか?」
「あのね、気軽に乙女に歳を聞くんじゃないわよ。二十二よ」
「……言うのかよ」
しかも乙女って。上原少佐は俺の思う乙女とはほど遠いんだけど。
まぁでも気軽に女性に年齢は聞いたらダメだよな、うん、気をつけよう。
「ご主人様、では私はこのワインを頂けますか?」
シュヴァリエは店員さんにでは無く、メニュー表を指して俺に言った。多分、俺の許可を取っているつもりなのかな? 遠慮しなくて良いのに。……上原少佐の奢りなんだし。
シュヴァリエの言う通りの物を店員さんに注文する。
しばらくすると大ジョッキのビールと、グラスに入った赤ワイン。それからウーロン茶が二つ運ばれてきた。
それぞれがそれぞれの飲み物を持つと、少佐がジョッキを掲げて俺をアゴで指す。
「ほれ、乾杯しなさい乾杯」
「え、なんで俺が?」
「あんた一番年下でしょーが」
「ええ……?」
いきなり上官から明らかなパワハラを受けた俺は視線で講義する。
しかもアゴで指しやがって。乾杯なんてした事ねぇよ、未成年なんだぞ。
けどまあ確かに俺が一番年下なんだから仕方ないか。これも社会勉強だしな。不文律最低限のマナーですかね。ったく覚えてろよ。
「ご主人様のお手を煩わせる訳には行きませんわ、ここは私が……」
「ううん、ここは相棒の私がするよ」
「いや、上原少佐は俺をご指名なんだ。だからここは俺が……」
シュヴァリエ、佐倉、俺が順番に手を挙げる。
いかにもやりたそうに、我こそが乾杯をしたいのだと主張する。
そんな俺たちの顔色を見て、上原少佐が頭にハテナを浮かべる。
一人だけ取り残された形になった上原少佐が「え、どうしてそんなにやりたがるの?」という顔を浮かべつつ、ゆっくり手を挙げる。
「え、じゃあ私が……」
そして俺たち三人は完璧なタイミングで口を揃えるのだった。
「「「どうぞどうぞ」」」
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続きは近日中に投稿予定ですので、楽しみにして頂けるとありがたいです。
次回は特別遊撃分隊の歓迎会の様子をお送りする予定です。
飲みニュケーション(死語?)でキャラの良さを掘り下げられたらなと思います^ ^




