猫柳の突撃!武藤くんのお宅訪問①
2度目のフィールドワークも散々だった。夏だ!海だ!などとわけの分からないことを言いながら、連れて行かれたのは、曰くありげな海岸。岸壁の下に海が広がり、その崖の淵に沿ってかけられたロープは一体何を意味しているのか。あまり考えたくはない。
猫柳は、そこに祀られていた小さな祠を調べていた。もちろん、調べる前に手を合わせることは忘れない。
どうも、昔から『自殺の名所』と呼ばれているところのようで、本当に、なんてところに連れてきたのかと憤慨もしたが。今回は古い文献も無いし、武藤としては完全に、意味なく連れてこられたに等しい。
「武藤くん、終わったよー」
「思ったより早かったな」
「うん、小さい祠だしね。でも、ちょっと気になるもの見つけちゃったから……うん、今日は遊んで、明後日武藤くんち行っていい?」
「明後日か……別に構わないが、明日はいいのか?」
「うん、ちょっと行きたいところがあるからさ」
そう言うと、猫柳は武藤を連れて海岸へと向かった。せっかく海まで来たのに、足ぐらい浸かりたいじゃない?というのが猫柳の言だ。
海水浴場にもなっていない、ほとんど人のいない海岸は、確かに海水浴場の人混みと比べると、とても過ごしやすかった。その代わり海の家やシャワー室などという便利なものも無いが。
「えいっ」
ばしゃっと、唐突に海水が飛んできて、武藤の顔面を直撃した。見ると、膝下までズボンの裾を捲り上げた猫柳が、次の一発のための海水を両の掌に溜め、ニヤリと笑っている。
「な…何してくれてるんだ、クソ猫が……」
「あ、あれ?武藤くん、ガチ怒り??なんで…」
「眼鏡に海水とかやってくれるじゃないか!!死ね!!」
膝丈のハーフパンツ姿なので、そのまま足首あたりまで海に入り込むと、武藤は海水を猫柳に向かって思い切り蹴り上げた。
「つめたっ!!ちょ、ずぶ濡れじゃん!!どうしてくれんの!!」
「うるさい。俺はすぐにでも真水で眼鏡を洗いたいんだ!!」
「眼鏡ってそんなに不便なの!?」
「お前も眼鏡をかければ分かる。今すぐ視力が落ちる呪いをかけてやろうか」
「や、やめて!!そんな呪いは困る!!」
「どうしてだ?」
「俺が眼鏡かけたら、イケメン度が落ちる!!」
「……ほう。それはそれは……。今お前は、眼鏡をかけた人間全てを敵に回したぞ…」
「どうして武藤くんは冗談が通じないのさぁ!!」
「だったらもう少しマシな冗談を言え!空気を読め!!」
そう言いながらバッシャンバッシャンと海水をかけあっている。すでに二人ともずぶ濡れだ。そうなってから、猫柳があはは!と声を出して笑った。
「もう、濡れ鼠じゃん。俺ら電車乗れる?」
「知らん。お前のせいだ」
「じゃあ、ある程度乾くまでここに居るしかないねぇ」
「いや、俺は念のため着替えを持ってきているから気にするな」
「……はい?」
「海に行くと言ったときから、こうなるだろうと思ってな。Tシャツとハーフパンツだけだが」
「ずーるーいー!!武藤くんの準備良すぎ!!俺にも言っておいてよ!!」
「それも知らん。思いつかないお前が悪い」
ざばざばと海から上がり、置いていたカバンから着替えを取り出すと、武藤はさっさとそれに着替えた。ちなみにフェイスタオル程度ではあるが、タオルも準備している。
共に上がってきた猫柳がまだブーブー言っているので、武藤は髪と体を拭い終わったフェイスタオルを投げつけておいた。
次回へ続く!!
☆面白かったときは評価や感想、レビューなどお待ちしています☆




