【降下準備】
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ソメイヨシノを援護すべく、輸送機から“ワルキューレ・ブレイズ”を降下させる優介たちです。
俺と佐倉は輸送機の最後尾に位置する格納庫に来ていた。
大型輸送機の格納庫の天井は見上げるほど広く、室内スポーツなら余裕で出来そうな解放感すら感じる。
しかしそれはこの“ワルキューレ・ブレイズ”が無かったらの話。
八メートルの巨体で膝を抱える様に腰を下した“ワルキューレ・ブレイズ”のコクピットハッチに素早く滑り込む。
整備クルーに予め頼んでいたパラシュートモジュール、そしてフロートモジュールの取り付け作業が進む中、起動準備を整える。
パトリオットのエンジン【魔導力変換装置】に佐倉の魔力が注がれて機体が低く唸った。
『有馬特尉、佐倉少尉、パラシュートモジュールとフロートモジュールの装備が完了しました!』
正面モニターに女性整備兵がワイプで表示され、準備が整った旨を教えてくれた。
よほど急いだのか、南国を思わせる褐色の肌には汗が滴っていた。
俺たちが席を立って、起動準備を終えるまでのこの短い時間で予想していなかった装備の換装を終わるなんて。
「めちゃくちゃ早いですね、助かりました。えーと……」
俺が名前が分からず言葉を詰まらせると、前席にいた佐倉が小声で「リー曹長」と教えてくれたが、それとほぼ同時にリー曹長が答えた。
「リー・スアン曹長であります!」
「ありがとうございます、リー曹長」
「私からも、ありがとうございました。行ってきます」
リー曹長始め、整備クルーにとってもまさかのタイミングだったのにこの早い対応はすごくありがたい。
「いえ、佐倉大尉に仕込まれておりますのでっ! いってらっしゃいませ!」
俺と佐倉が感謝すると、リー曹長は恐縮したように敬礼してハキハキした声で言った。
「有馬くん、準備はいい?」
コンソールパネルを弾き終えた佐倉が軽く俺を振り返った。その拍子に佐倉のお尻が俺の内腿に触れた。
「やーらかい」
「え? な、何言ってるの、有馬くん?」
やべえ口に出てた。
狭いコクピットだし、身体がちょっと触れたくらいでドキドキしてたらキリが無い。
当の佐倉も少し触れたくらいでは全く動じていない様子だし。俺は言葉の意味がわからず怪訝顔の佐倉に取り繕う様に言った。
「あ、いや、な、何でもない」
「ふーん? ……あ、ソメイヨシノから入電だって」
「マジか。繋いでくれるか?」
「うん、了解」
ソメイヨシノには俺たちの着艦予定時間や現在地などの情報を送っているはずだ。近くにいる事を知っているはずだし、多分援護要請か何かだろうな。
佐倉がパネルを操作すると正面モニターにワイプが表示された。
ツヤの有る黒のロングヘアの女性が映し出された。切れ長の瞳で、鼻筋の通った美人だが、軍人特有の固い雰囲気を纏っている。美人という事よりも、キツそうという印象が先立つ女性だった。
軍服の襟元にある階級章が目に入る。
紺色の下地に桜章と金線が四本。……たしか大佐、だったかな?
『こちら帝国海軍所属、戦艦ソメイヨシノ艦長の川島だ。聞こえるか?』
外見通りのクールな印象の声だった。
川島と名乗ったその女性に佐倉が応答する。バイク型のパイロットシートから身を起こし、キレのある敬礼をした。
「トウヤ基地第一分隊所属、佐倉莉子少尉であります。お目にかかれて光栄です、大佐」
「どうもっす」
敬礼はまだ照れ臭くて出来ないので、軽く会釈しておく。
「私もだ、佐倉少尉。それに有馬特尉。貴君たちとはゆっくり着任後の話をしたいのだが残念ながら邪魔が入ってしまった。着任前で申し訳ないが手を貸してくれ」
大佐というのがどれだけ偉いか分からないけど、ラノベやアニメとかの印象だと『ちょー偉い人』なんじゃ無いのか? それなのに手を貸してくれって言ったぞ、この人。
大佐なら命令してしまえばそれまでな気がする。
それを考えるとクールだけど、どうやら冷たい人ではないみたいだな。
「助かる。当方もパトリオットを出撃準備中だが、訳あって一機しか出せない。間もなく出撃出来る。出撃後合流し、協力して敵を殲滅してくれ」
「了解しました。敵機の情報はありますか?」
「ああ、もちろんだ。作戦概要と合わせてすぐに送信する。武運を」
「ありがとうございます、交信終了」
通信が切れて間もなく作戦の詳細が送られて来た。
正面モニターにマップを出して素早く確認する。その内容はごく単純なもので、ソメイヨシノの手前で敵を迎え撃つというものだった。
それよりも重要なのはソメイヨシノが捕捉したという敵の詳細だな。位置と数、予想される武装などの情報が充実している。
俺たちは海上を進むソメイヨシノを追い越して、降下地点に到着した。
輸送機の巨大な後部ハッチが開かれ、降下準備に入る。
猛烈な風が機内に入り込み、パラシュートのハーネスを音を立てて揺らした。
眼下には夕焼けで染まった真っ赤な海。パラシュート降下はこれで二回目だな。
「準備はいいか、佐倉?」
俺の問いに佐倉は頷く。
「うん、いつでもいいよ」
アイコンタクト・ワイプで目を合わせると俺は機体を空中に投げ出した。
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