【夕涼み。見渡す街】③
ご覧頂き、ありがとうございます♪
……あ。
俺も佐倉にお礼を言わなきゃ。
「あの、佐倉。俺からもお礼言わせてくれ……その、ありがとう」
佐倉は俺のその言葉に、何のことを言っているのか合点がいっていないようで首を傾げた。
「……カレーの事?」
「違う違うっ」
俺が否定すると佐倉は、顎に手を当てて更に首を傾げて、んー? と唸った。
「バリアで守ってくれたじゃないか」
「ああっ」
【ヴォルガー】との戦闘を終えたあの時、完全に油断をしてしまっていた俺はあの『王冠の【パトリオット】』が放った空飛ぶ刃を回避する事が出来なかった。
その時佐倉は魔力を使い、【ワルキューレ】の周りにバリアを張って防いでくれた。
アレが無ければ、俺は佐倉諸共串刺しだったと思う。
なるほど、と言った風に拳で手のひらを叩き、「そんな事かぁ」と笑って話し始めた。
「上手くいって良かったよね。あんなに魔力を使ったのは生まれて初めてだったから。まさかあんな事が本当に出来るだなんてね。あはははっ」
「笑ってるよ……」
頭を掻きながら愉快そうに笑う佐倉を見て、俺は顔を引き攣らせた。
確かにやった事ないと言っていたけど……。
【パトリオット】に搭載されたある装置を使うとバリアが張れるという事は知っていた。もちろん【パトリオット・オンライン】の、ゲーム内での知識だ。
ゲームの中でも【パトリオット】にバリアを張れるんだけど、ボタン一つで発動するゲームとは違って現実でのバリアは……すごく辛そうだった。
「あれ、すごく辛いんじゃないのか?」
「うんー、まぁね? よく分かんない」
「自分の事なのにか? 魔力を使うってどんな感じなんだ?」
「【パトリオット】を動かすだけなら何にも。起動する時にフラッとするだけだよ。立ちくらみみたいな。だけど……」
さっきの事を思い出しながら佐倉は続ける。
「魔導光子障壁……バリア出す時はね、また違うのよ」
「どんな感じなんだ?」
「なんかね、『うおおお! バリア出ろぉ!』ってなもんよ」
「な、なんだそれ」
ってなもんよって言われても……。
あの時はすごく必死で辛そうだったのに。そんな事をお首に出さない佐倉に、俺は眉をひそめ脂汗を流した。
佐倉自身も魔法の事をよく理解していないのかな?
「仕方ないよ? 【魔導力増幅装置】を起動させるにはそれしか無いんだから」
【魔導力増幅装置】
【パトリオット】に搭載されている装置の一つで、読んで字の如く、搭乗者である魔女の魔力を増幅させ、攻撃や防御に転用させる事ができる装置だ。
さっきのバリアがまさにそれで、戦闘中に佐倉に確認したのは、この装置の有無だった。
今思うと、あの『王冠の【パトリオット】』が放った空飛ぶ刃もそうかも知れない。
「その、辛いのか? あん時はすごく辛そうだったけど……」
バリアを展開させた後の佐倉は、息も絶え絶えになり、まるで百メートルを全力で走った後かのように肩で息をしていた。
バリア発動中も鬼気迫る形相だった。
バリアを張るたびにああなるというのであれば、頼るこっち側としては気にしざるを得ない。
「……うーん。正直ね。あ、でも気にしないでね、アレは私の役目だから」
「役目……?」
「私には魔力が、有馬くんには操縦技術があるでしょ? 二人の力を合わせたら【ルゴール軍】だって蹴散らせるよっ」
むんっと拳を握った佐倉が鼻息荒くそう言ったが、俺は慌てて訂正した。
「ま、待て待てっ。とりあえずは明後日まで」
アンナと名乗ったのじゃロリは、とりあえず明後日の『王冠の【パトリオット】』が来る掃討作戦とやらの迎撃まで。
その後はそれから考えていい事になっているはずだよな?
「んー? それって、私達がもしかしたら悪者なんじゃないかって疑ってるってこと?」
俺のその言葉を聞いた途端にジト目で睨む佐倉。
大きな瞳が三日月のように鋭くなった。
「いやいやそんな事は無いけどっ」
俺がまたも慌てて否定すると、佐倉は可笑しそうに笑った。
「あははっ、冗談よ冗談。とりあえずは明後日。それからは有馬くんが感じたようにしてくれて構わないから」
「わかったよ、とりあえずな」
「ふふっ、それまでよろしくね、相棒さんっ」
そう言うと佐倉は、白い歯を見せて笑った。
お読みいただき、ありがとうございました。
少しでも『面白い!』『続きが読みたい!』『頑張っているな』と思っていただけましたら、【ブクマ】【評価】をよろしくお願いします。
続きは明日の朝更新。
少しだけストックが有りますので、しばらくは毎日複数話更新の予定です。




