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紅い侍  作者: 柴崎龍
第一章 父の教え
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第十話 調略



和歌山城・本丸御殿



「豊臣は何と。」



「どうやら、豊臣は領内の通行を求めているようにございまする。」



「はっはっは。今更豊臣につけと?我が浅野が徳川を身限ると思っておるのか。秀頼もおめでたいのう。」



「それが…」



「まさかとは思わんがお主、豊臣に付くつもりか?」



「そういうわけではございませぬ。ですが、豊臣は一万貫でどうかと言っておりまして…」



「一万貫?!」



「はい。先ほど豊臣の使者が言うておりました…」



当主の浅野長晟も家老の浅野忠吉も余りの金額に唖然としていた。



「よし、会おう。豊臣の使いを今すぐここに呼べ。」



「良いのですか?」



「とにかく早くここに通せ!」



紀伊国・和歌山城



「ということでございまする。」



「いや、こちらこそ直々にこのような話を頂けて嬉しく思う。だが、狙いは何じゃ。豊臣には申し訳ないが、儂は兵を出す気は一切ないぞ。」



「我が主も、浅野様のご事情は良く分かっております。あくまでも、我が軍の通行をお認め頂きたいということ。」



「豊臣は戦を起こすのか。」



「紀伊を攻めるつもりは、ございませぬ。」



大坂城・本丸御殿



「そうか!浅野がそれを呑んだか!」



「これで他の大名も我らの要求を呑みましょう。」



「左衛門佐よ、お主豊臣の地力を固めるために我らに従わぬ畿内やその周りの大名を攻めると申したな。どこを攻めればよいと思っておる。」



「伊勢、藤堂家かと。」



その場にいた皆が驚く。



「当然、今すぐにという話ではありませぬ、ただ足腰を固める一環で、必ず伊勢が必要になりまする。」



「某は朝鮮での戦でも藤堂殿と陣を共にしたが、それほど簡単な男ではありませぬぞ。」



「宇喜多殿、だからこそ藤堂を打ち破らねばならぬのです。藤堂与右衛門高虎は家康からの信任も厚い猛将。その高虎が敗れたとなれば、徳川方に与える衝撃も大きいでしょう。」



「ただ、伊勢攻めにかかる戦費や労力は、馬鹿かにできんぞ真田殿。」 



「来るべき家康との決戦で我らの真価を発揮できなければ、本末転倒にござるぞ。」



「家康と戦う前に、勝負をつけるのです。」



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