金色の少女
外は日が落ちてしまったかのように暗かった。
たしかに周りには柳や杉といった木が密集している。いわゆる森だ。しかし木漏れ日すらも遮断するため、この辺りは昼が来ないということで『永夜の森』と呼ばれている。
まだ四月というのもあるが、森の中は冬のような寒さで淋しげだった。
度々吹く風は、そっと誰かを闇に誘おうとしているように聞こえる。その風に吹かれる木々は、人を嘲笑っているように木の葉をひしめき合わせている。
そんな永夜の森の中心部分に建っているのが、俺が楽しみにしていた科である霊学科の廃棟だ。名前の通り廃棟は物凄くボロい。廊下や教室、至るところに穴が開いており、まるで廃校のようなデザインになっている。
そう、あくまでこれはデザイン、なので衛生面などはしっかりと確保されている。
霊学科という科のためにわざわざこんな造りなのだ。もちろん木造。
しかも新山高等学校の中でここだけ電気が通っていない。全ての光源は火になっている。
いつの時代だよ! と先生から説明を受けたときに思わずツッコんでしまった。
いくつものオイルランプに火を灯して廊下は照らされている。教室はというとシャンデリアだった。教室というより洋館じゃね? と思わせる華やかな装飾のシャンデリアは、ロウソクの灯火によって俺たちに光をくれる。それが案外明るい。
この学校の校長は絶対形から入るタイプだ、と確信したのもこの校舎に入ったときだ。
残念ながら境や田仲たちは全員違う科に入ったので科別授業のときは会えない。
あいつらがいないとこんな静かなのか……。ていうか今は授業中だ。静かなのは当たり前だった。
幽霊の勉強なんて想像もできなかったからか、先生の話や教科書が新鮮に感じる。
俺は幽霊(の幼女)と幼女が大好きだ。この科に入れば幽霊(の幼女)に会えると思って入った。
霊学科には実習が存在する。
「じゃぁ次の時間は実習だから玄関前に集まっとけよー。いいか? 今言ったこと、ちゃんと守って実習やれよ。じゃ、十五分後玄関な。解散」
あ、やべ。全く先生の話聞いてなかった……。それにしてもあのババァ教師、たるそうに喋るよな。
記念すべき第一回の実習だし、トイレ行っとくか。
決して実習中にちびってしまうとかそういう意味ではない。
とりあえず騒がしい教室を出ることにした。
廊下はありえない程静かだった。いくらオイルランプで照らしているとしても暗い。日が差さないせいもあり、暗い。
「トイレどこだっけ」
「トイレならあっちだよ」
「おおそうかサンキュ…………って誰!?」
いつの間にか俺の横には女がいた。まず目に入ったのが女のしている王冠と腕輪だ。どちらも黄金で塗装されている。よく見ると首輪と足輪もしていた。やはり黄金で塗装されている。
「あれ、覚えてないのかな。まあ無理もないよね」
俺を見る瞳は、純金が埋め込まれているかのような黄金色で女自体が宝飾みたいだ。
「いや待て! どっかで会ったことあるんだよな? その口ぶりからして」
「さあ、どうだか?」
ニヤニヤしやがって……その笑いは絶対何かある笑いだ。喋るたびに見える金歯が本当の金に見えて仕方がない。
身長は百五十二といったところか。俺の目利きに狂いはない。
「俺と同じ一年?」
それを聞くと、少し困ったような素振りを見せた。
「まあ一年……かな。うん同じだよ」
しかしそんなのも口を開けばすぐ明るくなった。別に大したことはないだろう。
俺のクラスにこんな人いたっけな……覚えてない。
「そんなことより! 誰か分かった?」
今度は女をじっくりと眺める。俺は幼女以外で欲情しないので何とも思わない(田仲は例外だが)。
ずっと見ていると、女が背中を向けてしまった。
「ちょ、そんな見られると恥ずかしい……」
「ああすまん。やっぱ分からん!」
金と銀を溶かし合わせたような髪は、川の流れのように長かった。
「しょうがないって、トイレ行ってきなよ。実習遅れちゃう」
そう忠告すると、足輪の着いた足を重そうに上げながら歩いていった。
読んでくださってありがとうございます。
ついに新章突入です。
ここからは変態どもの学校生活をお送りします。
次回をお楽しみに




