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紅い侍  作者: 柴崎龍
第二章 豊臣家、本格始動
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第十七話 交渉人

今回初登場の人物、一柳直盛…四郎右衛門



神戸城・本丸御殿 真田幸村視点



神戸城に入ったらこの部屋に案内された。儂は下座で良いと言ったのだが体面だけでもと上座に案内された。今回儂はこの神戸で徳川と決戦を行い、有利に進めるためにこの地を治める一柳氏と交渉をしに参った。



「よくこのような場所まで来られましたな、ご用件は何でしょうか。」



「それは、豊臣家に従って欲しいということです。条件は所領の安堵でいかがでしょうか。」



一柳殿は顔をしかめている。いかん。もう二押しほど要るな。秘策を使おう。



「一柳殿だけにお話し致しますが、実はこの伊勢・伊賀侵攻が終わった後徳川の抑えとしてかの豊臣秀次公のご子息、豊臣治兵衛殿に伊勢を与えるという案がありましてな。貴殿は秀次公に仕えていた時がありましたな?」



「確かに秀次公の元で働かせて頂きました。秀次公には感謝しております。」



「この話を受けてくださるなら治兵衛殿に伊勢国を与える事を上様に働きかけ、治兵衛殿の筆頭家老となることをお約束致しましょう。」



それを言うと一柳殿は驚いた顔をして絶句している。その後しばらく静寂が訪れた後、一柳殿は口を開いた。



「た、大変有難いお話しですが、従った後我らは豊臣家の家中で敬遠されるでしょうし、何しろ某の娘が徳川家の重臣、本多内記殿に嫁いでいますし…」



「その本多殿と何やら最近文通をしているようですな。」



「それは…」



「とぼけないで頂きたいのう、先程軍勢を動かしている時に忍びを配下の者が見つけましてな。文通の内容は貴殿から本多殿への物でして『自分が裏切るふりをするから尾張藩の軍勢が攻めかかった時、貴殿が突撃し敵兵を慄かせた後、自分が背後から攻めかかる』ですな。」



「くっ…」



そう一柳殿が言った後、配下の者が脇差を抜いてこちらに振り下ろしてきた。



「辞めよ!」



そう一柳殿が言った時にはもう、その者の脇差は折れていた。いや、儂が折ったのだ。即座に反応できなければ、死んでいたかもしれないな。



「…」



一柳殿もそんなことをすると思っていなかったのだろうな。いや、知っていたかもしれない。配下の者が脇差を振り下ろした時の反応がどうも胡散臭かった。



「どうしますか、もし受けるならこの事も無しにしましょう。その代わり、今から本多殿に文通を出して頂きたい。」



「内容は如何致しましょう…」



「そうですな。『豊臣家中の者から聞いたところによると、イスパニアと豊臣が結んでいて、江戸湾にイスパニアの船が来るらしい。伊勢湾にも来るという情報があるので見守るために伊勢の援軍のついでに寄っていって欲しい。我が娘の顔も見たい。不確定要素なので内密にして欲しい』と書いて頂きたい。」



「ですが、本当に来るでしょうか…」



「どうやら貴殿の婿殿はたまに不覚をとることがあるようですぞ。」



儂も勇将だと思っていたのだが、福島殿に酒で不覚をとり大敗したと聞いた時は驚いたわ。



「それでは、敵軍が到着するまでは徳川に対して味方の振りをしておいて頂きたい。」



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