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化ける猫と黒縁眼鏡  作者: 佐伯 みのる
<夏の章>
15/30

猫柳の突撃!武藤くんのお宅訪問①

 2度目のフィールドワークも散々だった。夏だ!海だ!などとわけの分からないことを言いながら、連れて行かれたのは、曰くありげな海岸。岸壁の下に海が広がり、その崖の淵に沿ってかけられたロープは一体何を意味しているのか。あまり考えたくはない。

 猫柳は、そこに祀られていた小さな祠を調べていた。もちろん、調べる前に手を合わせることは忘れない。

 どうも、昔から『自殺の名所』と呼ばれているところのようで、本当に、なんてところに連れてきたのかと憤慨もしたが。今回は古い文献も無いし、武藤としては完全に、意味なく連れてこられたに等しい。

「武藤くん、終わったよー」

「思ったより早かったな」

「うん、小さい祠だしね。でも、ちょっと気になるもの見つけちゃったから……うん、今日は遊んで、明後日武藤くんち行っていい?」

「明後日か……別に構わないが、明日はいいのか?」

「うん、ちょっと行きたいところがあるからさ」

 そう言うと、猫柳は武藤を連れて海岸へと向かった。せっかく海まで来たのに、足ぐらい浸かりたいじゃない?というのが猫柳の言だ。

 海水浴場にもなっていない、ほとんど人のいない海岸は、確かに海水浴場の人混みと比べると、とても過ごしやすかった。その代わり海の家やシャワー室などという便利なものも無いが。

「えいっ」

 ばしゃっと、唐突に海水が飛んできて、武藤の顔面を直撃した。見ると、膝下までズボンの裾を捲り上げた猫柳が、次の一発のための海水を両の掌に溜め、ニヤリと笑っている。

「な…何してくれてるんだ、クソ猫が……」

「あ、あれ?武藤くん、ガチ怒り??なんで…」

「眼鏡に海水とかやってくれるじゃないか!!死ね!!」

 膝丈のハーフパンツ姿なので、そのまま足首あたりまで海に入り込むと、武藤は海水を猫柳に向かって思い切り蹴り上げた。

「つめたっ!!ちょ、ずぶ濡れじゃん!!どうしてくれんの!!」

「うるさい。俺はすぐにでも真水で眼鏡を洗いたいんだ!!」

「眼鏡ってそんなに不便なの!?」

「お前も眼鏡をかければ分かる。今すぐ視力が落ちる呪いをかけてやろうか」

「や、やめて!!そんな呪いは困る!!」

「どうしてだ?」

「俺が眼鏡かけたら、イケメン度が落ちる!!」

「……ほう。それはそれは……。今お前は、眼鏡をかけた人間全てを敵に回したぞ…」

「どうして武藤くんは冗談が通じないのさぁ!!」

「だったらもう少しマシな冗談を言え!空気を読め!!」

 そう言いながらバッシャンバッシャンと海水をかけあっている。すでに二人ともずぶ濡れだ。そうなってから、猫柳があはは!と声を出して笑った。

「もう、濡れ鼠じゃん。俺ら電車乗れる?」

「知らん。お前のせいだ」

「じゃあ、ある程度乾くまでここに居るしかないねぇ」

「いや、俺は念のため着替えを持ってきているから気にするな」

「……はい?」

「海に行くと言ったときから、こうなるだろうと思ってな。Tシャツとハーフパンツだけだが」

「ずーるーいー!!武藤くんの準備良すぎ!!俺にも言っておいてよ!!」

「それも知らん。思いつかないお前が悪い」

 ざばざばと海から上がり、置いていたカバンから着替えを取り出すと、武藤はさっさとそれに着替えた。ちなみにフェイスタオル程度ではあるが、タオルも準備している。

 共に上がってきた猫柳がまだブーブー言っているので、武藤は髪と体を拭い終わったフェイスタオルを投げつけておいた。


次回へ続く!!

☆面白かったときは評価や感想、レビューなどお待ちしています☆

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