思い浮かんだのは猫型ロボット
「よし! 行こうかPちゃんっ…と、その前に」
あーあ、バランなんて掴むから…どうやって掴むのか、今度やってもらおう。
俺は弁当の空き容器を空間庫にしまうと、嫌がるPちゃんを捕まえ、ソースで汚れた羽を濡らしたタオルで拭き、最後にお茶をひと口飲んでから立ち上がった。
「おじいちゃんみたい…とミナミが言ってましたピ」
濡れた羽をパタパタ乾かしながら、Pちゃんが呟く。
悪意しか感じない。
「そこはお母さんだろ」
自分の言葉に少しヘコんだ。
クソッ、俺はまだピチピチの23才だっ!
声なき声を上げ、空間把握と気配探知を放つ。
円形のダンジョンの広がりに、上り階段と、右隅の下り階段を捉える。
それを線で繋ぎ、中心から新たな線を上に伸ばしていく。
「あった…あっちだ。70度、左斜め前」
二等辺三角形の頂点を掴んだ。
気配探知に、動かない6匹の小さな魔物の反応を感じる。
「いた…」
捉えた小さな反応を見失わないように、歩きながら連続して気配探知を放ち続けた。
屋久杉のような太い木々が、行く手を遮る。
邪魔だなあ…真っ直ぐ行けたら早いのに。
集中していないと小さな反応を見失いそうだ。
すると密集していた木々が、ふっと開けた。
木が切り倒されている。
休憩していた切り株と同じように、綺麗な断面だった。
さっきも思ったけど、なんだこれ? こんな綺麗に自然には倒れないよなあ…まあ視界は開けたけど。
6畳くらいの切り株の上に飛び乗ると、もう一度、方向と転移モグラの位置を確認する。
「ピ! 航平…航平!」
「今集中してるからちょっと待って…」
「ピ! 上ですピ!」
「ヘ?」
Pちゃんがバッグから、俺よりも高い位置を見上げていた。
突然気配探知に大きな反応が現れた。
「ヤバイッ!」
咄嗟に倒れた木の隙間に入り込む。
バサバサッ
さっきまでいた切り株一杯に、どでかい斧のような角を高々と掲げた、黒光りするカブトムシがそこに止まった。
昆虫系:オノカブト Lv15
攻撃パターン:押し潰し、分断
甲殻は硬く鋼の剣でも傷付くことはない
体長と比例した長い斧状の角で、相手を分断する
凶暴期に木を切り、産卵期に卵を産み付ける
弱点:土魔法、火魔法、腹部への物理攻撃
…今産卵期でありますように。
ジキジキジキッ
低音の鳴き声を上げ、斧の角を振り上げると、隠れていた倒木に振り下ろした。
凶暴期ですね!? なんとなくそう思ってました!
押しつぶされる前に抜け出し、倒木から倒木ヘ走る。
オノカブトが首をぐるりと回し、水平に斧を振るってきた。
ひっ!
屈んだ頭のスレスレを、振るわれた斧の風圧がかすっていく。
当たっちゃ駄目なヤツこれっ! 絶対当たっちゃ駄目なヤツ!!
絶対防御2でも確実に分断される。
なんかないか、なんかないか!
倒木の隙間を走りながら、思いつく。
倒木の隙間から、一番太そうな倒木の上に登った。
「ピー!? 航平! 危ないピ!」
「大丈夫!!」
オノカブトが、もらった! というように俺の立っている倒木に斧を振り上げた。
呼吸を整える。
振り下ろされる斧を紙一重でかわす。
斧が倒木に挟まった。
斧をギチギチ揺らし、抜こうとしている。
させるかっ!
空間庫からビッグスラグの接着剤を取り出し、木に挟まっている斧と木の間に振り掛ける。
オノカブトが倒木ごと斧を持ち上げた。
どんだけの馬鹿力だよっ!
俺は渾身の力で、斧に付いていく倒木を蹴り上げる。
倒木の重さも加わり、そのまま後ろへオノカブトがひっくり返った。
腹部が露わになる。
今っ
キラーアントの牙を2本出し、腹部の端から端までライン引きのように引き裂いた。
ギシシシ…
オノカブトが光に包まれ、消滅した。
レベルが上がりました
生命力50ポイント 魔力30ポイント 身体能力各10ポイント
見切り1を取得しました
賢者の家3(5m×5m×5m)が解放されました
…早くモグラに会いたい
読んでくれてありがとうm(_ _)m 駆け込み乗車出来ず、終電が行ってしまいました(´;ω;`)




