83話 波風
「あいつら男三人で遊園地いってたのかよ。しんど」
「しかもあんな大声で自慢してんじゃねーよ」
相変わらず聴力強化魔法の効果が持続している俺の耳には、廊下にいる男子のヒソヒソ声が届く。
ひどい言われように憤りを覚えるが、男三人で行ったというのは信じてくれてるようだ。
周りにいる他のやつらも同じようなことしか言ってないし、今日という今日は波風立てずに過ごせそうだ。
「おい、俺たちも確かに悪かったけどよ、あれはやりすぎだろ!」
「そうだよ、いやズァッツ・ルァイトだよ!」
若干フラグを立てた節がありヒヤッとしたが、なんとか何事もなく昼休みを迎えられた。
俺の前では意識を取り戻した雄牙と修が文句を言いながら昼食を頬張っている。
「ごめんって。あと修、その英語無駄に使う喋り方やめろ」
「うん、それは思う。俺から見ても痛々しいぞそれ。寝る前に思い出して後悔するやつだ」
「……ごめん」
「まあ、そう落ち込むな。ほら、サンドウィッチ半分やるよ」
「あ、拓実ダウト」
「いや、英語禁止ってわけじゃなくてだな……」
よしよし、話を逸らすことに成功した。このまま逃げ切ろう。
「そんなことより、タクミ。お前に聞きたいことがある」
「お、なんだ? アリアのことか?」
「まあ、そんな感じなんだが……」
雄牙はジェットコースターを降りてからというもの、アリアとよく話をしていた。
好き、とはいかないまでもあれだけ話していたんだ。アリアのことが気にはなってるに違いない。青春だなあ全く。おじさんには眩しいよ。
「その、赤羽さんはなんで姫宮さんのこと『セイン様』なんて呼んでたんだ? 」
「「あ」」
俺と修の間の抜けた声が重なる。
「お前らも『セイン』って呼んでたよな。ニックネームかなんかだと思ってたけどクラスの女子は『聖ちゃん』だし」
そうだ。そういえばコイツにはセイン達が異世界からやって来たという話をしていなかった。
昨日は相当戸惑っただろうに場の空気を壊さないように黙っててくれたのだろうか。
「すまん雄牙。お前には話してなかったな」
一泊置いて周りに誰もいないのを確認すると俺は再び口を開き、「実はな」と話を切り出す。続けざまに雄牙の喉からゴクリと音がする。
「姫宮さんって友達って認めた人にああして『セイン』って呼ばせるようにしてるんだよ」
しかし、俺の声は修によって掻き消されてしまった。的外れな発言に口を突っ込もうとしたが修は「ここは任せて」と耳打ちし、俺の発言を制した。




