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【カレンのラボ】

 ご覧頂き、ありがとうございます♪


 飛鳥に案内された研究室で優介たちはルゴール人の研究員と出会います。


 カレンと名乗った研究員はこのラボの室長らしかった。

 彼女の頭部にある動物の耳(馬?)は飾りではないらしく、物音がする方向へ器用にくるくると向き直っている。


「ルゴール人が帝国でパトリオットの研究をしているのか?」


 帝国で、しかも祖国と直接戦うであろう軍隊でルゴール人が働いている事に純粋な疑問を抱いた俺は、カレンにその思いを素直にぶつけてみた。

  

 すると彼女は飄々(ひょうひょう)とした様子で答える。


「ああ、そうさ。もっとも私は生まれも育ちもこの帝国だけれど。私の生まれはアメリカのニューヨークさ。知っているかい?」

「ああ、もちろん……あ。もしかして捕虜の子供、とかそんな感じか?」

「ご名答だ少年。ほら、キャンディをあげよう」

「あ、ど、どうも……」


 そういうとカレンは白衣のポケットから個包装された飴玉を取り出して俺に手渡した。少年って言ったけど、そんなに年は離れていなさそうだけど。


 俺がした質問も、恐らく俺以外からも聞かれたりしているのかな、その質問自体に慣れている様子にも見えた。


「まさか敵……いえ、今は違いますが。帝国軍の戦艦の中でルゴール人に出会うだなんて思ってみませんでしたわ」

「私もさ。同族に出会えて嬉しいと思っているよ」


 カレンが差し出した右手をシュヴァリエが優しく握り返した。

 二人とも高身長の美形で、当然だけど日本人離れ、人間離れした外見なので絵になるな……。

 心なしか二人の表情も嬉しそうだ。同族に出会えたんだから、そうなるよな。


 握手を解いたカレンがここで行われている研究を流暢に説明してくれた。

 この世界に慣れていない俺への配慮なのか、専門的な言葉は極力使わない話し方をしてくれたおかげで、何とか理解出来たけど……。


 どうやらこの研究室の存在意義は『“雷桜参式(らいおうさんしき)”の【魔導力変換装置マギア・コンバージョン・デバイス】を量産する事』らしかった。


「“雷桜参式(らいおうさんしき)”のエンジンのコピーって事だよな?……分解してみたらいいんじゃないのか?」


 カレンの話を聞き終えた俺は、まず思った感想を言ってみた。佐倉もシュヴァリエも同じ事を思ったらしく、それに対する答えを促す視線をカレンに向けた。

 しかしそれに返答したのは上原少佐だった。


「当然そう思うわよね。そしてもちろん何回もしたわ。トウキョウには設計図も残ってるし、開発記録ももちろんね。“雷桜参式(らいおうさんしき)”は古い機体ではあるけど、それを元に同じ物を作る事は出来る、らしいわ」


 ん? 同じ物を作る事は出来る……?


「え、じゃあ作ればいいじゃないか」

「……あ」


 俺がそう言うと、隣の佐倉が何かに気付いたように声を漏らした。何か思い至ったのか?


「そう。『同じ物を作っても意味は無い』のさ」


 佐倉の表情を読み取ったカレンが笑顔を歪ませて肩をすくめて見せた。まるでお手上げさと言っているような顔だな。でも意味のわかっていない俺は首を傾げるばかりだ。


 “雷桜参式(らいおうさんしき)”は帝国の最新機種の“ワルキューレ・ブレイズ”から比べると、何世代か前の機体という事らしい。【パトリオット・オンライン】ではそんな設定は無かったから、それに関しては少し驚いたけど。


 それにしても『同じ物を作っても意味は無い』ってどういう事なんだ?


「有馬くん、多分だけど同じ物を作っても、誰も乗れないんじゃないのかな?」

 

 頭にハテナを浮かべている俺に佐倉が言う。誰も乗れない……ってどういう事なのか。


 佐倉の言葉を聞いたカレンが長い黒髪をかき上げながらそれに頷いた。

 

「そう、そこの……少尉の言う通りさ。設計図通りに作れば“雷桜参式(らいおうさんしき)”と同じエンジンは出来る。素材さえあれば量産も出来る。しかしそれでは我々が追い求める物は出来ないのさ。それに、今の“雷桜参式(らいおうさんしき)”のエンジンは大量の魔力を必要とする。そのままコピーしたところで、世界中探しても起動させられる人間は上原少佐しかいないだろう……少年は『魔力適正』と言う言葉を聞いた事があるかい?」

「えーと……多分」


 確か資料室で佐倉に教えてもらった記憶があるぞ。……てか“雷桜参式(らいおうさんしき)”を起動させられるのは、世界中探しても少佐だけって……すげぇな、少佐。

 

 魔力適正というのは、その人に魔力があるかどうかという事だったはず。ざっくり言うと、魔女か、そうじゃないか。

 魔力適正が無いと確かパトリオットを動かせないんだったよな?

 その旨をカレンに伝えると、彼女は「だいたい合ってる」と言ってから続けた。


「そうさ、そして魔力適正にはランクがある。基本的にはAからEまで。Aが優秀で、Eだと適性はあるが、パトリオットを動かす程の魔力を持ち合わせていないというレベルさ。帝国軍に所属しているパトリオットの操縦者の多くはDの子が多いね。……そこの少尉もDランクのはずさ」


 佐倉を見やると、俺の視線に気付いた佐倉が頷いた。

 シュヴァリエはカレンの話を黙って聞いている。

 

「魔力適正は本人が持っている魔力量が多いかどうかをしめしているのさ。気を悪くしないで欲しいが、Dランクは決してパイロットに向いている値だとは言えない」


 しかし、と言うとカレンは続ける。


「向いていないと言って開き直る訳にはいかないのさ。私たちはパトリオットで戦争をしているのだからね」


 カレンはそのヴァイオレット色の瞳に強い意志のような物を湛えて力強く言う。


「私の仕事は、魔女であれば誰でも使える〝高出力の【魔導力変換装置マギア・コンバージョン・デバイス】〟を作る事なんだ」


 そしてその視線をシュヴァリエに向けて言った。


「その為に高い魔力を持つルゴール人の騎士様に私の研究の手伝いをして欲しいのさ」


 

 

 


 お読みいただき、ありがとうございました。



 少しでも『面白い!』『続きが読みたい!』と思っていただけましたら、【ブクマ】【評価】を頂けると嬉しいです♪


 続きは近日中に投稿予定ですので、楽しみにして頂けるとありがたいです。


 次回は今回のお話の続きになります。

 長くなってしまいそうだったのですが、今後のお話に繋がる大事なお話なので次回も是非読んでいただきたく思います。

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