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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第四章

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116.デイリーダンジョン 共闘戦 その5


 俺はアヒルパンツの裾に井口たちのカードを挟み込む。

 他人のカードはバインダーに収納できない以上、こうするしかない。

『いやぁああああああ』という、井口たちの悲鳴が聞こえた気がしたが幻聴だろう。

 

 クラウン・レディオは手に持ったバトンをクルクルと回す。

 回すたびに、バトンが長く、先端が風船のように膨らんでゆく。


「さあさ、お立合い! まずは風船のマジックをご覧あれ!」


 クラウン・レディオが地面を蹴って加速。

 俺たちに接近、バトンを振り上げる。


(――早い!?)


 目で追うのがやっとな程のスピード。

 駄目だ。避けられない!


「おそくな~れ!『-1』」

「おやぁ?」


 がくんっと、奴のスピ―ドが遅くなる。

 その隙に、俺は横に飛んで攻撃を回避。

 バトンが地面に激突した瞬間、先端が爆発し、大きな音と共に、ハトや紙吹雪が宙を舞った。

 

(……危なかった)


 エイトさんのスキルがなければ、今の一撃で死んでたかもしれない。

 地面は大きく陥没し、深い亀裂が走っている。

 間違いなく、マジックミラーでも、防ぎきれなかった。

 

「くるっぽー!」

「くるっぽっぽー!」


 風船から飛び出した鳩たちが弾丸のように俺たち目掛けて襲い掛かってくる。

 俺はサブマシンガンで、エイトさんはサイレントバレッドでそれぞれ迎撃する。


「とんっ」

「ッ!?」


 だが再び、クラウン・レディオに距離を詰められる。


(――移動が速すぎる!)


 ステータスや加速による動きじゃない。

 おそらくは井口が使った瞬間移動に似たスキル!

 

「まっかなお花を~、頭から咲かせましょう~♪」


 バトンが迫る直前、俺は周囲に張ったマジックミラーを回収。

 三枚に重ね、更にソウルイーターの魂魄障壁も発動する。

 今の俺に出来る最大防御だ。


 ガァァァァンッ!! と、衝撃音が走る。


「おやおや、ずいぶんと頑丈な盾だ!」

「ありがとうよ! 雷蔵、夜空!」

「ウガォゥ!」

「ウッキィ!」


 ヤツの動きが止まった瞬間に、雷蔵が『雷神形態』を発動させ、接近。

『紫電一閃』を纏わせた鬼丸と数珠丸を振るう。

 同時に夜空も、反対方向から重詠唱によって『業火』と『竜巻』を合わせた炎の渦を放つ。


「ぱんっ」

「「!?」」


 刹那、クラウン・レディオの姿が消える。

 一瞬にして遥か後方へと移動していた。

 やはり先ほどと同じ動き。

 直線方向に一瞬で移動するスキル。


「ふぅ、危ない、危な――ッ!?」


「ちっ、躱されたか」


 エイトさんは忌々しそうに呟く。

 動いていたのは雷蔵と夜空だけじゃない。

 それに合わせるように、エイトさんも動いていたのだ。

 躱された場合、間髪入れずに追撃を仕掛けられるように。


「なんという連携! なんと素晴らしい! これがぷれいやーの力か!」


 空中でクルクルと回転しながら、クラウン・レディオは笑みを浮かべる。

 そこにセイラン、射手猿(マンゲツ)、エイトさんの仲間の骨の馬が攻撃を仕掛ける。

 自在に動く銃弾に、高速で射出される四本の矢。当たった相手に強力なデバフを与える骨の矢。


「見事! 実にお見事です!」


 しかしそれすらも、奴はバトンで弾いてみせた。

 器用な奴だ。


「ではお返しを! 歪め、歪め――『歪な(フォリー・)回転木馬(ゴー・ラウンド)』!」


 突如、牧歌的なな音楽と共に、中央広場を囲むように無数の木馬が出現する。

 それらが回転すると同時に、視界が歪み始めた。


「ッ……!?」


 酷いめまいに耳鳴り、立っていられないほどの平衡感覚の欠如。

 デバフではなく、相手の五感に作用する特殊効果のスキルか。

 エイトさんも片膝をついて、頭を押さえている。


「ぐっ……マズイ、このままでは体が7に、いや6になる……!」


 ……それはヤバいんですか、エイトさん?

 ちょっと意味が分かんない。


「……6とは?」


 クラウン・レディオすら、ちょっと理解不能な感じに首をかしげている。

 気持ちは分かる。

 とはいえ、このままじゃマズイ。


「――ファンブル・エレメント!」


 股間から取り出したコインを指ではじく。

 コインが光り輝くと同時に、それまでの不調が嘘のように消え去り、体に力が漲る。

 魔女さんの遺産の一つ『ファンブル・エレメント』。

 見た目は五百円玉くらいの硬貨で、その効果は三つ以上のデバフの解除または、デバフ以外の特殊効果三つを、同数の強化バフに変換するというもの。

 今回は任意発動だが、いくつかのデバフ、特殊効果に対しては自動で発動するように事前に設定することも出来る。

 おまけに、単体ではなく、全体効果。


「これは……」

「ウガォゥ」

「きゅー♪」

「ウッキィ!」


 雷蔵たちだけじゃなく、エイトさんらにも効いたのは嬉しい誤算だったな。

 凄まじく強力なアイテムだが、同時に厄介なリスクもある。

 それは一度使うごとに、効果が反転するというもの。

 つまりに、次に使うときは三つのバフが、同数のデバフに変換されるのだ。

 それはステージをクリアしても、持ち越される。

 

(とはいえ、一度だけなら称号『艱難辛苦を超えし者』で相殺できる)


 だがそれは俺たちのパーティーだけ。

 エイトさんたちもデバフ対策はしているだろうが、無駄に消費はさせられない。

 デイリークエストならまだしも、コイツみたいな強敵相手じゃ、実質一回だけの使い切りみたいなもんだ。

 即座に、俺は加速し、クラウン・レディオに攻撃を仕掛ける。

 

「おらぁ!」

「ぬぅ……どうやって、『歪な回転木馬』を無力化して――」


 流石に、スキルを即座に攻略されるのは予想外だったようだな。

 動揺が、動きに現れている。

 そしてこちらの検証も終わった。


「良いでしょう! ならば次の演目を! 沈め、沈め――『愚者の……」

「いや、これで終わりだよ」


 ここが最高のタイミング。

 奴の動揺、間合い、そして周囲の仲間たちの位置。

 全てが一致した、今、この瞬間こそがベスト。


「   時 よ 止 ま れ   」


 ――その瞬間、世界は静止した。


「……良かった。ちゃんと効いてるな」


 目の前で完全に静止しているクラウン・レディオを見て俺は安堵する。

 俺が『時間停止』をすぐに使わなかった理由がそれだ。

 時間停止系のスキルを持っていないか、もしくはその対策をされていないかどうか、それを見極めるため。


 時間停止は強力だが、諸刃の剣だ。

 

 もし相手が同系統のスキルを持っている、ないし対策済みの場合、俺と屍狼、クラウン・レディオ以外の全てが静止し、エイトさんや雷蔵たちが危険にさらされる可能性があった。

 だから確かめた。

 先ほどの戦闘の合間に、1秒の時間停止を二回使用し、クラウン・レディオの反応を観察した。

 1秒ならば、たとえ何かあったとしても、ギリギリ対処できると考えて。

 一回ならば演技の可能性もあったので、二回。

 結果、二回とも奴の動きに違和感はなかったので、同系統のスキル、もしくは対策はないと判断した。


「ワォン!」


 屍狼が声を上げる。

 俺もソウルイーター『魂葬刃断』をセットする。


「屍狼! 高速ワンワンドリル!」

「ワォン!」


 俺は屍狼と共に、クラウン・レディオを攻撃する。


(コイツは自分で腕を切り落としても再生した。どこが急所か分からない以上、全身を攻撃し続けるしかない!)


 一撃だけじゃない。

 最大10秒間をフルに使って、攻撃し続ける。

 

 ――10秒経過。そして時は動き出す。


「うぐっ……ごはぁっ!? な、なんだこのダメージは!? い、いつの間に……?」


 俺と屍狼の総攻撃を受けて、クラウン・レディオの体が吹き飛ぶ。

 ぐちゃぐちゃになった肉塊の一体どこで発声しているのか。

 だがその声には、力がこもっていない。

 演技ではなく、本当にダメージを受けている……はずだ。


「そ、そうか。時を止めて攻撃を……はは、あはははははは!」


 もうその結論を出すのか。

 コイツ、強いだけじゃなく、頭の回転も相当速い。

 なにがおかしいのか、クラウン・レディオの笑い声が響く。


「いやはや、嫌な予感ほどよく当たるものだ。まさか『ぷれいやー』に時間を操るスキルを持つ者が居るとは……なんとも忌々しい。奴ら(・・)と同じとは」

「奴ら……?」

「おっと、雄弁は銀、沈黙は金と言いますね。ついつい興が乗って喋り過ぎてしまった。ご容赦ください」


 バラバラになった肉体が一か所に集まろうとする。

 だが、途中で肉片は崩れ、霧となってゆく。


「……まあ、いいでしょう。今回は(・・・)負けを認めます。いい勉強をさせてもらいました」


「今回は? どういう意味だ?」


「言葉の通りですよ。これはわたくしの本体ではありません。精巧に作られた模造品(コピー)とでも申しますか。アナタ達ぷれいやーのように、我々『えねみー』にも一定の制約(ルール)が課せられているのですよ。ああ、忌々しい」


 えねみー? ルールだと?

 それはまるでモンスター側にも『異世界ポイント』に似た何か(・・)があるような口ぶりだ。

 現地調達と言っていたし、井口たち以外カードを使わなかったのも、その辺が理由か?


「沈黙は金とか言いつつ、ずいぶんとおしゃべりだな」


「おお! 確かに! いやはや、これはうっかり。忘れてください」


 あからさま、大げさな口調。

 ……コイツ、わざとか。


「それでは、本日の演目はここまで。次は本体(・・)でお会いしましょう。シーユーアゲイン!」


 ポンッとピンク色の煙を上げながら、クラウン・レディオは消滅した。


「……いや、二度と会いたくねーし」


 本心からそう思った。

 最後に色々と気になることを言い残していきやがって

 奴が居た場所を見れば、十センチほどの『鍵』が落ちていた。

 先端部分が捻じれ、取っ手の部分がまるでジェンガのように無数の円柱が重なり合ったようなデザインをしている。

 それを拾い上げると、頭の中にアナウンスが響いた。

 

『嘆きの門番を撃破しました』


『救世の鍵を入手しました』


『マッピングが0.8%に達しました』


『おめでとうございます。デイリーダンジョンをクリアしました』


 これが救世の鍵か。

 ひとまずは無事にクリア出来たことに、俺は安堵する。


(残る問題は井口、か)


 パンツに挟んでいる井口と狙撃兵たちのカード。

 果たしてクラウン・レディオは倒したが、その所有権はどうなっているか。

 それを確かめないとな。

 

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