【初めてのタンデム】
ご覧頂き、ありがとうございます♪
通常回の二話目です。
有馬少年と莉子ちゃんとのやりとりを楽しんでいただけたら幸いです。
「……え、乗れって。後ろにか?」
パイロットヘルメットを持ってこいと言ったのはこういう事だったのか。
バイクに跨った佐倉が後部座席をパンパンと叩いて、座るように促してくる。
「そうだよ。私のバイクに有馬くんを乗せたくてさ。どう、カッコいいでしょ?」
眉端と口端を上げて少し得意げに微笑む佐倉。
活発なイメージだったけど、どうやら本当にそうみたいだ。
佐倉の少しボーイッシュなルックスがバイクとよくマッチしている。
俺は素直に思った事を言っておく事にした。
「ああ、すごくカッコいい」
「あはは、ありがとう。さ、乗った乗った」
「え、これってどうすればいいんだ?」
「あ、そっか初めてなのかな? それはなんだか光栄だなぁ。このステップに左足をかけて、私の肩に掴まって」
「な、なるほどな」
佐倉はバイクに乗ったまま、二人乗り用のステップ(タンデムステップと言うらしい)を指差して丁寧に乗り方を教えてくれる。
か、肩に掴まれってかよ。
俺がステップに足をかけると、佐倉が「ほら、此処に掴まって」と自身の左肩を差し出してきた。
細くて華奢な佐倉の肩。
一瞬躊躇ってから俺は意を決してその肩に触れた。
細くて華奢で、それでいて柔らかいその肩はTシャツ越しではあるけど佐倉の温もりがしっかりと伝わってきて、一瞬ドキリとした。
“ワルキューレ・ブレイズ”のコクピットで密着しそうにはなっていたけれど、実際には〝少ししか〟触れていない。
それにたったあれだけの接触で女の子に慣れてしまえるほど俺の経験値は高くは無いんだ。
「っと。これで良いのか……? 良くわかんないんだけど」
思い切って佐倉の後ろに腰を下ろしてみる。
こ、これ近いぞ……“ワルキューレ・ブレイズ”のコクピットの比じゃない。
座った瞬間に佐倉から漂う女の子の柔らかい匂いが鼻腔をくすぐり、俺の中の男心を悪戯に挑発する。
その次に白い頸が目に入り、産毛の一本もない肌のきめ細かさに驚く。
「もっと真ん中に座ってみて? 自転車に乗る時みたいな感じで」
「いや俺自転車乗った事ないんだけど」
「え、ホントに? パトリオットはあんなに上手に乗れるのに。ふふっ、なんか可愛い」
「か、かわっ!? し、仕方ないだろっ」
自転車にすら乗った事がない事を話すと、佐倉がまるでからかうかのように目を細めてクスクスと笑った。
パトリオットと自転車は全く別物なんだから比べるなっ。
けど不思議と嫌な感じはしない。むしろこの初体験も佐倉に任せれば大丈夫だろうという気にすらなる。
何というか、大人の余裕とでもいうのだろうか。いや、一歳しか変わらないのに、その言い方は変かな?
けど俺は不思議とそんな気分になった。
「ふふっ、ごめんなさい。じゃあ私の言う通りにしてね」
そう言うと佐倉は後ろに乗る時の体勢を教えてくれた。
重心は車体の真ん中に。二輪車なんだから当然か。
それからバイクは車体と運転手が一体になるのが大切らしく、その基本とも言える体勢、〝ニーグリップ〟とやらが重要らしい。
前列の佐倉はバイクの燃料タンクを両膝で挟み込む。そうする事により、車体と一つになる。
その後ろに座る俺は、佐倉の腰を両膝で挟む。これで俺もバイクと一体となる。
「こ、こうか?」
「ううん、もう少ししっかりと。……そう、そんな感じ」
佐倉に言われた通りに両膝で佐倉の腰を挟む……って!
や、柔らかい柔らかい柔らかいぃ!!
腰を挟むなんて言っているけど、これお尻だろ!
程よい肉付きをした佐倉のヒップを俺の両膝が確実に捉えている。
少し遠慮がちにニーグリップをしていたのか、それでは甘いと言われる始末。
え、もっとグリップしてよろしいのですか?
そう思いながら、ふにふにと押し返してくるハリの良いお尻を俺の両膝ふぜいが生意気にもグリップする。
くそう、膝になりてぇ!! 膝のくせに、膝のくせにぃ!!
「……膝になりてぇ」
「……え、何言ってるの?」
「あ!? な、何でもない!」
やべぇ、また口に出てたみたいだ。
「緊張しなくて平気だよ。それで、手は……ココ」
「っ!?」
どこを掴んで良いのかわからなかった俺の左腕をグイと引っ張り、佐倉は自身のウエストにその腕を回す。
そうすると当然俺の身体は佐倉の身体に密着することになる。
俺の頼りない胸板が佐倉の背中にぴたりと張り付く。
佐倉の身体は、非常に引き締まっており、日頃から厳しい訓練をしているのがよく分かる身体付きだった。
けれど健康的で女の子らしい柔らかさはしっかりと感じる。
鼻腔をくすぐる佐倉の香りが更に濃くなり、俺の心拍数を跳ね上げる。
ヤバい、これ、佐倉に心音聞かれてんじゃないのか?
そう勘違いする程に、胸の内側を強烈に叩く心臓がうるさかった。
「う、うん、これでいいよ……右手も、その……」
俺が腕を回したあたりから心なしか、佐倉の頸当たりが赤らんできている気がしないでもない。
も、もしかして佐倉も緊張してくれてたり、するのかな?
ドキドキしているのは俺だけじゃない、のか?
……もしそうなら、ちょっと嬉しい、かも。
けれどそんな感情をまさか表に出すわけにもいかず、俺は空いた右手で座席の後ろにあった手頃なバーを握ってから、半ば照れ隠しで声を大きめにして言ってしまう。
「お、おぉ、何か掴みやすそうなバーがあるじゃないか、これを掴んどく」
「え、そ、そっか。うん、それがいいかも……」
そう言う佐倉の声のトーンが少しだけ落ちた気がした。
けれどすぐに念を押すように言う。
「だけど、左手は絶対に離しちゃダメだよ? だからしっかりと私に掴まっててね?」
「おう、わかった」
運転中に飛んでいってしまったら堪らない。
これは安全の為なんだからな。そう自分に言い聞かせて、俺の中に生まれてくる邪な感情を押さえ込む。
そうしないと、冷静ではいられなくなる。
それだけこの二人乗りという行為は刺激的で……。
佐倉はバイクのキーを捻り、イグニッションボタンを押し込んだ。
するとエンジンが轟き、マフラーが唸った。
小刻みに車体が揺れ、少しの緊張感が走る。
これは安全のためだ。
もう一度自分に言い聞かせて、俺は佐倉の言う通り彼女の身体に回された左腕に力を込めた。
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