第四話 福島正則、大坂入城。
大坂城・大広間
大広間に入るその男を見た牢人たちの表情は、複雑そのものであった。
「遅ればせながら、福島左衛門大夫正則、豊臣家再興のため徳川に一矢報いに参った。」
「何が一矢報うじゃ。裏切り者!」
牢人衆の視線が一気に秀家に集まった。
「…」
正則は言葉を失う。
「儂が参陣していると知りながらやってきたのか。」
「…」
「答えよ!!」
「知っておった。」
秀家は正則の肩に掴みかかる。
「お主のせいで儂は数々の家臣を失った!儂はお主を許さぬ!」
秀家は正則に掴みかかった。
「やめんか!」
秀頼の一喝で、秀家はその手を離した。
「今の豊臣に、昔のことを恨んでいる余裕はない。第一、関ヶ原で徳川についたのは福島勢だけではないであろう。」
「関ヶ原で徳川についたこと、今でも悔いております。ですがそれは、殿のため、豊臣のためでございました。今でもその思いは変わりませぬ。」
秀家は眉間に皺を寄せたまま正則を見つめた。
「早速だが、左衛門大夫。いや、市兵衛。何故ここへ参ったのか、皆に申せ。」
「はっ。」
正則は牢人衆へ向き直った。
「関ヶ原から十四年という月日が経ち、時が経つ度に徳川が力を持ち、豊臣の力は削がれ、豊臣恩顧の大名が死んでいった。」
「お主は安芸の大名として不自由なく生活しておったがな。」
秀家は嫌味ったらしく言った。
「そんな時、殿から参陣の命を受けた。しかし儂は内心迷っておった。正直豊臣方は負けると思ったからじゃ。」
「殿に対して失礼であるぞ!」
秀頼の近臣から声が上がる。
「良い。続けよ。」
「はっ。だがその時思い直した。今の儂は、豊臣の事など他人事にして、家名を守るためにただ努めているだけであったと。だから今の地位を捨ててでも、儂は亡き殿下の大恩に報いなければならんと思ったのだ。」
「皆も武士じゃ。所領を捨てる心苦しさを分かってやってくれ。ならばよいか、軍議を始めたい。」
「殿、少し宜しいでしょうか。」
「なんじゃ備前。」
「ここに来たからには、福島殿もそれ相応の覚悟を持ってきたと言うことでしょうから、その策をこの場で示して頂くのはいかがでしょうか。」
「それは面白い。市兵衛、できるか?」
「はっ。恐れながら、ございます。」
「殿、某にも策がございます。某にも是非とも発表の機を頂きたい。」
信繁は間髪入れずに発言した。
「ほう。それは面白い。やって見せよ。皆もそれで良いか?」
「真田殿と福島殿の勝負か、面白くなりそうだな。」
「では、左衛門佐からやってみよ。」
「御意。」




