91話 命乞い
俺は聞いていた。
何でこんなに雑な奴が団長なんてしていられるのか不思議しかなかった。
だって、アドソンを見ろよ。面倒くさい感じはするが、それでも敬語は出来る事務職は出来そう。指揮官として好かれているし、物事を冷静に見れるくらいの器量と言われた事を考え行動し応答できる器を持っているのにこいつは見ている限りガサツで粗野で礼儀知らず。
武力を主体とする騎士団ではあるが隊長職の基本は武力で無く事務だ。事務が出来てこそ長(隊長)を名乗れる。が、事務能力というのはかなり頭を使う。言葉のニュアンスから取れる情報ではなく、文字として書類としてこられる情報を文章を読み理解力が必要な事も多く、ただの猪の武者はいらない。否、いては部下が迷惑する。
さてはて、私がそのことで今回のこと何が言いたいのかというと、ある一定の頭の良さが必要な隊長職の中の最上位が団長であるならば、リクス&ワイハンがいながらここ(オルタイシ)に来るまで俺たちの事をどれほど聞いてどれほど考えて来たのか、失礼が無いようにと考えているのが普通である。
それに、どんな理由であれ現在父の妻と息子は我々のみ。
正妻がいるならまだしもいない現状で指揮官に副団長を選ぶという可能性はない。もちろん囮に使うならなおさら溺愛アピールし狙わせるようにするという意味でもそれ相応の地位を持つものを指揮官として派遣するのが妥当。その呈としても考えれば自ずと言・行動が着いてくるはずなのに、それが出来ていない奴が来た。
だからこそ聞いていた。不思議でならなすぎたからシルコの事もあって冷たい視線で聞いちゃった。
「何でお前みたいなのが騎士団長なの?」
ルダンは黙った。思っても見なかった言葉なのか、黙っているが、俺は答えを待つつもりでジーッと見ていると何を考えているのかはわからないが怯え始めている。
最後には四つん這いになって頭まで下げて命乞いをしてきた。
「いっ! 命まではお助けください!! わ、私が騎士団長であることに御不遜ありますならすぐにでも辞職しますのでお願いいたします。」
何よりも、である。
何よりも今の私はこいつに関して、思ったことは一つである。
『こいつ・・・まともな敬語使えたんだ・・・』
(カールド)
「いや、爺さんドンだけ怖がられてんだよ」
「シルコを殺そうとした事は今も許してはいないけど」
「「「許してないの!!」」」
「ああ。
それでも、仲直りはしたよ。
というかルダンの奴、元々敬語をあまり使わない奴だったらしくて行動が夜盗に近かったせいもあって、俺も勘違いをしていたんだ。
現にこの後仲直りはするけどね。」
「へー、どうやって?」
「拳で」
ニヤリと笑いながら力強く握った拳を見せると周りが一歩逃げて行ったから、冗談であることを教えた。
さてと、俺はジーッと下げた頭を覗き込み頭の渦巻きが左回りを確認してから端的に述べる。
「意味が解らん、いきなりなんなん?」
「・・・・へぇっ・・・・・」
俺の言葉の後間抜けな声が聞こえつつ俺をのぞき見るように見てくるルダンと視線が交差して無言になる。
無言もすぐになくし、もう一度尋ねる。
「唐突に意味が解らない。
質問したら答えが騎士団長辞めるになった理由は何?」
「えっ・・・・怒っていたのではないのですか?」
「はぁ? 何言ってんの? 馬鹿にしてんの? そんな回りくどいことしないで殺してくれといえばすぐ殺してやるよ!」
俺の体からグワリと魔力がもれ出る。
と、同時に庭に1人の黒装束が現れつつも『ええ!』と驚愕する。塀を飛び越えたあたりでは気がつかなかったがここに飛来してくる間に気がつきやばさを感じてそいつは俺を見て視線だけが、なぜ怒っているのか? どうしたのか? を説いてくるが口にしないのは飛び火しないようにするためだろう。固まって動かないのが刺激しないようにするためな感じだ。
ルダンにいたっては顔色が蒼って言うか緑って言うかだ。
俺は一切の視線をルダンから逸らさず、周りの状況を魔力で感知している。
その中にこちらに来る3人の気配を感じつつ一歩足を踏み出し手を上げる。
ルダンの恐怖に染まる表情が見えるが、そこに残りの三人がすたりと庭に着地し固まり、ミッシェルが屋内から出てきて言葉を投げかけてくる。
「リカルド様っ、ロミオの毛が完全に消えてしまうのでソロソロ魔力放出やめてください!」
「おい! ミッシェル! お前ちょっとそっちで真剣に話し合おう!」
「こんな状態で告白とか、正直ないと思います」
「しねーよ! 誰がそんな話するっつったぁ!?」
「・・・・!(驚愕) れ、レイプ・・・される・・・」
「それもしねーよ! つーか、お前になんかしようものなら色々むしり取られる(命とか)」
ロミオの毛の問題を出しつつ凛として冷静に本気の怒りを入れてくる人間をやれやれとあしらい、それに更に切れのいい怒り(突っ込み)をぶち込んでくるロミオを更に弄るミッシェルの構図が出来ていた。
レイプあたりの話では二の腕を両手で抱きしめロミオから距離をとる姿勢をとったりと楽しそうである。
終いには毟るの発言で、「毛ですか?」と冷静に弄りの本題に戻っている段階でもうすごい。
このころになると俺の怒りもどこかに言ったのかルダン殺害がどうでもよくなった。
「ミッシェル、ロミオ、すまん・・・・」
「いいえ、いいのですよリカルド様」
罰の悪い俺は少しぶっきらぼうになりつつ、朗らかに笑い俺に笑顔を向ける立派なメイド好きーと子供らしい俺を見たのかロミオが呆けつつも深いため息をつき、疲れたように首を振り、主に失礼ですよ。と鳩尾殴られていた。誰に似たんだか?
「にしても、リカルド様二言言わせて貰ってもいいですか?」
「ああ」
「じゃあ、一つ。シルコちゃんに怖がられて嫌われますよ」
すげーいい顔して言ってくる言葉に、俺の精神の口から何かが吐き出し、気持ち心HP500中300くらう。
「で、本題が・・・」
本題を後にするなんて、やるじゃないか! と感動するべきか? 落ち込むべきか? と俺の中の意識がもうこっちに移っている。
それを理解した時、ミッシェルやるな! と感動した。
「何があってこんな事態になったのですか?」
ミッシェルの言に母以外がこの場に全員集まっていた。
ちなみにこのとき母はシルコを膝においてお茶を楽しんでいた。
なぜ解ったのかは魔力感知と言っておこう。というか、半径30m内なら普段から魔力飛ばしてるから365度バッチしわかる。母たちの情事の時以外と寝てるとき以外は基本これをキープである。もち、寝ているときな。
母と父の情事は基本、母に父が縛られるというのを知っている。いや、感知したわけじゃないぞ。
朝、父の腕に縄の後や時おり一緒に風呂に入るときがあるのだが体にうっすら縄の後があったらなっ、解るだろ。子としてドン引きもした。ん? なんだ? ドン引きしているなお前ら(学者たち)。諦めぇ、偉人ほど変な趣味は多い。
騎士の訓練で拷問の訓練とか厳しすぎる。
まっ、そういうことだ。
とはいえ、事情を話すことにした。
冒頭の理由含めて、時間にして10分くらいですんだ。
家の暗部たちがゴミ(ルダン)を見ていた。
リクスとワイハンが呆れた目で見ていた。
ルダンは心のガラスが壊れて、座ったまま下を向いて動かない。座ったまま死んだ人みたいだ。そういえば、前世で食事中に狙撃されて座ったまま死んだ奴いたな~。懐かしい、あいつも転生とかしてんのかな~。
俺は事情を話し終わり、ルダンに近づいていき声を掛ける。
正直今こいつを殺す気が起きない。ミッシェルに気を削がれすぎた。
とはいえ、一応こいつの言い分を聞いてみようかと思うくらいには冷静になってはいる。
「おい、お前! とりあえずシルコの件は置いておいて弁明する機会をやる弁明しろ。
弁明無いなら半殺しにする」
ちなみに半殺しは、肉体は元気、精神が死亡である。これをなんというかというと廃人と言う。この半殺しは親(母と父=7対3)の背中をみて育った結果だ。前世でこの方法が取れたら当時の部下たちはどのくらい生かせただろうか、いや、いまさらだな。
そんなことを思っていたらだいぶ心が落ち着いた、今日この頃だった。
そして、死んだ目をした魚が・・・間違えたルダンがぽつぽつと喋り始めたのだった。
全容を喋るまでに30分かかった。
だから要約すると、
『シルコの件も会って、なぜ騎士団長をしているのか聞かれ、無機質な視線に恐怖を感じた。シルコの件で魔力の絶対値の違いと視線の潜りぬけている経験さや強さが推し量れ走馬灯が見えた。
自分は強い奴と戦うことが好きだが、強くなるために頑張っていたがここまでの力量差は初めて、戦いの中で死ぬことも考え覚悟していたが、いざ死を連想したら死にたくないと感じ気づいたら命乞いをしていた』
というのもだった。
正直ここまでの俺は無言で思うことは、ふーん、あっそ。だったが、最後に弱弱しく土下座で地面に頭をこすり付けんばかしに、
『シルコ様にご無礼をいたしました。どうか、どうか、どうか・・・お許しください』
と言われた。
周りの暗部たちもリクスたちも俺がルダンをどうするのかをジッと見ている。
だから事実を告げる。
「俺はお前がシルコを殺そうとしたことを許さない・・・」
ルダンから生気が消えるのを確認した。
「だが、情状酌量は与する」
ルダンがその言葉でゆっくりと顔を上げる。
「俺とお前の信頼関係はもとより無かった。
無かったところから更にマイナスなところから始まって居るのはわかるな」
「・・・・」
「リクス、ワイハンと違い、俺たちの事を知っている人間がいる中、情報をいくらでも聞きだすことが出来る中で最悪な状況やどういう話し方をすればいいかなど考える時間は会ったはずなのにそれをおろそかにしたと思われるようなことをすれば、自ずとお前の状況がどこにあるかわかるな」
「・・・・」
無言で力なく頷く。
「俺が信頼してもいいと思うよう心がけろ。
どう信頼を気づけばと思うならまず敬語で話をするというのを心がけろ。仮にも主君の妻子への言葉遣いじゃない。
その上で冷静さや状況判断さも磨け。
それを半永久にやり続けろ。
解ったな」
「・・・・・・はい・・」
ルダンは俺の言葉が終わった後かみ締めるように言葉を反芻するように目を閉じ、返事と共に頭を垂れたのだった。
「終わったかしら? とりあえずご飯にするから皆手伝って、今日は人数が多いから中庭で食べるわよ。そこで今日のことと今後のことを話すからよろしくねー」
と、暢気な母が現れそれぞれの立場の人間に指示が入っていくのだった。
ちなみに俺はテーブルと人数分の椅子を土で作っていくのだった。




