第3章 第6節 それは、鈍色の反魂使い
※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。
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反魂使いのダークファンタジーです。
少年の頃からずっと、反魂使いになりたかった
突然どこかに消えてしまった、父さんみたいな。
歌うように詠唱し、地獄より魂を呼びもどす
憧れの背中になりたかった……!
それは、俺の心臓をジリジリと焼くほどに
焦がれ続けた夢だったーーーーーーーーー
「俺が、死の運命。変えてみせるから」
その台詞を、ダリウスが告げる。
その台詞は、憧れであり、夢であり、俺が俺にかけた呪い
ずっと欲しかったダークローズ色の表紙、「深淵の書」
今、その本を片手に、俺の眼前に立つダリウスは
手が届かない神様みたいに、煌めいて見える。
「いい枝をみつけたんだ。これで、魔法陣を描くよ」
ダリウスは長い枝を拾うと、スルスルと地面に紋様を描いていく。ずっと絵描きを目指していた、ダリウスの指。
その指先からスーーーっと紡がれる線には、勢いがあって迷いがない。あまりにも流麗に感じたんだ。
だから俺の瞳には、ただただ痛かった。
「ふ〜できたな!!
アレキ、ミノタウロスを円陣に運んでくれないか
今から、命を呼び戻すから」
「……………………」
「アレキ、どうした?」
「え、あ、ごめん!!!
すっげーーーキレイに魔法陣描けてるな〜って、ぼーっと見てたよ」
事実、フリーハンドで描いたとは思えないほどに、美しい。満ちた月のような円がそこにあったんだ。俺はヒリヒリとした痛みを通り越して、ちょっと見惚れてた。
今の俺に、このクオリティの魔法陣は書けないって思ったから。
なんかもう、素直に胸が震えたんだよな。
「……もしもさ。
俺があの時、反魂使いに選ばれてたとしても
きっと、こんな完成度の高い魔法陣は書けないよ
ダリウス。お前やっぱ、すごいわ!」
「そうか?
変なトコに感心するのな、アレキは」
ダリウスが不思議そうに、首をかしげる。
ま、いいや。気を取り直して、俺も術を手伝おう!
それから俺とダリウスで、ミノタウロスの死体を魔法陣の中へ運ぶと、センターの五芒星の上にソッ……と寝かせた。
「ふーーー緊張した〜!
あとは頼んだぜ、ダリウス!
この魂、蘇生させてくれよ」
刹那、背後の草いきれから殺気を孕む声が響いた。
「こ、こ、こんな姿になってぇ……兄貴っ!」
声のする方に振り向くと、褐色の毛に覆われたミノタウロスが立っていた。え、いつの間に!?
その手には、ギラギラと光る斧が握り締められている。わなわなと震えるその姿は、血染めの大地に倒れているミノタウロスとそっくりだった。
あ、ヤバイ。まさかーーーーーーーーーー
「あ、あんた誰だよ!」
「そ、そ、そこで倒れてる男の弟だ。
兄貴を追ってここまできた……
なあ、教えてくれよぉ。さっきまで俺たちゃ飲んでたんだ
それがよお、どうして、こうなってる!?」
「これは、えっと」
「お、お、お前が殺めたのかあ?」
「違いますの! 私がっ……!!」
俺と褐色のミノタウロスの問答を見かねて、ラウムが飛び込んできた。いけない。今、彼女を巻き込んだらダメな気がする!!
「落ち着こう、ラウム!! 俺が説得する」
「アレキ、でもっ」
「大丈夫」
俺は、涙ぐむラウムのおでこに、優しくぽんぽんすると
その肩をふわりと押して、褐色のミノタウロスを刺激しないように、後ろへと下がらせた。今は、俺がなんとかするしかないや!
「……うるせええええええええええええええええええええ!!!」
突然の咆哮!
褐色のミノタウロスは(この後、ネーミングが長いので『褐ミノ』とするね! いいよねっ。答えは聞いてないっ!)
声の勢いのままに、斧をギン! と振りあげた!
カッと見開かれた瞳には、憤怒の炎が揺らめいている。ヤバイ、魔法陣に足を入れさせるわけ、いくかよおおおおおおおおお!!
止めるしかない、俺が
褐ミノを!
そう胸に決意を抱いた。まっすぐに、走った。その俺の横を、烈風がかけ抜けるーーーーーーーーーーー
「止めてやろうか、その男」
「ギルフィ!?」
漆黒の狼が、俺の前に立ちはだかった。
流れる仕草でスルリと剣を抜く様は、まるで夢のように美しい
ギン、ギン! と褐ミノの斧をはじき、みぞおちにゴスッ!! っと強打のパンチをブチ決めると、斧を側蹴で華麗にけり落とした。
その間、数秒である。
すっっっっげーーーーーーーーーーー!!!
「ギルフィーーー!!!
その男、たぶん『鈍色の反魂使い』だよな?」
「ああ、おそらくな」
若草の野原から、黒髪に紅のメッシュが入った少年が現れた
右手に、鉄の爪をたずさえて。
ショーパンに、サラサラのショートヘア
涼やかな瞳は、翡翠の色をしている。その声から紡がれた言葉に、俺は一瞬、真っ白になる。
いや、なんていった……今?
この少年、倒れている褐ミノの体を指差して、『鈍色の反魂使い」って言ったよな?
反魂使いって、一種類じゃないのか……?
そんな、まさか……父さんからは一度だって、他にも反魂使いがいる、なんて聞いた事はなかったぞ……!!
「ーーーーーーーーその魂、骸にあらず」
「ダリウス?」
このタイミングで、ダリウスの詠唱がはじまった
だ、大丈夫か?
褐ミノ、まだちょっと動いてるぞ!
「お、お、俺は……まだ負けない……」
ズズズ……と、上半身を起こす。
褐ミノは、まだ命の炎をたぎらせていた。
あ、これヤバイ奴だ……!
褐ミノは戦意を失ってない。ダリウスの方に視線を走らせると、鉄の斧をふたたび握りしめたんだーーーー
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