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ディストピアの反魂使い  作者: 柊アキラ
14/33

第二章 第二節 ラウムの半神、ダリウスの瑕

※この作品はシェアワールド『テラドラコニス』の世界観に基づいて書かれています。

シェアワールド『テラドラコニス』のリンクはこちらです。

https://terradraconis.com/


どうやら俺は、死んだらしい

貫かれたはずの心臓は、傷跡もなくふさがっていた。


うっわ、なんか……すごいな。

ダリウスの反魂の術、ほんとに成功したんだ……!

ラウムがにっこりと、優美な笑みを浮かべる。


「カノンは、もういないわ。彼女は、私が食べたから」


「は? 何言ってんだよ……?」


「彼女は、私がバリバリと食べて。

そして、私の半神になったの」


「半神……?」


「そうよ。一つの命を分かつ存在となったわ。ここにいる私は、ラウムであり、カノンなのよ」


「え、ちょっと意味わかんないんだけど」


隣に視線を移すと、ダリウスもルダも意味がわかんないみたいに感じた。それぞれに離れた場所で、呆然とした表情のまま、ラウムの話を聞いていた。


そりゃそうだよな。カノンが忽然と消えて「ラウムの半神となった」なんて説明されても、なんか意味わかんないよ。



「カノンはね、半分『神』となったのよ」

「半分、神……?」


「ええ。彼女はこの世で存在するための、わたしの依代となり、この世界に顕現するための肉体となったの。

私は神でありながら、人となった。ラウムであり、カノンなのよ」


「えっと、言ってる意味がわかんねーんだけど」


「私は今ラウムだけど、自分の意思でカノンの姿に変化して、カノンの魂にこの身を譲ることも出来るってことよ」


「それってどういう……。カノンの姿になってる時は、ラウムはどこに行っちゃうんだ!?」


「ここよ、心の奥で眠るの」

ラウムは、自分の心臓に右手を添えた。


あ、キレイだな……。


洞窟は海の底みたいに、淡いブルーの光で満たされていて。胸に手をあてて瞳を閉じる彼女は、漆黒の人魚みたいにもみえる。こんなに美しいのに、人じゃなくて「邪神」なんだよな……。


「ん、どうしたの。じっと見つめて」

「あ、いやラウムさ、キレイだな〜と思って。洞窟の仄かな蒼の光に照らされてると、邪神っていう事忘れるな」


ラウムはプクッと唇をとがらせて、俺の肩にひとさし指でツンツンしてくる。うおっっ、なんぞっっ!?


「邪神って言うのは、人間が勝手につけた呼び名ですのっ。私は高貴な神なのですわよっ! だからカノンも、半分神なのですわーーーーーっっ」


「怒るポイントわっかんねーよ!! と、とにかく、邪のつかない神なんだなっっ?」

「そうですわよっっ! もう、折角カノンと再会させてあげようと思いましたのにっ。もうもうもうですわ〜」


ぷくぷくっと膨れながら、ラウムが拗ねた。

ーーーーあれ? 

ちょっと、かわいいぞ。普通の女の子みたいだ。


神なのに、邪神なのに。俺はそのギャップになんだか戸惑う。そして今、カノンと再会とか言ったよな?


「あ、あのさラウム。もう一度カノンに、会えるのか?」

「会えるわよ。会いたいの?」


「もちろん!! だって俺が死ぬ前さ、カノン泣いてたし」


「ふーん。じゃあ、少しだけカノンに体を譲ってあげましょうか」


「え、少しだけって……?」


「こうするのよ、見ててね」

そういうと、ラウムが急にフッ……と俺の耳元に顔を寄せた。えっと、近いですラウムさん。


「ねえ、アレキ。ラウムの体、透けてるよお……!!」


ルダの声が、震えてる。

なんだ……これ!

先刻、ファルネウスを取り込んだ時の、マンティコアみたいだ。ラウムの体がだんだんと透明になっていく……!!


「あれ、縮んでくよ……」


そう、ルダの言う通り。ラウムの身長が少しづつ少しづつ、小さくなっていく……!

ラウムの体は水のように透けていて、体の向こうにある、洞窟の岩場が見える。ブルーの光を孕んでいて、夢のように煌めいていた。


「カノン……!」


思わず、驚嘆の声が漏れる……

だって、形がだんだんとカノンの姿を成していくから。すげーーー! 奇跡を見てるみたいだ。


本当に……これがカノンなのか?

こんな風に変化しても、人のままって言えるのかな

小さい頃から一緒に過ごしてきた、ほんわり癒し系のカノンなんだろうか。


なんかちょっと不安になってきたぞ……!


けど、眼前で変化していく「カノンらしき彼女」は、透明で海洋生物みたいな風貌から、肌色みを帯びて、人間ぽくなっていく。


「…………あ、アレ……キ…」

「カノン、本物……なのか?」


サラサラの銀髪、とんがり耳のエルフ。

それはもうずっと前から知っている、懐かしきその瞳、その顔だった。カノン……!

そんな、やった……!! 本物だ……!!


「カノン、なんだな……?」

「うん。アレキは……幽霊じゃないよね」

「俺は、幽霊じゃないよ」

「ほんとだよね、生きてる……よね?」


カノンがおずおずと、俺の頬に手を伸ばす。


両手でそっと俺の頬をくるむと、その唇がフルッと細かく震える。儚げでなんかさ、守ってあげたくなるよ。


「あったかいね……アレキが……生きて……っ」


彼女のアイスブルーの瞳から

つーー……と、落ちていく涙の雫。


「あたしね、もう……

もうこの世では、会えないかと思ったの……!

だってアレキの心臓に刺さってたの、あたし見たもん

だからね、もうこの世では……っ」


カノンがそう言って、俺の胸にトン…と飛び込んできた。

え、ちょっ……こんな事、初めてなんだけど!


泣きじゃくる彼女の細い肩を、ぎゅっとしてあげたくなる。俺はふんわりと彼女を包むように、手を伸ばして……。



「カノン。本当に、カノンなんだな!?」

「だ、ダリウス?」


瞬間、抱きしめようとした腕の中がスカッと、虚無になる。なんでじゃーーーーーーーーーーー!!


見ると、俺の腕の中にいたカノンを、なぜかダリウスがサラリと抱き寄せていた。どんな早業だよっっっ!!


「心配したんだぞ、カノン。ラウムの依代として吸収されて、もう消滅したのかと」


「ごめんね、なんかもう夢中だったの。でもね、もうこーんなに元気だよ〜」


まだ涙が滲む目尻に、花のような笑み。

ああ、カノンだ……!

なぜか、ダリウスの腕の中なのが気に入らんけどさ、無事で生きてて、笑ってるから。

なんかもう、夢のように嬉しくなるよ!!


「うっ……、くっ……!」

「どうした、ダリウス!」


急にダリウスの顔が蒼白になり、膝をガクッと落として地面にフラリ……、座り込んだ。


「なんかさ、急に頭痛がして……いって……!」

「大丈夫かよ、ダリウス!」


「ああ、なんか何か……大事なこと忘れてる気がする……」


「なんだろな? 見たところ洞窟に渦巻いてた、ディストピアの門も閉じたのか、見当たらないし。大丈夫だと思うけど」

「そ、そっか……」


ダリウスの端正な顔が、いつもより仄かに白い。人形めいた顔立ちに、苦悶の汗がじんわり滲んでいた。

大丈夫、かな?


「アレキ、俺さ……何も変わってないよな?」

「変わってないと思うけど」


ルダも心配なのか、駆け寄ってきた。水筒をダリウスにスッと差し出すと、俺の反対側に座って、背中をさすっている。


「これ水、ダリウス飲んで! 薬もさ〜カバンにあるからね、ちょっと待ってて!」


ガサゴソと肩から斜めにかけた、キャラメル色の鞄の中身を一生懸命に探しているルダ。


その光景を、まるで珍しいモノでも見るように、じーーーーっと、目を見開いてみつめるダリウスの姿があった。

なんだろ、様子がおかしいぞ。


「ダリウス、どうした?」


「誰、ですか?」


ルダをまっすぐに指差して、ダリウスが告げた。



「あなたは、誰……ですか?」



一瞬、時が凍る。

カノンが、ルダが、そして俺が。ありえない言葉の先、ダリウスの顔に、焦点を当てていた。


「何いってんだよ、おい。……冗談だろ? ダリウス」

「冗談なんかじゃない、俺はこの人を、知らない」


凛とした声で、キッパリと言い放つ。



「俺はこの人を、知らない」



「は?」

「初めて会いますよね」

「……ダリウス。何言ってんだよ、ルダだぞ。ずっと、幼なじみだろ!? 何年一緒にいると思ってんだよっっっ」


「お前こそ、何言ってるんだよ、アレキ。

そんな記憶、あるわけないだろ」



ーーーーーーー頭の中で、ノスタルジックな声が響く。

それは初めて俺が、反魂の術を使った日

父さんは、確かにこう言ったんだ。



「反魂の術。副作用があるかもしれんな」


そう、確か……12歳の頃だ

しばらくしたある日、俺は気になって「副作用」について聞いた覚えがあった。



「いいか、アレキ。

反魂使いは、地獄より魂を呼び戻す者、この世の理を破るには、それ相応の『代償』が必要となるのだーーーー」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も、テンポが良くて、ワクワクしながら読みすすめられました!! 今回は登場人物達の謎がいっぱい!! え??カノンは??えぇ??ダリウスは??ってなります!! ラウムとカノン。…
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