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73話 我慢

「ちょっと待てって! おい、お前ら! ……ちょ、ちょっと待ってくださいお願いします」

「あータクミたちそこにいたんだー。やっと見つけたよー」


 俺の低姿勢の呼びかけにエマはやっと反応を見せ、踵を返しまるで今初めて会ったかのようにこちらに駆けてくる。

 それを俺たち三人は気を付けの姿勢で迎え入れた。

 

「ほら! やっぱりタクミたちだったじゃん! ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」


 水色のワンピースをひらひらはためかせながらセインは俺たち元へやってきて、顔の前で手を合わせ詫びを入れる。

 

「こんな奴らに謝る必要なんてありませんよセイン様」

「もーアリアのせいで遅れたんだよ、わかってるの?」

「いや、しかしあれは……」


 尚も俺たちに軽蔑の視線を送るアリアだが、セインの言葉に動揺を見せ、目を伏せてしまう。

 

「なにかあったのか?」

「う、うるさい。お前には関係ない……」

「アリアにねー、スカート履かせようとしたらものすごく嫌がっちゃって。それで遅れちゃったってわけ。ごめんね」

「おいエマ貴様っ!」


 なるほど、それでか。

 セインはさっき言った通り水色のかわいらしいワンピースを――エマは黒い帽子に白いシャツとスカート調のデニムを着てきている。

 どちらもシンプルなデザインで、それでいて元の素材の味を前面に押し出しているため、これから一緒に行動するのが少し申し訳ないくらいだ。とても高校生に見えない。

 雄牙なんてさっきからずっと口をパクパクさせて目を泳がせている。

 まるで餌を食べる魚みたいだ。


 で、肝心なアリアは遊園地に不似合いな真っ黒なスーツに身を包んでいる。

 ただでさえ窮屈だというのにワイシャツもしっかり一番上のボタンまで留めて、遊園地の解放感に逆行しているその姿は勿論のこと周りから浮いていた。

 男三人のじゃれ合いもかなり浮いているように思われたが、個人的にアリアの格好の方が周りに溶け込めていないように思う。


「アリア、暑くないのか?」

「うん、見てるこっちが汗かいちゃいそうだよ」


 今は七月の初めで、まだ本格的な夏には差し掛かっていないにしても、この時期に長袖長ズボンで外に出るなんてハンパねーなこいつ。

 

「無論だ。お前たちとは鍛え方が違うからな、むしろもう一枚羽織たいくらいだ」

 

 アリアは得意げにそう言ったが、どうみても痩せ我慢だった。

 涼しい顔とは裏腹に首筋には滴る汗が見て取れて、ワイシャツもよくよく見れば少し肌に張り付いている。

 

「まあ、心配しないでよタクミ。ちゃんと着替え持ってきてるから♪」

「いいや絶対着ない。私は絶対着ないからな!」

「まあ、熱中症とかもあるし、ヤバかったら言えよ」


 エマも付いていることだし、そこまで心配しなくていいの、かな?


「よし、じゃあみんなまずあれ乗ろー!」

「セイン、走ったら危ないよー」


 セインを筆頭に、俺たちは当初の予定から少し遅れたものの、一つ目のアトラクションへと向かった。

 ってあれ、雄牙がいない?


「おい、もうみんな行っちゃったぞ!」


 後ろを見ると雄牙は一人その場から微動だにせず、引き続き口をパクパクさせていた。

 駆け寄って肩を揺すってみると、「あ、おはようママ」とイカつい外見から想像もつかない恥ずかしいプライベートな一面が垣間見えた。

 俺は勿論それを聞かなかったことにし、雄牙の意識がはっきりするまで肩を揺すり続けた。


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