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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第四章

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117.慢心しない敵は厄介


 クリアはしたがいつもの空間にはまだ戻らない。

 イベントが残ってるってことか。


(そういや、あの黒い人影もまだ現れてないな)


 いつもはクリア寸前になると現れていたあの黒い人影。

 ひょっとしたら、この後出てくるのか?

 エイトさんと雷蔵たちが近づいてくる。


「リュウ、今クリアのアナウンスが流れたんだけど、そっちは?」

「ああ、こっちも流れた」


 どうやらエイトさんにもアナウンスは流れていたらしい。

 良かった。これで二人ともミッションクリアだ。

 エイトさんは手に持った鍵を見つめてくる。


「それが『救世の鍵』かい? 効果は?」

「まだ確認してない。それと一つしかないみたいなんだ」


 二人でクリアしても報酬は一つだけ。

 これってもし仮にエイトさんが無限リスキルになってなければ、どうなっていたんだろう?

 俺とエイトさんそれぞれがアイテムを手に入れていたのか。

 それとも早い者勝ちだったのか。

 クリア出来た以上、確認しようがないが。


「ふーん。じゃあ、それはリュウが持っててよ。私は良いからさ」

「いいのか?」

「いいも何も、リュウがいなきゃ、私はずっとリスキル状態だったもの。だから、それはそのお礼ってことにしといて。どの道、今回の報酬はリュウにあげるつもりだったし。ほら、これ」


 そう言ってエイトさんは、自分の収納リストから何かを取り出す。

 それは見覚えのある古びた楽譜だった。


「それって……」

「うん、終末の楽譜F。クリア報酬に入ってたんだ。前にリュウが集めてるって言ってただろ? だからあげるよ」

「そうだけど、いいのか? なんか貰い過ぎて、逆にこっちが申し訳なくなってくるよ」

「いいよ、別に。友達じゃんか。困ったときはお互い様だよ」

「……分かった。じゃあ、ありがたくいただくよ」


 エイトさん、なんていい人なんだ。

 見た目が8なこと以外はパーフェクトである。

 ……正直なところ、エイトさんのこの提案はかなり嬉しかった。

 これで前回、今回のクリア報酬と合わせてE、F、Gと新たに三枚の楽譜が手に入った。

 待機室に戻ったら、セイランと小雨に確認してもらおう。


「それで、君の同僚や狙撃兵のカードはどうなったの?」

「ああ、それも今確認する」


 俺はアヒルパンツに挟んでおいた四枚のカードを取り出す。

 とても生暖かかった。


「……今更だけど、他に仕舞うところなかったの?」

「……ない」


 マントにポケットみたいなのは付いてないし、パンツ以外にどこに仕舞えというんだよ。

 他人のカードは収納リストにもバインダーにも納められないし。

 カードの井口の表情が複雑な表情を浮かべていた。

 ……どういう表情なんだこれ? 嬉しいのか、泣いてるのかどっちだ?


「それを言うなら、エイトさんだってないだろ」

「私はあるよ。ほら、ここ」


 エイトさんは8の下の部分の空洞を指す。

 え、そこ物入るの?

 戦闘中は体から数字を生やしてたし、謎構造過ぎる。

 

「ていうか、リュウ。戦闘が終わったんなら、もう服着てもいいんじゃないの? 『着替え』があれば、何かあってもすぐに対応できるでしょ?」

「出来るけど、万が一、その『着替え』のCT5秒がネックになるかもって考えちゃうんだよ。たった5秒が戦闘にどれだけ影響するか、エイトさんだって分かるだろ?」

「……確かにそれを言われちゃったら、何も言い返せないね」


 エイトさんなら一秒の重みを誰よりも知っているだろう。

 そうだ。俺だって好きでこんな変態な格好をしているわけじゃないんだ。

 ただ万が一に備えて、恥を忍んでいるに過ぎない。

 待機室ではって? 別に見られて困る連中は居ないし。

 あー、でも井口が仮に仲間になれば、流石に待機室では服着なきゃな。


「さて、それじゃあ井口のカードを……あれ? そういえば、他人のカードってどうやって実体化するんだ?」

「そういえば、どうやるんだろう? そもそも他人のカードを奪ったり、交換するって出来るのか試したことないよね」

「だよなあ……」


 すると頭の中にアナウンスが響いた。


『以前の所有者がカードの所有権を放棄しました』


『終末の魔導士及び終末の狙撃兵の、現在の所有者は居ません』


従属(カード)化しますか?』


「今、頭の中にアナウンスが流れて、なんかカード化出来るみたいだって」

「そうなんだ。良かったね……」


 ふと、エイトさんは何か考えるそぶりを見せた後、こちらを見た。


「ねえ、リュウ。もしよければ、終末の狙撃兵の方は、私に所有権を譲ってくれないかい? 出来れば、三枚とも」

「別に構わないけど、どうしてだ?」

「ちょっと気になることがあってね。後で確認が取れたら、ちゃんと話すよ」

「分かった。じゃあ、これ」


 俺はエイトさんに三枚のカードを渡す。

 確かに狙撃兵は強力な戦力かもしれないが、別に惜しくはなかった。

 エイトさんの頼みだからな。

 彼女が終末の楽譜を対価を求めず譲ってくれたように、俺も彼女にはそうありたいと思った。だって友達だからな。

 エイトさんは三枚のカードをバインダーに収める。


「ありがと。少し時間はかかるかもしれないけど、確認が取れたら後で連絡するよ」

「ああ、分かった」


 俺も井口のカードをバインダーに収める。

 すると、どこからかパチパチと拍手のような音が聞こえて来た。

 音のする方を見れば、あの黒い人影が居た。


『……おめでとう』


「相変わらず唐突に出てくるな、お前」


 黒い人影は駅の中を指さす。


『進むならあっち……戻るならそっち』


「あっち、ね。んで、今度は何があるんだ?」


『……世界の記録。きっと役に立つよ』


「なあ、今更だけどお前は誰なんだ? そろそろ正体を教えてくれよ?」


 すると黒い人影が、かすかに揺らめいたように見えた。

 ともすれば、どこか悲しそうに。


『……なんでそんなことを聞くのか分からない』


「え?」


『今日は……ここまで。いつか思い出してくれるのを……待ってるから』


 そう言って、黒い人影は消えた。

 ……今の言葉はなんだったんだいったい?

 思い出すって、いったい何のことだ?


「なかなか気になることを言ってたね。君の同僚やあの道化(ピエロ)の話といい、今の黒い人影といい、『異世界ポイント』にはまだまだ謎がいっぱいありそうだね」

「……そうだな」


 黒い人影が居たところを確かめるが、今回は特にアイテムはなかった。

 いよいよ井口を実体化させようとすると、体が白く光り始めた。


「……どうやらここまでみたいだね。リュウ、今回はありがとうね。本当に助かったよ」

「別にいいって。また何かあったら、よろしくな」

「うんっ」


 さて、待機室に戻ったら、井口に話を聞かないとな。

 白い光に包まれ、俺とエイトさんは終末世界を後にするのだった。





 一方そのころ、薄暗い空間で、クラウン・レディオは目を覚ました。

 碌に身じろぎも出来ない狭い空間だった。

 身をよじって、手でふたを開けると、一気に視界が広がる。

 薄暗かったのは、棺に閉じ込められていたからだ。

 ふたには十字架をあしらった模様が施され、吸血鬼が眠りにつくような外観をしている。

 外に出ると、そこは寂れた教会だった。


「ふぅ、ようやく戻ってきましたか……」


 棺から起き上がると、さしたる感慨もなく、体の具合を確かめるように伸びをする。

 久しぶりに本来の体に戻ったからか、体のあちこちが固くなっているような気がした。


「あら、負けちゃったの?」


 声が聞こえた。

 そちらを見れば、紫色の薄いドレスに身を包んだ女性が、笑みを浮かべながら、彼を見ていた。

 銀色の髪は腰ほどまで長く、その瞳はルビーのように赤く輝いている。


「これはこれは女王(クイーン)。ぷれいやーに無様に敗北した哀れな道化に何の御用でしょうか?」

「やっぱり負けたのね。初めてじゃないの? 貴方が『ぷれいやー』に負けるなんて」


 女王と呼ばれた女性の声には、ほんのわずかな驚きの感情が混じっていた。

 彼女にとって、クラウン・レディオが負けたのは、それほど予想外だったのだろう。

 彼女の言葉に、クラウン・レディオは苦笑する。


「中々に貴重な経験をさせて貰いましたよ。ほろ苦く、飲み込み難く、とても長く腹に残りそうだ。これが敗北の味というやつなのでしょうね」

「悔しいんだ。やーい、やーい、敗北者〜」

「……そういう貴女こそ、ここに居るということは負けたのでしょう?」


 クラウン・レディオにそう問われて、女性はうぐっと、渋い表情をする。

 よく見れば、彼女が腰かけているのも、彼と同じ棺であった。

 つまりは彼女もまた『ぷれいやー』に負けたということ。

 少し言い方に棘のあるのは、僅かばかりの意趣返しだろう。


「ちょ、ちょっと油断しただけよ。力だって制限されてたし、相性も悪かったし、それにすっごい変な格好してたのよ。オドオドして大して強そうに見えなかったし」


 捲し立てるように話す彼女に、クラウン・レディオは苦笑する。


模造品(コピー)とは言え、貴女を倒すとは大したぷれいやーじゃないですか。どんな奴だったんです?」


「……SM女王様とバニーメイドが合体したような見た目の女だったわ」


 思い出すのも忌々しいと、彼女は呟く。


「なんですか、それ? 貴女と将軍が配置されたのは『戦国乱世』ですよね? 侍とかじゃないんですか?」


「知らないわよ。そうとしか言いようがないもの。クソデカい斧を鎖鎌みたいに投げてくるわ、砲弾みたいな弾を連発してくるわ、世界観ガン無視だったわよ。なによメイドキックって! どこにキック言いながらミサイルぶっ放すメイドが居るのよ!」


「……ずいぶんと個性的なぷれいやーですねぇ」


 彼も中々個性的な『ぷれいやー』と戦ったが、彼女も似たよう相手と戦ったらしい。

 思い出したくもないのか、女王は話題を切り替える。


「そういうあなたはどんなぷれいやーと戦ったのよ?」


「派手なパンツを履き、乳首に星マークを付けた男と、数字の8に手足が生えた女性でしたね」


 クラウン・レディオの言葉に、女王はぽかんとする。

 イメージ出来ない。どういう変態と、どんな生き物だそれは?

 一瞬、冗談かとも思ったが、クラウン・レディオがそういう類の冗談を言う男ではないと、彼女は良く知っていた。


「……ひょっとしてぷれいやーって頭のおかしい奴しか居ないのかしら?」


「かもしれません。ですが、彼らが強いのもまた事実。厄介ですよ、実に」


「そうね」


 敗北はしたが、情報は得られた。

 情報が得られれば対策も立てられる。

 二度と同じ手は通じない。

 それに次に会うときは、模造品ではない本来の姿だ。

 力も一切制限されていない状態ならば、クラウン・レディオが負ける理由は一つもない。


(ですが、その程度(・・・・)に考えていては、きっとまた負けてしまいますねぇ……)

 

 何故なら、自分と再び出会うときには、あの『ぷれいやー』はもっと強くなっているはずだ。

 対策するだけでは足りない。

 警戒し、あらゆる可能性を想定し、十全に力を蓄えなければ。


「ああ、楽しみだ。次に会うときが待ち遠しい」


 その時にはきっと、もっともっと素晴らしい殺し合いが出来るはずだ。

 騙し合い、策をめぐらせ、小細工をたっぷりと仕込んだ真っ向勝負。

 まさに彼が望む最高のショーだ。

 その為には、まず一つだけ。どうしても決めておかなければならないことがある。


「ところでクイーン。一つ相談があるのですが」


「なによ?」


「私も胸にシールを貼ろうと考えているのですが、どんな柄が良いと思いますか? 星はいかにも彼を意識しているようで露骨過ぎますし、やはり♠か◆辺りが無難かと思うのですが……あ、色はピンクですよね、やはり」


「知るかボケ!」


 確かに『ぷれいやー』には奇妙な奴らが多い。

 しかしだからと言って、仲間(えねみー)にも変な奴が多いのは困る。

 ぷれいやーに悪い意味で毒されないで欲しいと、女王(クイーン)はつくづくそう思った。



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― 新着の感想 ―
ハートシールが貼られている企画物とかあるよ!
変態じゃないよ!仮に変態だとしても変態という名の紳士だよ!
敵から見た主人公サイドの編成本当に終わってて好き 自衛隊3人はエイトさんの方に行ってしまったか……どう見てもシンプルにめっちゃ強いのそっちで、同僚はどうせ色物枠だから惜しいな まあ主人公には色物しか入…
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