ミスリルどうする?
「なんで、ミスリルが……?」
黒い岩を良く調べてみると、黒い地肌の一か所に欠けている所があり、そこから銀色に光っている部分が見えた。多分これがミスリルだ。
「幻鯨が崇められていた理由はもうひとつ、時々供え物と引き換えに、ミスリルや金塊が置かれる事があったようですピ」
「ミスリルや金塊……。なあ、もしかしてゲンちゃん、光る物が好きなんじゃ……」
「ただ好きな物をお礼にあげただけ……十分考えられますピ。あの幻鯨は何も考えていなさそうですピ」
まだ水を掛けられた事を根に持っているようだ。ミスリルの岩をまた空間庫にしまう。
「まあ一度帰ろう。賢者の家に居ても、向こうじゃ時間がそんなに経たないから工事が長く感じそうだ。マシロ、頼んだよ」
とりあえず俺たちは1階に戻った。
部屋に戻ると丁度昼休憩なのか、工事の音が止んでいた。
「航平、お腹が空きましたピィ」
「キュイィ」
「そうだな」
今のうちに昼飯を作ってしまおう。空間庫からご飯と卵を取り出し、卵かけご飯の様に先に卵とご飯を混ぜる。こうすると簡単に米がパラパラになる気がする。ごま油にニンニクのすり下ろしを少し入れ、香りが立ったらネギとビッグホーンの肉で作った、なんちゃってチャーシューを刻み、投入。
「ピー、食欲をそそる匂いですー」
「キュキュィ」
「すぐ出来るからなー」
そこに卵を絡めたご飯を入れパラッとしたら、塩胡椒、鍋肌からチャーシューの汁をかけ回し、ジャッジャッと更に炒める。最後にレタスをちぎり入れて、レタスの色が変わらない内に火を止めた。
「よし、レタスチャーハン完成」
「たくさんありますピ! たくさん食べますピ!」
「キュイ!」
レタスでかさ増しされて、超大盛りに見えるから好きなんだよねー、これ。まあ十分大盛りだけど。
皿に盛り、それぞれの小皿と、作り置きの余り物スープ中華味バージョンを椀によそい、ガラステーブルに運んだ。
「いただきますピ」
「キュキュィ」
Pちゃんが羽根を、マシロが小さな手を合わせる。もう、いただきますがすっかり板についていた。うちの子たちを動画に上げたら、間違いなく100億再生されるな! 上げないけど!
みるみるうちにチャーハンの山が崩れ、ふたりの腹に収まって行く。……動画に上げる時は、いただきますまでにしよう。
「あ、そうだ」
スマートフォンを操作し、メッセージを送る。
「ろうしましちゃピ?」
「ほら、口に入れたまま話さない。いや、ゆんにミスリル見つけた事を報告したんだよ」
メッセージを送ってから1分も経たないで、ゆんから電話がかかってきた。電話に出ると何を言っているのかさっぱり分からないゆんの声が聞こえて来た。
「……だからご飯を口に入れたまま話すんじゃない。……うん、そうだよ。あのミスリル。……うん、ちょっと待って。Pちゃん、ミスリルってどう加工するか知ってる?」
電話から耳を離し、もりもりチャーハンを食べ続けているPちゃんに聞いてみる。
「んぐ……ゆんが魔鉄を加工している温度を聞いてくださいピ」
ゆんに確認すると1200度と返ってきた。
「では初めては1200度から熱して、1500度まで上げて下さいピ。100度上げるごとに流す魔力を10増やして打ちますピ。水は魔法で作った水を使って下さいピ」
Pちゃんから聞いた事をそのまま伝えて、はたと思い直す。
「ゆん、魔力は自然回復しない。今魔力量どれくらい? ……100丁度か。水魔法なんて……うん持ってないね。分かった。じゃあミスリルと一緒に、水魔法3のオーブと魔力回復ポーション送るから、試してみて?」
電話の向こうから、うわー! あたし魔法鍛冶師! と聞こえたのを最後に電話を切った。
「……これで適性無かったらがっくりするだろうな……」
「大丈夫ですピ。鍛冶者は大抵、水魔法か火魔法の適性がある者が多いですピ」
「……火魔法オーブも入れておこう。ミスリルが打てなくても、魔鉄で武器造ってくれてるし、あまりがっかりさせてもかわいそうだ」
水魔法が覚えられなくても、火魔法が覚えられれば『魔法鍛冶師』にはなれるだろう。
「ところで航平、ミスリルはどうやって送るんです? この世界に転移装置があるとは、検索しても出てきませんピ」
スープの椀を両羽根で持ち上げて、ズズッとスープをすする。
「宅急便を」
「あの岩を送るんですピ?」
「……無理、だと思う」
しまったー! 送るって言ってしまった! ……俺が直接行くしかないのか? でもゆんのご両親に、変な金属持って来やがってと思われたら、どうする? あ、俺吐いちゃうな……。
千駄木家に初めて行って、軽く吐いた事を思い出す。
「ミスリル自体は軽いですピ。単体なら問題ないと思われますピ」
余り物スープに入っていたじゃがいもを、もごもご食べ終わると椀をテーブルに置いた。
「……あの岩から取り出せと? 俺にそんな事」
いや、やってみる価値はある。ゆんの家に届けるよりマシだ。そうと決まれば………。
自分用に取り分けてあったチャーハンをガツガツ食べる。うん、冷えてもうまい。
「昼飯食べ終わったら賢者の家に行くよ、ふたりとも。どれくらいかかるか分からないからさ」
「待って下さいピ!」
Pちゃんが両羽根を上げる。
「どうした? 賢者の家じゃ、まずいとか?」
人数と俺が不在時不可以外、何か制限があるのか?
「デザートを食べていませんピ!」
「キュ!」
「……おやつの時間があるだろう。ちょっと経てばすぐだよ」
「デザートは別腹と言いますピ!」
「キュイ!」
何となく意味が違う気もするが、Pちゃんとマシロにつぶらな瞳をうるませながら、両手を胸の前で組まれお願いされたら……まあ、あげちゃうよねデザート。
動画再生200億いっちゃうな、これ。
読んでくれてありがとうm(_ _)m ちょっとずつでも進む。ほふく前進だ!




