変態はバカなんです
「体洗ったし入ろうぜー!」
「早速勝負だ!」
境はまたダッシュで湯船に行き、ダイブした。
あんなに走って滑らないのが不思議だな。
俺は歩いて行ったが、同様にダイブする。
「よし、ここからあそこまでどっちが早く泳いで行けるか。勝負だ!」
「その勝負、受けて立つ!」
泳いでいるときに水着が脱げないようにと、気合を入れるため境は紐をきつく縛った。
腹が圧迫されるまで縛った境は何やら悶えている。
バカだな……。
前はこんなバカキャラじゃなかった気がするんだが。
俺はほどよく水着の紐を縛っておいた。
境も縛りなおしてほっとしている。
「ふぅ。ではよーいスタート!」
「おま! ずりいぞ!」
そう言った時にはもう境は泳ぎだしていた。
すると風呂内には温かい笑いが湧き上がった。
境は真面目に泳いでいるが、それは全く先には進んでいない。
「そーいえばお前、犬掻きしか出来ないんだったな」
「うっせえ! うぼぼがばぉぼぼぼ」
ほとんど溺れている境の腕を掴み助けてやる。
風呂で溺れるなんて……お前は子どもか!
子どもでも早々溺れないと思うけど。
「しょーがねえな。ここは風呂らしく、我慢比べでどうだ」
「いいだろう! しかしただやるのはおもしろくない。中二的なセリフしりとりをしながら我慢比べだ!」
「どこからその発想が出たか知らんが、おもしろそうじゃねえか!」
俺と境は風呂のど真ん中で向き合いながらあぐらをかく。