憧れは儚いもの
短めです
つい興奮してPちゃんを握り締めたことは、板チョコひとかけで和解した。
ただ、もし汚れたら水魔法で洗うからと優しく言うと、ブルッと体を震わせ、上手に食べ終わった。
「はあ、美味しかったですピ…チョコレート」
チョコの余韻に浸るように目を閉じる。
…そこまで。
今度はもうちょっと、お高めのチョコを買ってやろうと思う。
「じゃあ、Pちゃんがいう転移の場所はあっちのほうにあるんだな?」
さっき俺が空間把握3を放っても、場所を捉えることはできなかった。
「そうですピ。下り階段と上り階段がここですからー」
片羽で、ハンバーグ弁当に入っていた2枚のバランを取り、切り株の上に置く。
掴めるんかいっ!
ツッコミそうになるのを抑える。
「転移はこの辺にいるはずですピ」
と、2枚のバランから離れた所を示した。
Pちゃんによれば、下りと上り階段両方から、一番離れた場所にあり、階段を繋いだ線を底辺として、二等辺三角形の頂点、そこに転移があるとのことだった。
「じゃあ他の階もダンジョン内をくまなく探索すれば、いずれたどり着いたんだ?」
「いえ、転移は土のある階にしか居ませんピ。このダンジョンでは、6階の森林、10階の平野、17階の密林だけですピ」
10階、穴に落ちた先の階だ。
あの階にも転移陣はあったのか…まあ、あの10階で二等辺三角形の頂点を目指すのは、ムリ。
「しかも臆病なので、近付けば逃げますピ。ですから闇雲に探しても見つかりませんピ」
…さっきからPちゃんが、転移を擬人化しているような気がする。
「Pさん、ちょっと確認なんですけど、いいですかね?」
「ピ? はい」
「『転移陣』だよね?」
「ピ?」
Pちゃんが不思議そうに体を傾ける。
「ほらあの、中に入ると光ってフュンッーて飛ぶ‥」
「いいえ、転移はモグラですピ?」
「ハイ?」
「臆病なので、階段から一番離れた所に巣を作りますピ」
「ハイィィ!?」
…予想外過ぎる。
Pちゃんの話から分かったことは…。
転移モグラは危険を察知すると、高速で土の中を逃げるか、相手を飛ばす、要は強制転移させるらしいこと。
ひどく臆病なので、階段から一番離れた場所に数匹で巣を作っていること。
飛ばされる前に倒せば転移系のドロップ品が出ることもあること。
無作為で飛ばされるが、行きたい階層を強く思えば、その階に行けるかもしれないこと…。
「行けるかもしれないって…賭けじゃないか」
「なので、あまりオススメはしませんピ」
俺の憧れていた転移は、もっとこう、違うんだ。少なくともモグラじゃない…。
しかも無作為って…
いきなり地下20階に飛ばされたら、死ねる自信がある。
そういえば1階にいたミミック、あの階層にいるのが不思議なほど強かった。
…あいつ、飛ばされてきたな。
でもまた時間をかけ、「ちゃんぽん」トレーナーと共に、5階に戻るのも嫌すぎる。
俺は決断した。
「いや、やってやる! モグラを密かに、他に気づかれることなく倒し、転移ドロップを頂く。そして最後の1匹に転移させる! なんせ俺は隠密5、そして幸運200MAX持ちだ!」
あれ? これって…フラグじゃないよね?
読んでくれてありがとうm(_ _)m 感謝が溢れ出てどうしようか




