【曲がり道。二人の道】
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デート回はこれでおしまいです。
「ちょ、佐倉っ」
「え、あ、あれ……私……」
俺が指摘するまで自分が泣いている事に気づいていなかったのか、佐倉は驚いたように手の甲で涙を拭った。
「あはははっ、ご、ごめんね。いきなり泣き出して……引くよね、痛い女だ私っ」
「いや、そんな事ないけど」
大きな宝石のような瞳から次々に溢れる涙を拭いながら、佐倉は首を傾げた。
ハンカチ……。
そう思ってポケットを弄るが、生憎とそんな物は持ち合わせていなかった。いつもは持ってるのに……。
目の前で泣いている女の子に何も出来ない俺は、自分の無力さを感じながら佐倉の涙が止まってくれるよう願うしかなかった。
「……私、ね」
「うん」
自分で持っていたハンカチで涙を押さえるように拭いながら、佐倉がぽつりと話し始めた。
「『また今度』って約束が出来るのが嬉しかったのかもしれない」
「……」
それは……。
また今度という約束が出来なかったという事か。
理由はすぐに思い至った。彼女がパイロットだから、街を守るために最前線に赴かなければいけない立場の人間だからだ。
「パイロットになってから、また今度って約束を誰とも出来なかった。お父さんもお母さんとも。もちろん莉乃、とも」
佐倉をベンチに座るように促す。
それに素直に従った佐倉はハンカチを持ちながら話した。
「莉乃なんて、すぐにまた今度また今度っていう約束をしたがってさ。適当に約束しちゃえばそれまでなんだけど、もし私に何かあって守れなかったらって思うと出来なくて……」
正義感と責任感が強い佐倉のことだ。
無邪気で健気な妹の事を思うと例え方便だったとしても、守れる確信の無い約束をするのが心苦しかったのだと思う。佐倉らしい、優しい理由だと俺は思った。
「だから、また今度って言う約束が出来てすごく嬉しい」
そう言うと佐倉は優しく微笑んで俺を見た。
涙に濡れた長いまつ毛が木漏れ日を反射し儚げに輝く。
潤んだ宝石のように美しい瞳は確かに希望を湛えていた。
「言っただろ、また今度操縦を教えてやるって。狙撃もだよ」
「うん」
思春期の大半を人のために、家族のために捧げてきた佐倉。自ら選んだ道だとは言え佐倉だって年頃の女の子。
たくさん我慢して来たこともあるだろう。
佐倉は軍人。この戦争が終わらない限り本当の平穏は訪れない。……だとしても……。
「莉乃とも約束したら良いじゃないか。次からは絶対守れる」
「……それって」
けれど今までとは違うんだぞ、佐倉。
「ああ。俺が居る。俺が佐倉を絶対に家に帰してやる」
「有馬くん……」
基地で唯一の魔女。
全てを一人で背負い続けてきた今までとは、もう違う。
佐倉の力を借りて、俺が代わりに操縦桿を握る事が出来る。
「だから、もう泣くな」
気がつくと俺は佐倉の頭をポンポンと優しく撫でていた。
佐倉の黒髪は驚くほどきめ細かく、自然に指が滑るようだった。一本一本が艶やかでとても気持ちが良い。
「……っ、無理……むりだよぉ……っ……」
「ええっ、な、何でだよっ」
ブワッと再び溢れ出す涙。
一瞬遅れてハンカチで顔を覆って俯いてしまった。
うわ、やべぇ、また泣かせちまった!
再び泣き出してしまった佐倉。
え、俺? 俺なのか?
俺が変なこと言ったのかっ!?……すまん佐倉!
頭を撫でたのが悪かったのかと思い、手を引っ込めようとすると「やめたらダメ」って言って腕を掴まれて佐倉の頭に戻されてしまうし……えぇ……ど、どうすればいいんだよ……。
女の子って、難しいな……。
◇
結局、泣き止むまで俺は佐倉の頭を撫で続けた。
ようやく泣き止んだ佐倉と俺はまたバイクに二人乗りして帰った。
来た道ではなく、遠回りして。
くねくねと続く湖畔の曲がり道を、時にはゆっくり、時には飛ばして。疲れたら休憩して、色々話して笑って。
俺と佐倉のデートは日が暮れるまで続いた。
バイクを降りた俺たちは、最後に『また今度バイクに乗ろう』と約束をして同じ道を帰った。
お読みいただき、ありがとうございました。
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続きは近日中に投稿予定ですので、楽しみにして頂けるとありがたいです。
デート回はここまでです。
いかがでしたか?楽しんで頂けましたでしょうか?
今後の展開は頭にありますので、是非楽しみにして頂けると嬉しいです^ ^




