【騎士の願い】
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前回に引き続き、カレンのラボでのお話です。
「私の仕事は、魔女であれば誰でも使える〝高出力の【魔導力変換装置】〟を作る事なのさ」
そしてカレンは、その視線をシュヴァリエに向けて言った。
「その為に高い魔力を持つルゴール人の騎士様に私の研究の手伝いをして欲しいのさ」
「……私に、手伝い?」
「ルゴール人で魔力を持つ個体は多い。私も微弱ながら持っている。しかし騎士団隊長を勤めるほどの人物なら相当の魔力量を持っているはずさ」
カレンはタブレット端末を見て言う。
「事実、キミの“ジャンヌ・ダルク”というパトリオットのデータを見せてもらった。あの高出力の機体を駆れるだけの魔力量を持つ魔女は帝国側にはそうそういないのさ」
俺はシュヴァリエと出会った時のことを思い出していた。
拳銃を構える佐倉に対してシュヴァリエは、自身の魔力で練り上げた剣を空中で構えていた。その芸当がどれほどの魔力を持っていたら出来るのか知らないけど、少なくとも佐倉は無理って言ってたような。
さらにはあの“ジャンヌ・ダルク”のパワー。あれは明らかに“ワルキューレ・ブレイズ”のそれを上回っていた。
エンジン出力が大きくても、操縦者の魔力が伴っていなければ何の意味もない。
下手をすれば魔力消費が激しく、戦闘中に魔力切れ。戦闘不能に陥ってしまいかねない。
「……何故、私なのです? 私の知る限り、人間に捕らえられた獣人……ルゴール人は大勢居るはずですわ。その方達の中から寄りすぐれば私よりも高い魔力を持つ者が居てもおかしくありませんわ」
「確かにいるかも知れない。しかし捕らえたという事は捕虜さ。その捕虜に無理強いしたら軍法会議物さ。……ルゴール軍との間に法なんて無いから、好き勝手やってもいいんだけどね」
「カレン」
「……おっと、今のは失言さ。忘れておくれ」
聞く人が聞けば問題になりそうな発言を上原少佐が遮る。コホンと咳払いをしてカレンはシュヴァリエに向き直る。
「その点キミは捕虜とは違う。自らの意思で少年と魔力契約を交わした訳だからね」
「……もうひとつ、質問をよろしいですか?」
ややあってシュヴァリエはカレンに言う。
「……私は、この戦争を早く終わらせたいと考えています」
シュヴァリエはそのエメラルドの瞳をやや伏せて、訥々と語り始めた。
俺と佐倉、上原少佐は二人の会話を静かに聞いている。
「ルゴール王国がこの世界に来た理由は『魔物の居ない安全な土地』を求めての事。私はこの地球で生まれたので、これは聞いた話ですが……ルゴール本土では毎日と言って良いほどに魔物の被害者が出ていたそうですわ」
魔物。その単語を聞いた俺はドキリとする。
この世界よりも魔力に満ちたファンタジー世界から来たシュヴァリエの祖先。ルゴール王国がいた世界には魔物が居るのか……。
そう言えば開戦当時は魔法と魔獣を使役して攻めてきたって言ってたっけ。
それでも使役し切れない魔物による被害者が多数出てるって事なのか。
「確かにこの世界に魔物は居ません。しかし先住民である帝国人と戦争し、結局多くの死傷者が出てしまっています。それでは何のために戦争をしているのか分かりませんわ」
「ご主人様や佐倉さんに出会って私は思いました。ルゴール王国のやっている事は間違っています。パトリオットは人を狩る兵器であってはならない、パトリオットこそ魔物から民を守る兵器であると」
「……シュヴァリエ……」
そう言い切ったシュヴァリエのエメラルドの瞳は力強く輝いていた。
俺たちと生活してそんな事を思ってくれていたのか。そう思うと少し胸が熱くなった。
人の命を尊いと思えるシュヴァリエだからこそ、佐倉との一騎打ちで勝っても命を奪おうとしなかったのかも知れないな。俺はふとそんな事を思った。
「私の魔力が終戦への手助けになるのなら、その依頼お受け致しますわ」
「ありがとう、シュヴァリエ卿」
カレンは再びシュヴァリエに右手を差し出した。
さっきのは挨拶の握手。これは先程とはまた違う意味を孕んだ握手だろう。そしてその意味は深い。
しかしシュヴァリエは悩む事なくその右手を取った。
「ふふっ、その敬称で呼ばれるのは随分と久しぶりな気が致しますわ。しかし私はもう騎士ではありませんの」
そう言うシュヴァリエは、しかし勇敢で凛として、涼しげな態度は、正に騎士のそれだった。
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続きは近日中に投稿予定ですので、楽しみにして頂けるとありがたいです。




