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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第六章

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151/151

151.変態同士は引かれ合う


 そのアナウンスを聞いて、俺は愕然とする。

 どうやら今回はメインストーリー10をクリアするまでログアウト出来ないらしい。


「設定がクソゲー過ぎるだろ……」


 今まではこんなことはなかった。

 連続したストーリーって言ってたし、今回が特殊なのか?

 ……小雨の『世界扉』を使えば現実に戻れるのだろうか?

 とはいえ、まだCT中だから試せない。

 今はともかく井口たちと合流しよう。


「……ん?」


 ふと、男の死体があった場所を見る。

 そこには死体が消え、一枚のコインが落ちていた。

 そういえば、クラウン・レディオも倒したら死体は残らず消えてたな。

 アイツみたいに偽物の体だったってことか?

 周囲を確認してから、落ちているコインを拾い上げる。

 大きさとしては五百円玉よりも少し大きいくらいか。


『徳川の紋章を手に入れました』


・徳川の紋章

 徳川家の紋章。

 特に歴史的な価値はない。


「説明これだけかよ!」


 バルカディアの紋章の時もそうだったが、何か意図的に説明をぼかすか、省略してないか?

 ともかく使い道が分からない以上、今は収納リストに入れておくしかない。

 俺は雷蔵たちと共に、井口のいる方へと向かった。





 マップを頼りに向かうと、そこには大きな門があった。

 門は高さ三メートルほどで、中は虚空が渦巻いていた。

 異世界ファンタジーとかでよく見るワープゲート的なアレだ。


「あ、お兄さん、待ってましたよ~」

「先輩、無事で良かったです」


 メイちゃんと井口が手を振ってくる。


「これがメイちゃんの言っていた門か? 他の亜人たちは?」

「皆さんは一足先に門に入ってもらいました~。後は私達だけですぅ~」

「亜人の皆さんの護衛に、小雨ちゃんや骸骨騎士さんたちには先行してもらってます」


 井口の説明に俺は頷く。


「一応確認するけど、これって俺達が入っても大丈夫なんだよな?」

「はい~。私と一緒なら問題ありません~」


 メイちゃんが何かを見せてくる。

 それは小さなコインのようだ。


「これが『門』の鍵です~。亜人の、それも事前に登録した人でないと開けないんですよ~」

「へぇ、それじゃあ、その鍵にはメイちゃんが持ち主として登録されてるってことか?」

「はい~。それじゃあ、お兄さん、手を出してください~」


 メイちゃんが手を差し出してくる。

 手を握ればいいってことか?

 俺がメイちゃんの手を握り返すと、メイちゃんはにぱーっと笑みを浮かべた。


「えへへ。それじゃあ、他の皆さんも同じように手を繋いで下さい。もしくは体のどこかに触れて下さいね~」


 井口は空いている手に、雷蔵が肩に、雲母は首に、夜空が腰にしがみ付いてくる。

 門を通るには、鍵の持ち主と一緒に通らなきゃいけないってことか。


「皆さん、掴まりましたね~。それじゃあ、行きましょう~」


 メイちゃんと共に俺達は門をくぐる。


(――誰も居ないな……)


 念のため、くぐる瞬間まで周囲を確認したが、特に怪しい影はなかった。

 姿を隠したり、気配を消して俺達に触れている存在もない。

 確認作業、大事。

 独特の浮遊感と共に、俺の視界は暗転した。

 




 ――視界が明ける。

 そこには先ほどまでと違う光景が広がっていた。


「見渡す限り草原だな……」

「うわぁー、広いですねぇ。モンゴル高原みたいです。いや、実物は見た事ないですけど」


 俺も井口とほぼ同じ感想だ。

 これは凄い。

 地平線の向こうまで草原が広がっている。


「ウッキィ!」

「わんっ!」


 見れば少し離れた場所に新月や屍狼、亜人たちの姿があった。

 俺達の姿を見て、駆け寄ってくる。

 小雨は……返事がないと思ったら、屍狼の背中で、器用に眠っていた。

 最近、随分と寝るのが多くなってる気がするけど、大丈夫だろうか?


「ここがキザルト草原ですぅ~。ここから北に真っ直ぐ進むと亜人の国があるんですよ~」


 メイちゃんが手をかざすと、門が消える。

 キザルト草原、か。

 確か大河さんのスタート地点だったな。


「メイちゃん、ここにはモンスターや危険な生物は居ないのか?」

「えーっと、たぶん大丈夫だと思いますよぉ~。キザルト草原に生息する生き物は亜人にはとても友好的なのでぇ~」

「亜人には、ね……」


 それはつまり、亜人以外には危険だということだ。

 念のため、周囲を観察していると、茂みから何かがこちらに向けて飛び出してきた。


「キュァァーーー!」

「おっと」


 弾丸のように一直線に飛び掛かってきたソイツを、俺は身をよじって躱す。


『モンスター図鑑が更新しました』


『モンスター図鑑№27 ウォーバニー

 キザルト草原に生息する兎型のモンスター

 一見すると愛くるしい見た目だが、実は凶暴

 獲物を見つけると、凄まじいスピードで接近し、足首の刃で首を切る

 討伐推奨LV2』


 見た目は可愛いが、結構物騒なモンスターだな。

 コイツが、大河さんがチュートリアルで遭遇したっていう二足歩行の兎か。

 確かによく見れば、足首に小さな鎌のような刃が付いている。

 

「あ~、ウォーちゃん! この人たちは襲わなくていいんですよ~」

「キュー?」


 ウォーバニーはメイちゃんの声に反応すると、すぐに大人しくなった。

 そのままメイちゃんの懐に飛び込むと丸くなった。

 メイちゃんが撫でると、気持ち良さそうに喉を鳴らしている。


「本当に言う事を聞くんだな」

「そうなんですよぉ~。なんでも、以前とあるぷれいやーさんにこっぴどくやられてから、大人しくなったそうです」

「とあるプレイヤー?」


 ……それはひょっとして大河さんなのでは?

 あの人なら、やりかねない。

 メイちゃんはウォーバニーをモフりながら。


「あ~、でも一匹だけ言う事を聞かない子が居るらしいんですけど~。まあ、滅多に現れないので問題ないですよ~」

「いや、メイちゃん、そんなあからさまなフラグを――」


「うわぁああああああああああああああああ!?」

「た、助けてくれえええええええ!」


 ほら見たことか!

 悲鳴が聞こえた方を見れば、一体のモンスターが亜人たちへと襲い掛かろうとしていた。

 ……なんだ、あのモンスターは?

 デカい二足歩行の兎だ。筋肉もムキムキで、身長も軽く2メートルは超えている。


『モンスター図鑑が更新しました』


『モンスター図鑑№27 ブルーアイズ・アルティメット・マッスル・バニー

 キザルト草原に生息する最強の兎モンスター

 ウォーバニーの希少最終進化系

 たゆまぬ修練の果てに、筋肉こそ至高にして究極と悟った兎

 倒した生物を喰らい、その筋肉と魔力を己のモノとする

 その蹴りは大地を割り、天空を引き裂く。

 喰らった生物の命もストックで出来る為、殺しても一定の周期で復活する

 討伐推奨LV92』



 うぉおおおおおい! なんだそのツッコミどころ満載の説明は!

 討伐推奨LV92!?

 終末世界の連中を除けばダントツで最高レベルのモンスターじゃねえか!

 スタート地点に居ていいモンスターじゃないだろ!


「ウサッギィイイイイイイイイイイイ!」


 あとなんだその変な叫び声は。

 ウォーバニーと全然違うじゃないか!


「メイちゃん、いちおう確認するけど、あれって……」

「あ~……アレがその例外ちゃんですねぇ~。どうやら運悪く遭遇しちゃったみたいですぅ~」

「ちくしょう! 全員、戦闘態勢!」


 俺達は武器を構えると、ブルーアイズ・アルティメット――長いわ! 筋肉兎でいいな。


「時よ止まれ!」


 俺はすぐに『時間停止』を発動させた。

 筋肉兎と亜人たちとの距離が近い。普通に走ったのでは間に合わない。


「屍狼! 亜人を連れて離れてくれ!」

「わぉん!」


 時間停止の中でも屍狼だけは自由に動ける。

 屍狼に襲われそうになっている亜人を救助してもらい、そのまま距離を取ってもらう。

 俺も一気に加速し、ソウルイーターで筋肉兎を斬り付ける。


「かってぇ……!」


 魂を斬ってるはずなのに、まるで巨大な岩を相手にしているような感覚だ。

 そういえば、コイツの説明に命をストック出来るってあったな。

 ストックした魂が重なり合って強化されているのかもしれない。


「……ならこっちか?」


『着替え』で武器をソウルイーターから、シルバーブレッドに変更。

『浄化』が付与された弾丸を筋肉兎へとしこたまぶち込む。

 ダメージの肩代わりや、復活はアンデッド系モンスターが多いからな。

 こっちの方が効果があるかもしれない。

 ――10秒経過。『時間停止』の最大時間。

 そして時は動き出す。


「ッ……ウサァ? ウサッギィイイイイイイイイイイイ!」


 ソウルイーターによる斬撃と、シルバーブレッドの弾丸を受けてなお、筋肉兎は平然としていた。

 ダメージよりも、何が起きたのか分からない混乱の方が大きいようだ。

 ……効果なしかよ。とんでもない化け物だな。

 だが動きは止まった。


「ウガオォオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「ウッキィィイイイイイイイイイイ!」

「呪い・全ステータス減少!」


 雷蔵の紫電一閃、夜空の炎嵐魔法、井口の呪い。

 それが一気に叩き込まれる。

 さっきのえねみーはこれで倒せた。

 これならどうだ?


「ッ……ウサギィィィ?」


 しかし、筋肉兎は――無傷。

 まるで「今、何かしたか?」と言わんばかりの表情。

 サイドチェストのポーズすら取る余裕すら見せているではないか。

 コイツ、腹立つわぁ……。

 

 だがこれはマズイ。普通にピンチだ。

 先ほどから俺達の攻撃がまったく効いていない。

 当然だが、戦闘が始まってから『不快』や『催眠』も発動させているのだが、こちらも効いてる様子がない。

 おそらくデバフや特殊効果に対する耐性も持っているのだろう。

 普通にボスキャラみたいなスペックしてやがる。

 筋肉兎がこちらを見つめてくる。


「……ギィィ」


「なんだ?」


「ギィィ……アテシヲ倒シタケレバ、トラヲ連レテコイ」


 お前、喋れんのかい!

 てか、大河さんの関係者かよ!

 あとお前、一人称アテシなの? キャラ濃いな……モンスターなのに。


「オ前達、ぷれいやーヲ見ルト、トラニ爆撃サレタ傷ガ疼ク……」

「爆撃!?」


 そういえば、ロケットランチャーも武器で使ってたな、あの人……。

 大河さんの火力はプレイヤーの中でもトップクラスらしいし。

 逆を言えば、そのレベルじゃないと、コイツにダメージは与えられないということだ。


「ウサギィィィ……トラ殺ス。ぷれいやーモ殺ス……殺シテ、食ッテ、アテシノ糧ニスル」

「……ッ」


 筋肉兎がゆっくりとこちらに近づいてくる。

 ……どうする?

 ディザスさんのキノコを食べるか……?

『巨大化』、『飛行』、『火炎攻撃』は効果は薄いだろうが、『無敵化』なら勝てる可能性がある。

 しかし『無敵化』を引ける可能性は10%だ。狙って引ける可能性は低い。


「……いや、迷っている暇はないな」


 もうそれ以外に方法はない。

 俺は頭に被っているパンツのキノコを引っこ抜いて口に入れようとした――次の瞬間だった。


「――大丈夫だ! もう心配ない!」


 どこからか男の声が聞こえた。

 誰の声だ? いったいどこから……?


「ウサッギィィ……?」


 筋肉兎もキョロキョロと周囲を見回している。

 すると、かすかに空で何かが光った。


「とうっ!」


 掛け声と共に、空から何かが凄まじい速度で落下してくる。

 やがてはっきりと見えたそれは――トラクターだった。


 ズドオオオオオンッ!


 まるで隕石が落ちて来たかのような衝撃。

 土埃が舞い、トラクターから一人の男が颯爽と現れる。


「亜人たちよ! 遅くなってすまない! しかし、私が来たからにはもう安心だ!」


 燕尾服に、シルクハット。顔はのっぺりとしたマスクで覆い、何故かその手には大根が握られていた。

 その人物に、俺は心当たりがあった。

 というか、こんな特徴的な見た目の人物は一人しかいない。


「まさか、アンタ……絶頂会長さんか?」

「如何にも! その素敵なアヒルパンツ……君がリュウだな! 話はトラから聞いている! ここは私に任せて、亜人たちと共に先に進みたまえ!」

「トラさんから……?」


 どういうことだ?

 俺がこっちに居る事を、大河さんは知っているのか?

 混乱する俺をよそに絶頂会長さんは筋肉兎に向き合う。


「ウサギィィ……オ前、絶頂会長カ! トラノ仲間殺ス!」

「フハハハハ! やってみるがいい! まずは――この服を脱ごう!」


「なっ――!?」


 俺は目を疑った。

 マントを脱ぎ捨てた絶頂会長さんの背後。

 露わになったその後ろには――何もなかった。

 前は燕尾服なのに、後ろが裸なのだ。

 わずかにスーツを留めるための紐があるだけ。

 まるでどこぞのびんぼっちゃまのようなスタイルである。


「ふっ……そんなに見つめてくれるな。照れるじゃないか」

「へ……変態さんだぁ……」


 ――『変態農業貴族』絶頂会長。

 あのえねみーが言っていた呼び名の意味を、俺は今はっきりと理解した。

 うん、これはどこからどう見ても変態だわ……。



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― 新着の感想 ―
伝説の白龍さんみたいなブルーアイズ・アルティメットはムキムキ兎だったり、英国紳士かと思ったら びんぼっちゃまファッションだったり、後からじわじわきますね(笑)
お前が言うなwww
びんぼっちゃまスタイルかww
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