58話 人気
「せんだ!」
「みつを!」
「「なはなはっ!」」
「せんだ!」
「みつを!」
「なはなはっ!」
「クソッ、しまった!」
「あ! アリアなはなは言ってない!」
「はい、またアリアの負けー」
「も、もう一回だ! 次こそは勝つ!」
昼休み、仮眠を取っていた俺の耳をくすぐったのは、時代遅れの懐かしいゲームを全力で楽しむセイン達の声だった。
誰だよ教えたやつ……せめてアルプス一万尺とかにしとけよ。
「……おはよう」
「ん、ああおはよう」
目を凝らすと俺を覗き込む雫の顔が目の前にあった。
慌てて身をのけ反らせると、危うく椅子から落っこちそうになる。
「おっとと!」と声を出し態勢を整える俺を、雫は読んでいた本で口元を隠しながらクスクスと笑った。
寝起きにこれはあまりにも刺激的すぎる……。
雫から目を逸らし、俺は周りの声に耳を傾けた。すると、
「いやー絵になるなあ」
「このクラスでよかったぜ」
「俺、弁当のおかず忘れて今日白ご飯だけだったんだけど、見てくれこれ。あの光景見てるだけで飯が進む進む」
「いや、流石に関係なくね? しかもお前デブじゃん」
などと、セイン達に見惚れる生徒たちの声がちらほらと聞こえる。
昼休みももう半分を過ぎた頃だというのに、教室の人口密度は減少する様子がない。
むしろ三人を見たいが為に集まった他クラスの生徒たちでごった返している。
よくこんな人がいる中で眠っていられたなと我ながら感心してしまうほどだ。
結局、セイン達とアリアは昔からの知り合いで、転校するにあたり知っている人がいた方が心強いだろうという親同士の話し合いの末、一緒の学校へと転校してきたということになった。
かなり都合のいい話だとは思うが、本人たちがそう言えばそれは疑う余地もない事実となる。
しかし、その話は勿論、学校中に知れ渡ってしまったので、話題が話題を呼びこうして時代錯誤のゲームに興じているだけでも容易く注目を集めてしまうようになった。
新聞部が毎月発行する学校新聞にも、
「二人の美少女転校生推参!」
「美しすぎる転校生に不審者の魔の手!」
「時を越え感動の再会! 美少女転校生三銃士!」
と三か月連続で見出しを飾っており、校内には知らないものはいないだろう。
あまり学校で目立ちたくないというエマの思いは叶わぬものとなってしまったが、そんなのはまだいい方だ。
三人の人気と知名度が高まってしまったことにより、一番被害を受けているのは間違いなく俺だ。
あっ、やべえ……セインと目が合った。
「あ、タクミ起きた! ねえ、こっちきて一緒に遊ぼうよー」
慌てて目を伏せたが時すでに遅し。セインはとびきりの笑顔で手を振っている。
「いや、俺今眠いしいいよ」
「えーそんなこといわずにさあ」
「おいおいあいつもしかして断んのかよ」
「わざわざ話しかけてくださってるのになんだよあの態度。〇ね」
「眠いとかふざけんな。永眠しろボケカス」
本人たちは聞こえるか聞こえないかのボリュームで言ってるつもりだろうが、残念ながら俺は聴力強化魔法を常時発動している状態なので、はっきりと聞こえちゃうんだなこれが。
まだ魔法使えるか確認しよう、とか思わなければよかったぜ。
解除の仕方エマも知らねーらしいし、ああどうしよ。




