84話 友達
「友達と認めたやつ?」
「そう、友達って認めたらあっちから『セインって呼んで』って言ってくるんだよ」
「いや、じゃあクラスの女子はどうなんだ?」
雄牙は、ご飯を食べ終わり教室後方の席で戯れているセインとクラスの女子たちの方を見て行った。
「聖ちゃん、帰りプリクラ撮りいこうよー」
「いいよ! そのぷりくら、ってなに?」
「もー何言ってんの聖ちゃんおもしろーい!」
「ほら、あんなに仲良さそうじゃねえか……」
「そう、でも呼び方は聖ちゃん――つまり、そういうことなんだよ……」
修は儚げに窓の外を見る。それを見てどうやらマジらしいと思ったのか雄牙はわなわなと震えだした。
「じょ、女子こわ……」
「現実はいつも非情なものだよ雄牙。あれは表面上仲良くしているだけなんだよ」
「いや、そんな筈ねえ! 見てろお前ら!」
そろそろ止めに入った方がいいと思っていた矢先、雄牙が行動に出てしまった。これはちょっとまずいかもしれない。
雄牙は慎重な足取りでセインたちの元へ行き、深呼吸したのち、セインに声を掛けた。
「やあ、セイン。こん――」
「雄牙くんその呼び方ダメ!」
雄牙はぎこちない笑顔のまま膝から崩れ落ち、フリーズしてしまう。慌てて修と二人して回収に行き、温かいお茶を飲ませてやるとしばらくして雄牙はなんとか意識を取り戻した。
セインからしたら単に学校では「聖」と名乗っている為、そう呼ばれると色々聞かれたりして不都合が生じるからだろう。
その予想通り、今クラスの女子から「セイン」という呼び方、加えて雄牙との関係について質問攻めに遭っている。
だが、雄牙からしてみれば、さっき修に言われたことが事実だという証明、加えて自分は全然友達と認めて貰ってないという現状を突き付けられたわけだ。
折角異性とのコミュニケーションを取ることに慣れてきたところだったというのに、昨日上げた成果がふりだしに戻ってしまったかもしれない。
「じょ、女子怖い、女子怖い……女子怖い……女子、こわ、い……」
修は怯える雄牙の肩を叩き、笑顔を向けて慰める。傍から見たらいいやつだが実際全部コイツが悪い。何を澄ました顔してんだ。
「大丈夫だよ、結賀君。僕たちは間違いなく君の友達だからね」
「え、なんで急に苗字で呼んでんの? 俺らは友達、だよな修?」
「ごめん、下の名前で呼ばないで」
「おい、嘘だろ修! おい修!?」
雄牙は修をぶんぶん揺さぶるも納得の答えが修の口から発せられることはなかった。




