【夕涼み。見渡す街】②
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今回は少し短めですが、ご了承ください。
区切りの良い所までにしたかったのです_(┐「ε:)_
しばらく俺と佐倉はベンチに座り、夜景を見ていた。
眼下に広がる街では、街灯がアスファルトの道を照らし、その道を四輪の自動車が走っていく。
月明かりに照らされるそれらは、俺が住んでいた世界とそう大差ない。
大きな違いがあるとすれば、基地の中に佇む一機の鉄の巨人【パトリオット】だ。
【ワルキューレ】とは別の【パトリオット】。
確かゲームの設定では八メートル近い全高があった筈だが、実際に見ると想像よりはるかに大きい。
その異様な存在感が、日常から一気に非常識な異世界に居るんだと言う事を思い出させる。
「……あの時」
「ん?」
風呂上がりの熱った身体から汗が引いた頃、遠くを眺めながら佐倉が落ち着いた声色で話し始めた。
「あの時、もう家族に会えないんだって。そう思っちゃった」
「あの時って……アイツに押し倒された時か?」
敵国の【ヴォルガー】に押し倒され、SVSで相手の刃を抑えている時の事を言っている事はすぐに分かった。
そう聞き返した俺にすぐ佐倉は頷いた。
「うん」
「あの時は、確かにな」
状況が飲み込めないなりに、あの時は今までに感じた事のない恐怖が身体を駆け巡った。
焼ける金属の匂いと、降り注ぐ大量の火花。それと耳を刺す警報音。……今思い出しても恐ろしい。
「だから、ありがとう」
俺は今日何回目かの感謝を述べた佐倉を見た。
「またかよ、もういいよ」って言うために。
「俺のためでもあるんだから」と。
「またかよ、もういい……」
「ううん。言わせて」
「……」
佐倉の気持ちはもう十分、分かった。
そう言わんばかりの俺を佐倉は言葉で制して、そのまま続けた。
「あそこでもし私が死んでいたら、アイツらは確実にこの街に来る。そしてあっという間に占拠しちゃうでしょう」
「そして莉乃やお母さん達はこの街から追い出されちゃう」
追い出されるくらいならまだマシだろう。
もし基地の連中が抵抗してここで戦闘なんかが起こったら、街も無傷と言うわけには行かない。
もちろん人的被害も出るだろう。
それに佐倉の家族が巻き込まれない保証なんてどこにも無い。
そんな事は分かった上で佐倉は「追い出される」なんて表現を使ったのだ。仮定だとしても最悪の事態を口にはしたくないだろうから。
「キミは私だけじゃなくて、私の家族も救ってくれた。そして基地のみんな、私の仲間たちを。それが自分の命を守るついでだったとしてもその事実は変わらない。お礼なんて何回言っても足りないくらい」
「……」
佐倉の真っ直ぐな眼差しを受けて俺は何も言えなかった。
人に感謝された事なんてないし、なんて言えばいいのか分からない。
彼女からのお礼はこれで一体何回目なのだろうか、何度も何度も佐倉は俺に感謝を伝えてくれた。こちらが恐縮してしまうくらいに。
それだけ佐倉にとって、俺のやった事は大きかったって事なのかな……。
ゲームしか能のなかった俺が人のためになれたって事なのかな……。
もしそうなら……。
世界を救うだなんてピンと来ないけど、佐倉や佐倉の家族が今と変わらない生活を送れるなら……。
……あ。
俺も佐倉にお礼を言わなきゃ。
「あの、佐倉。俺からもお礼言わせてくれ……その、ありがとう」
佐倉は俺のその言葉に首を傾げた。
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